- 2026/06/05 掲載
【比較】NVIDIAだけでは読めない、Broadcom決算で見えたAIインフラの次の金脈(2/2)
NVIDIAの死角と周辺企業の台頭
この構造は、短期的にはNVIDIAの防衛線になる。データセンター売上高752億ドルという数字は、競合が簡単に追いつける水準ではない。GPUを単体で比較して性能が近づいても、ソフトウェア、開発者、運用ノウハウ、サプライチェーンを含めた差は残る。
ただし、強すぎることは死角にもなる。ハイパースケーラーにとって、NVIDIA依存はコストと供給のリスクだ。GPU価格、納期、電力効率、ソフトウェア支配、輸出規制の影響を考えると、特定企業にAI投資を委ね続けることは難しい。だからこそ、専用チップや代替アクセラレータ、CPU・GPUの複数調達が進む。
Broadcomはこの流れを最も直接的に収益化している。カスタムAIアクセラレータは、汎用GPUではなく、特定の顧客や用途に合わせて設計される。クラウド大手が自社サービスの推論や推薦、検索、広告、動画生成を最適化するほど、ASICの価値は上がる。BroadcomのAI半導体売上高108億ドルは、専用化がすでに大きな市場になったことを示す。
MarvellもNVIDIAの周辺で成長する企業だ。AIデータセンターでは、演算性能が上がるほどデータ移動が問題になる。GPUを増やしても、データを運ぶネットワークや光接続が詰まれば性能は出ない。Marvellが挙げる800G、1.6T光接続、51.2T Ethernetスイッチ、CPO、NPOは、まさにAI工場の見えない制約を解く技術群である。
AMDは、NVIDIAの正面に立つ数少ない企業だ。Instinct GPUでAIアクセラレータ市場を狙い、EPYC CPUでサーバ基盤も押さえる。NVIDIAと同じ土俵で戦うにはソフトウェア面の差を詰める必要があるが、調達分散を求める顧客にとって、AMDは重要な選択肢になる。
NVIDIA一強は、終わったわけではない。むしろ、王者が強すぎるからこそ、その周辺に別の市場が生まれている。AI半導体の次の勝者は、NVIDIAを倒す企業ではなく、NVIDIAだけでは満たせない需要を取る企業かもしれない。
「次の勝者」を決める4つの指標
第1はAI関連売上高だ。NVIDIAのデータセンター売上高752億ドル、BroadcomのAI半導体売上高108億ドル、AMDのデータセンター売上高58億ドルは、それぞれAI投資の取り込み度を示す。ただし、各社の定義は同じではない。NVIDIAはGPUとネットワークを含むデータセンター、BroadcomはAI半導体、AMDはCPUとGPUを含むデータセンター部門である。単純な横比較ではなく、何を含む数字かを確認する必要がある。
第2はデータセンター比率だ。AI投資の中心はクラウドと大規模データセンターにある。Marvellのようにデータインフラへ集中する企業は、売上高の規模が小さくてもAI投資サイクルの恩恵を受けやすい。2027年度第1四半期売上高は24億1800万ドルだが、第2四半期売上高を27億ドル前後と見込み、データセンター需要の強さを示した。IntelもAI時代のCPU需要を取り込めれば、データセンター・AI部門の回復が評価材料になる。
第3は粗利益率だ。AI半導体は売上高が伸びても、供給制約、先端パッケージ、メモリ、製造委託、顧客別設計のコストが重くなる。NVIDIAの高い利益率は、製品力だけでなくエコシステム支配の結果でもある。一方、カスタムチップは大口契約を取りやすい反面、顧客ごとの設計負担や価格交渉を受けやすい。
第4は顧客集中だ。Cerebrasは低レイテンシ推論で存在感を高める一方、事業規模はまだ小さい。IPOで多額の資金を調達し、公開市場で評価されたことは追い風だが、特定顧客や特定用途に依存するほど、契約条件や需要変動の影響を受けやすい。上場後は、売上成長と顧客分散を決算で示す必要がある。
企業ユーザーにとっても、これは他人事ではない。AIインフラを導入する側は、GPUの性能だけでなく、供給安定性、電力、冷却、ネットワーク、運用コスト、ベンダー依存を見なければならない。製造業であれば、AIデータセンター向け部材や装置の需要波及も重要になる。
現時点の結論は、短期の勝者がNVIDIAであることは揺らがない。構造的な勝者としてBroadcomとMarvellが浮上し、AMDは第2極を狙う。Intelは復活候補、Cerebrasは高リスクの成長オプションだ。AI半導体の勝ち組は、最速のチップを持つ企業ではなく、AI支出の逃げられない場所を押さえる企業になる。
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