• 2026/07/06 掲載

2028年分いま注文…東京エレクトロンデバイス社長が語る「半導体バブル」の現在地

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半導体不足が深刻化する中、ある異常とも言える事態が起きている。AI投資の急増を背景に、東京エレクトロンデバイスではなんと「2028年度分の部材確保の注文」がすでに入っているというのだ。いったい半導体バブルの裏で何が起きているのか。同社の新社長に就いた宮本 隆義氏に、今の半導体市場で起きていることについて話を聞いた。
構成:編集部 井内 亨   執筆:ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

東北大学大学院応用化学専攻修了。大手製造業を経て自治体に勤務し、大学での産学連携業務も経験。現在はビジネス分野を中心に取材・執筆。導入事例、記事広告、技術紹介、セミナー記事、SEO記事、法令解説記事などのほか、企業向けコンテンツ制作にも携わる。理系・技術職出身で、環境分野(脱炭素・廃棄物・水質)に強み。脱炭素アドバイザー(環境省認定)、公害防止管理者。著書に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)。

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東京エレクトロンデバイス 代表取締役社長 コーポレートオフィサー 宮本 隆義氏

1970年4月生まれ。1993年3月大阪工業大学工学部経営工学科を卒業し、4月に東京エレクトロン入社。2015年東京エレクトロンデバイスコーポレートアカウント営業部長、2016年CN営業本部長、2020年執行役員、2023年執行役員常務、CN BU BUGM、2024年コーポレートオフィサー、執行役員専務、2025年取締役、執行役員副社長を経て、2026年4月より現職。

半導体不足で長納期化…すでに「2028年度の注文」も

 東京エレクトロンデバイスは、半導体や電子部品を扱う「EC(半導体及び電子デバイス)事業」と、ネットワークやストレージ、セキュリティなどのIT製品・サービスを扱う「CN(コンピュータシステム関連)事業」、近年注力している顧客の製品開発を支援する設計・量産受託サービスと自社製品の開発・製造を行う「PB(プライベートブランド)事業」を手掛けている。

 主力はEC事業であり、売上高全体の約75%を占める。産業機器や車載機器向けを中心に、アナログICやプロセッサ、ロジックICなど幅広い半導体部品を取り扱う。2026年3月期は、サプライチェーンにおける在庫調整の長期化などを背景に、EC事業の売上高は1,625億円(9.2%減)と2025年3月期実績を下回った(注)。

注1:EC事業の売上高ならびにセグメント利益率はPB事業を含む

 ここで注目を集めるのが、EC事業の半導体関連の動向である。AI需要の急拡大を背景に半導体不足が再び深刻化しているが、宮本氏は現在の状況をどう見ているのか。

 2026年4月28日に行われた2026年3月期の決算説明会で、宮本氏は足元の市場環境について、「AIサーバの需要増加によって、メモリ半導体の需給がアンバランスになり、電子デバイスだけでなくサーバ、ネットワーク機器、ストレージ機器までリードタイムの長期化が顕著になっています」と説明した。

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【画像付き記事全文はこちら】「リードタイムの長期化が顕著になっています」と説明する宮本新社長

 改めて背景を聞くと、「AI関連需要の拡大を背景に、一部の部材では供給がタイトな状況が続いています。こうした中、お客さまからは安定生産に向けた中長期的な調達に関するご相談が増えており、サプライヤーとも連携しながら供給確保に取り組んでいます」と語る。

 実際、同社では半導体の長納期化を見越した先行受注も増えているという。「一部のお客さまでは、2028年度の部材確保の注文がすでに入ってきています」と宮本氏は明かす。先んじて発注しなければ必要な部材を確保できないという危機感が、市場全体に広がっている状況だ。
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今までと違う?「シリコンサイクル」は死語になる

 背景にあるのが、AI向けデータセンター投資の急拡大である。米国のAI大手5社が2026年に投じる見通しの投資額は約7,000億ドル(約109兆円)に上り、2025年の支出額(約3,600億ドル)のほぼ2倍に当たる。

「109兆円という巨額な投資が動いていることで、これまでの半導体市場の動向とは質が異なると感じています」(宮本氏)

 コロナ禍でも半導体工場の稼働率低下とデジタル機器需要の急拡大が重なり、半導体不足が深刻化した。今回はAI投資という需要の急膨張が引き金となっており、構図が異なる。

 そもそも半導体市場には「シリコンサイクル」と呼ばれる特徴がある。技術革新による需要の拡大、設備投資の増加、そして供給過多という流れを、おおむね4年周期で繰り返すとされてきた。

 しかし宮本氏は、「シリコンサイクルやシリコンスーパーサイクルといった言葉が使われますが、従来の周期では説明しきれない状況にあると感じています」と語る。

 各調査会社では、半導体需要は2030年にかけて現在の約1.5倍規模まで拡大すると予測している。さらなる追加投資の必要性も指摘されており、宮本氏は「若干下がる局面はあったとしても、今後も上がっていく方向性は変わらないと見ています」と述べる。


 こうした認識を踏まえ、「今後はシリコンサイクルという言葉も言われなくなるのではないでしょうか」と宮本氏は見解を示す。

下がるものがない…「調達価格」への影響も

 では、昨今の中東情勢の悪化をはじめとする原価高騰の波は、調達価格にどこまで影響しているのか。宮本氏はまず中東情勢について、「当社の事業が直接影響を受けることはないものの、半導体に使う化学物質などを中東に依存している部分があるため、間接的な影響はあります」と説明する。

 足元では、個々の部品レベルでの価格上昇にとどまらず、それらを組み合わせたサーバやIT機器全体にも値上がりが波及している。中でも、メモリ不足に続いてSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の不足も顕在化しつつあり、価格高騰が続いているという。

 さらに、この問題はハードウェアだけにとどまらない。為替や関税、インフレ、人件費の高騰が複合的に重なり、「ハードウェアが高くなることでクラウドの値段も上がり、ソフトウェアも上がっていく。下がるものがないほど上昇が続いている状況です」と宮本氏は語る。

 一般的に価格が上昇すれば需要は抑制される傾向にあるが、半導体や電子部品はそう単純ではない。「値段が上がったからといって、部品を使わずにものを作れるわけではありません。パソコンも1つの部品がなければ動かない。いらないものはないんです。今年の新入社員にはパソコンを持たせない、というわけにもいきませんからね」と宮本氏は冗談交じりに話す。

 社内システムやソフトウェアを見直し、少しでも支出を抑えることはできても、大きく変えることは難しい。企業の運営コストは上昇が続いている状態だという。 【次ページ】頭を悩ませる、顧客への「価格転嫁」
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