• 2026/07/15 掲載

“奴隷制度”批判を乗り越えるはずが…外国人ドライバー雇用に潜む「残酷な落とし穴」

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外国人トラックドライバーに対する特定技能制度が始まっているが、どうにもモヤモヤしてしまう。そもそも「外国人でドライバー不足を補う」という考え方自体、本質的な解決策になり得るのか疑問を感じるし、むしろ本制度に参加する運送会社は新たな苦労を背負い込むだけのような気がするからだ。そこで本稿では、トラックドライバー分野(自動車運送業分野)における特定技能制度を解説。外国人ドライバー雇用に詳しい行政書士やまぐち事務所 山口 嘉公氏へのインタビューや過去に行ったミャンマー人技能実習生への取材を交えつつ、同制度が抱える課題を明らかにする。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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図1:2027年4月から育成就労制度がスタート。育成就労、特定技能1号、特定技能2号へとステップアップしていく
(画像:筆者提供)

2027年4月「育成就労制度」がスタート

 1993年に創設された技能実習制度は、「現代の奴隷制度である」と諸外国から批判されてきた。実際、2023年中には技能実習中の失踪者が、過去最高の9753人まで増えてしまった。

 この理由は後半で考察するが、技能実習制度の抱える課題が顕在化したものと言えよう。この反省を踏まえて新たに誕生したのが、2027年4月1日に施行する育成就労制度である(冒頭の図1)。

 新制度において、外国人労働者は未経験からスタートして段階的に専門性を高め、最終的には日本での長期就労(永住権も取得可能)を目指すことができる。
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「育成就労制度」「特定活動55号」とは何か?

 最初のステップは育成就労である。原則3年間の在留期間で、基本的な技能と日本語能力を育成する。ここで日本語試験や技能試験に合格するか、良好に修了することで次のステップである特定技能1号へと移行できる。

 特定技能1号は通算最長5年間、戦力として現場で活躍する期間であり、旧制度では現実的に困難だった転職も可能となった。特定技能1号として働く5年間で、さらに高度な技能と、現場のリーダーや監督者としての実務経験を身に付けることで、最終ステップである特定技能2号へとステップアップできる。

 特定技能2号では、在留期間の更新上限がなくなり、それまで認められていなかった家族の呼び寄せが可能になるほか、永住権取得にも道が開かれる。

 ただし、特定技能1号の対象となる16分野のうち、「航空」および「自動車運送業」の2分野は育成就労の対象から除外された。

 これは職業の特性上、やむを得ない措置ではある。と言うのも、「自動車運送業」の場合、ドライバーという職業は運転免許を保有していることが前提だからだ。運転免許を持っていなければドライバーとしての仕事はさせられないため、「就労しながら技能を身に付けられるよう育成する」という育成就労制度が成立しない。

 このジレンマを解消するのが、特定活動55号(告示55号、特定自動車運送業準備、2024年12月開始)である。トラックドライバーの場合は最長6カ月、バス・タクシードライバーの場合は最長1年、日本の運転免許を取得するための準備期間として設けられた。

 当たり前だが、この期間中にドライバーとして働くことはできない(運送業における補助的な仕事はできる)。そしてこの在留期限内に運転免許(バス・タクシーは第二種)を取得できなかった場合、その時点で強制的に帰国させられる。

難易度は? 最終段階“永住権の取得者”は「○割」か

 それぞれのステップでは試験が設けられ、外国人ドライバーはふるいにかけられることになる。まずハードルとなるのは、日本の運転免許取得である。

 2025年、警察庁は相次ぐ(トラックに限らず)外国人ドライバーによる交通事故増加を受け、外免切り替え(外国の免許を日本の免許に書き換える仕組み)の試験を厳格化。学科試験の合格率は92.5%から42.8%へ、技能試験の合格率は30.4%から13.1%へと急落した

 トラックドライバーの場合、在留可能期間は半年しかないから、うかうかしていると免許を取得できず、強制帰国ということにもなりかねない。

 また運転免許を取得したら、実技(ただし実際に車を運転するわけではなく、PC画面のイラストや事例を見て適切な判断を選ぶ形式)と学科からなる特定技能評価試験に合格しなければならない。ちなみに試験の難易度は、「実務経験2年程度の者が、事前に当該試験の準備を行わずに受験した場合、7割程度合格できる水準」と定められている。その合格率は72.1%(2025年8月20日時点)である。

 さらに日本語能力テスト(N4レベルまたはJFT-Basic、基本的な日本語ができるレベル感)にも合格しなければならない。

 トラックドライバーの特定技能2号については、対象者登場が2030年以降のため、現時点では詳細が不明である。試験内容については、先行する他分野での取り組みから、学科と実技、両方の試験が行われるはずだ。

 特定技能2号の合格率は、分野によってだいぶ差が開く。たとえば、ビルクリーニング分野における2026年3月の合格率は19.3%。外食業分野における2025年9月の合格率は60.2%。自動車整備分野では合格者がゼロだったこともある(2024年8月)。

 これは筆者の見立てに過ぎないが、整備士のような高度な知識と技術が求められるわけではないドライバーについては40~50%程度の合格率に落ち着くのではないか。

 このように、外国人が日本国内でドライバーとして働くためには、まず運転免許取得というハードルがある。再受験が可能とは言え、免許取得の合格率が1割程度なのだから、特定技能2号まで至り永住権の取得資格まで得られる人は、1割を超えることはないと推測する。 【次ページ】山口氏も警告、特定技能2号への移行の「高すぎる壁」
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