- 2026/07/23 06:50 掲載
国が大注目「ドローン物流」は使い物になるのか?人口1108人の村で見た「意外な実態」(2/2)
ドローン物流どう運用? 実は「パイロットは2種類ある」
物流ドローンのパイロットには、グランドパイロットとリモートパイロットの2種類が存在する。リモートパイロットは、管制室においてドローンの運航を管理する。管制室とは言ったが、畳敷きの和室にPCとモニターが並べられた状態で、失礼ながら物流の最先端技術をオペレーションする場には見えない。
ちなみにデスク上に並ぶモニターは、私たちが使うようなPC1台に複数のモニターをつなげたものではなく、モニターとPCは1対1で接続されている。処理能力などを考慮し、1対のPC/モニターで1台のドローンを管制する、こうしたハードウェア構成にしているのだそうだ。
またここでは小菅村で運航するドローンだけを管制するのではなく、NEXT DELIVERYが全国で運航するドローンすべてを管制している。同社運航部には社員が6人在籍しており、繁忙期には外部パイロットに業務委託を行うこともあるそうだ。この人たちが交代で小菅村に出勤し、運行業務を行っている。
「今は、1人のリモートパイロットが5機のドローンを担当していますが、当座の目標は20機、将来はさらに増やしたいと考えています」と藤澤氏は説明する。
対して、グランドパイロットは、航路を開拓する役目や、定期的に航路の安全性などを確認する役目を担う。
前述の通り、現状の法令において物流ドローンはあらかじめ定められた航路しか運航できない。この航路を開拓するのが、グランドパイロットの役目である。
ドローン航路の開拓は、あらかじめ管制システムのマップ上で航路を指定した後、予定航路に足を運んでロケハンを行う。実際にルート検証フライトを行うのはその後である。
「マップ上で確認すれば大丈夫なのでは?」と思うかもしれないが、それは間違いだ。国土地理院が発行する地図に記された標高は、あくまで地表における標高であって、地表に生える樹木や建築物などの高さではない。これらは現地に赴き、ドローンが安全に飛行できるかどうかを確認しなければわからない。
ちなみにドローンは、地表からおおよそ高度70~150メートルを飛行する。航空法上、ドローンは高度150メートルを超えて飛行することはできない。
しかし送電線が谷を越えるようなロケーションでは、地表から送電線までの高さが150メートルを超えることもある。こういった場所はドローンを飛ばすことができないので、ドローンが150メートルを超えない高さを飛行できるルートを探さなければならないそうだ。
実は2026年1月27日、エアロネクストはドローン墜落事故を起こしている。幸いなことに人的被害はなく、建物などを損傷しただけに留まったのだが、この事故は航路開拓中のルート検証フライトにおいて発生している。
グランドパイロットは、プロポ(Proportional System、ラジコンやドローンなどを操作する送信機)を持参し、地表から飛行するドローンを追いかける。ドローン航路はなるべく民家などを避けて設定されるため、グランドパイロットは、ときに道なき山中などを進むことになる。事故は、ドローンが電線に接触、墜落してしまったという。
ちなみにエアロネクストが現在運航するドローンに搭載されるセンサー類は、カメラだけであり、LiDAR・ミリ波レーダー・超音波センサーなどは搭載していない。よって運航中の障害物回避は、「障害物がないところを飛ぶこと」が大前提であり、万が一の際には、リモートパイロットがドローンに搭載されたカメラ映像を目視して回避操作を行うことになる。
なおこの事故を踏まえ、NEXT DELIVERYはルート設計および運航体制の検討プロセスについて再点検を行い、安全性の評価および改善を徹底的に実施しているという。
ドローンのスペックは?「最大の飛行距離」で切実事情も
現在運航されている物流ドローンで輸送可能な貨物は5キロまで。ドローンは、最高速度15メートル/秒(時速換算だと54キロメートル/時)で飛行可能で、飛行可能時間は40分程度、飛行可能距離は30キロメートル程度である。「つまり直線距離だと15キロメートル強の大月市までであれば、ドローン運航は可能なのでしょうか?」という筆者の素人丸出しな質問に対し、藤澤氏は「往復しなければならないので、無理ですね」と苦笑しながら答えてくれた。
小菅村での運航は、必ず出発地点(ドローンデポ)に戻ってくる形を取っている。将来は旅客機のような片道飛行を行い、到着地でバッテリーの交換・充電を含むメンテナンス等を行うような運航もあり得るかもしれない。そうすればより長距離運航が可能になるが、今度はドローンデポを複数設けるため、コストや手間が増加し、ドローン物流の優位性が損なわれる可能性がある。
このあたりは痛し痒しだろう。
1運航の「コスト」は? 社会実装に向けた現在地
ドローン物流の社会実装には、さまざまなハードルが立ちはだかっている。技術開発はもちろん、ビジネスプロセスの確立も必要だ。輸送機関としてのドローンが、完全にトラックの代替となることは考えにくい。よってドローン物流が成立する貨物の選定や、利用シーンといった、ビジネス上の適材適所を見つけることも大切となる。
小菅村において行われている、車両とドローンを組み合わせた共同配送は、過疎地における物流網維持という観点で、将来は理想的なビジネススキームになる可能性が高い。
もう1つ大切なのが採算性である。具体的な1運航あたりの航行コストを明らかにすることはできないが、現在は数千円程度まで下がっているそうだ。約1年前に筆者がヒアリングした運航コストと比べると半額以下の水準に達していることになる。運ぶモノによっては、採算が取れる水準に達していることは付記しておこう。
過疎地における物流網維持において、ドローン物流が今後大きな役目を期待されているのは間違いがない。しかし一方で、ドローン物流だけで過疎地の物流が維持できるわけではない。ドローン物流とともに、過疎地の物流網維持において必要なピース(輸送手段)については、別記事で考察しよう。
【独自映像】ドローンの離着陸をカメラに収めた
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