• 2026/07/23 06:50 掲載

国が大注目「ドローン物流」は使い物になるのか?人口1108人の村で見た「意外な実態」

連載:「日本の物流現場から」

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ドローン物流は、政府が推し進める物流政策において自動運転トラックなどと並び、重要な技術開発として挙げられる。だが注目度の高さとは裏腹に、多くの人は「ドローンが貨物を運ぶ」といった漠然としたイメージしか抱いていないだろう。誰が何のためにドローン物流を利用するのか、どう運用しているのか、社会実装までの現在地はどこなのか、意外と知られていない。そこで今回、ドローン物流の実態を解き明かすべく、山梨県小菅村で行われているドローン物流の実証実験現場を突撃取材した。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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デモフライトでドローンが飛行している様子
(筆者撮影)

道の駅 こすげに「ドローンが降り立った」

 「間もなくドローンが参ります。ドローンスタンドのエリアの外側にお下がりください。危険ですのでエリアの内側に入らないようにお願いします」。アナウンスが流れると、「道の駅 こすげ」(山梨県 北都留郡 小菅村)の上空に、ポツンと点のようなドローンが見え始めた。近づくにつれてプロペラ音は次第に大きくなるが、耳障りなほどの大音量ではない(記事末尾には、ドローンが動く様子を収めた動画を用意しています)。

 「草刈り機くらいの音ですね」と、リモートパイロットを務める(リモートパイロットの役割は後述する)、NEXT DELIVERY 運航部 運航開発グループ リーダー 藤澤 亮輔氏は説明する。

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【画像付き記事全文はこちら】管制室で取材に応えるNEXT DELIVERY 運航部 運航開発グループ リーダーの藤澤 亮輔氏
(筆者撮影)

 ドローンは、「道の駅 こすげ」駐車場の一角に設けられたドローンスタンド(貨物を配送する場所)に、ほんの数秒、着陸したかのように見えたが、すぐに飛び立っていった。

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ドローンスタンドが配備されている道の駅 こすげ
(筆者撮影)

 藤澤氏は、「今回はデモンストレーション飛行なので貨物を積まなかったのですが、本来はいったんランディングし、荷室を切り離してすぐに飛び立ちます」と説明する。着陸し、ドローンから手作業で貨物を取り出さない理由の1つは航空法だという。貨物を取り出すためにドローンを完全に着陸させてしまうと、法令上、点検などを行わないと再飛行ができないのだ。

 ちなみに小菅村には8つの集落があり、これらの集落を結ぶドローン航路が10ルート程度ある。NEXT DELIVERYでは、小菅村に隣接する丹波山村にも配送を行っており、両村を合わせたドローン航路は20ルート程度になる(ルート数は取材時のもの)。

 「道の駅 こすげ」のドローンスタンドは、その1つのルートである。他のドローン航路では、小学校、キャンプ場、集落の空き地などにドローンスタンドを設けているという。
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ドローン物流は「誰が」「何のために」使うのか?

 NEXT DELIVERYの親会社であるエアロネクストは、小菅村でドローン物流の社会実装を目指し、実証実験を繰り返している。ではどのような用途でドローン物流は利用されているのか。

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村役場、図書館、小中学校などが並ぶ、小菅村の中心部
(筆者撮影)

 ドローンで運ぶのは、買い物代行やフードデリバリーの商品などが中心で、保育園のイベントや、誕生日ケーキの配送などのイベントに利用されることもあるという。

 NEXT DELIVERYでは、買い物代行も請け負っている。配送地域内の住民に代わり、大月市内で買い物を行い、購入者の下に届けるのだ。買い物代行する商品は、日用品から食品、市販薬など多岐にわたる(酒類は除く)。

 では利用する人はどんな人なのか。

 意外かもしれないが、高齢者の利用はそれほど多くないそうだ。高齢者の場合、「大月市内まで買い物に出掛ける」ことが長年の生活習慣になっているケースが多いためと考えられる。利用者で多いのは、クルマを保有していない人や、まだ幼い子どもがいる世帯だと言う。

 現在実施されているドローンによる貨物輸送は、あらかじめ定められた航路以外を飛ぶことはできない。

 したがって利用者は各集落に設けられたドローンスタンドまで輸送された貨物を取りに行かなければならない。「ウチの庭まで運んでほしい」といったドローン輸送は、法令上許されていないのだ(なお可燃物など、航空機で運べない危険物は、ドローン輸送できない)。

主軸はドローンじゃない?「大手路線便事業者」の貨物を共同配送

 ではどのような形で、小菅村での実証実験を進めているのか。

 「小菅村では、エアロネクストの子会社であるNEXT DELIVERYが、ドローンと軽バンを用いて、小菅村・丹波山村地域の配送を行っています」と、エアロネクスト 広報部 アソシエイト 高井 航平氏は説明する。

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エアロネクスト 広報部 アソシエイト 高井 航平氏
(筆者撮影、「道の駅 こすげ」にて)

 筆者が訪問したNEXT DELIVERYの小菅村における拠点(集約所、ドローンデポという)は、もとは商店兼住居だったのだろう。訪問時は、折しも従業員の皆さんが月に1回のランチ会を楽しんでいる最中だった。

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エアロネクストの子会社であるNEXT DELIVERYの小菅村における拠点(集約所)。左側が共配用仕分けスペースで、右側は日用雑貨を扱う商店となっている
(筆者撮影)

 現在は、複数の大手宅配事業者および特積み事業者が持ち込む貨物を取りまとめ、NEXT DELIVERYが3台の貨物軽自動車(軽バン)で共同配送している。ちなみに、路線便事業者の貨物は運送約款上、ドローンで運ぶことができないという。

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仕分けスペースで仕分けを行っている様子
(筆者撮影)

 路線便事業者のトラックが到着すると、ランチ会を行っていた従業員が総出で荷物を卸し、そして仕分け始めた。と言っても、1日の取り扱い貨物量は、多いときで約150個、少ないときでは約60個で、平均すると80~100個くらいと言うから、その数は決して多くはない。

 都市部の軽バン配達員が、1人で1日100個以上、多い場合には200個を超える貨物を運ぶことを考えると、この貨物量はとても少なく感じる。ただし小菅村と丹波山村の合計人口は1108人だから、人口比で考えるとこの貨物量はむしろ多いのかもしれない。

 運送事業者からすれば、この数量の貨物輸送のために、小菅村・丹波山村までトラックを走らせるのは大変だろう。そのため同社は、別の大手運送事業者からも共同配送を打診されているそうだ。

 NEXT DELIVERYにおける輸送ビジネスの主軸は、あくまで車両による共同配送なのだ。 【次ページ】ドローンをどう運用? 実は「パイロットは2種類ある」
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