- 2026/09/04 06:50 掲載
【単独】DXは禁句、紙も残す…福岡の運送会社が見つけた、中小企業DXの「意外な正解」
連載:「日本の物流現場から」
Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。
デジタル領域で実績残し「父の運送会社」へ
荒巻 陽佑氏(柳川合同 取締役)は、大学を卒業後、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミー、web3・DAO領域で事業を展開するガイアックスに入社。同社在籍時には、ブロックチェーンのOSS(Open Source Software)開発やメディア運営などに従事していたという。ガイアックスを辞した後は、JPYCでCTOに就任するなど複数企業の経営に関与。2023年7月にはブロックチェーンの技術と法律をテーマにした著書「スマートコントラクトの仕組みと法律」を上梓、2024年1月に柳川合同に入社した。
「当時行っていた3~4社の仕事はすべて辞めさせていただいて、柳川合同に入社したのですが、最初はやはりお互いに手探りの状態でしたね」
それはそうだろう。陽佑氏は次期社長として入社したわけであり、しかも入社前にデジタル人材として華々しい実績を残している。従業員たちは新たなリーダーに対する気遣いとともに、戸惑いや緊張も感じていただろう。
「それでも根が明るく温かい人が多いので、次第に打ち解けていくことができました」(陽佑氏)
これには、柳川合同が備える社風(詳細は近日別記事で紹介する)に加え、荒巻氏自身の取り組みもあったのだろう。「圧倒的な成果を出す」ということを、陽佑氏は常に意識していたそうだ。
「『会社にとってなくてはならない人材である』と思ってもらえるように、さまざまなことに取り組んでいました」(陽佑氏)
陽佑氏は営業から現場の改善活動など、ありとあらゆる業務改善に取り組んだ。その1つがデジタル化である。
「紙のままでも構わない」と語るワケ
現社長の荒巻 哲也氏は、「田舎の会社にしては、早くからシステム化に取り組んでいた方だと思う」と振り返る。柳川市に隣接する大川市は、家具の大生産地として知られる。柳川合同でも家具輸送を行っており、これを管理するためのWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)やTMS(Transport Management System:輸配送管理システム)を早くから導入してきた。
ただやがて荒巻社長は、業務遂行のためにExcelファイルが多数生み出されていることに懸念を感じ始めた。
「『複数の異なるファイルに、同じ値を何度も入力する』、これはどう考えても無駄ですよ」。そう考えた荒巻社長は、業務上発生するさまざまなデータをデータベース化できる運送管理システムを導入した。
一方、陽佑氏は同社のシステム環境についてこう振り返る。
「複数のシステムが導入され、充実はしていたものの、個々のシステムについては必ずしも使い切れていないと感じました。システム導入は、あくまで人がより高い付加価値のある仕事をするための手段であって目的ではありません」
デジタル化やDX推進を、イコールシステム導入だと考える人にとっては耳の痛い言葉だろう。
陽佑氏は、「システムを使うことでかえって手間が増えるのであれば、紙のままで構いません」と紙を使った業務プロセスの存在を否定しない。運送会社の場合、配車組みや運転日報の作成など、ノート、ホワイトボード、プリントアウトした用紙への手書きといった、アナログ業務がまだまだ残っている。
運送事業や倉庫事業に伴って生み出された数値は、システムへ入力し、データ化される必要があるもの、それは最終形の話である。アナログ的手法のほうが、処理効率が高ければ、途中のプロセスはアナログのままで良いと陽佑氏は指摘しているのだ。 【次ページ】DXは禁句? その「明快な理由」とは
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