• 2026/02/13 掲載

下請けでもなぜ儲かる…? 奈良の運送会社が「15年で8倍」成長、その秘密はたった3点

連載:「日本の物流現場から」

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15年余りで8倍以上に保有トラックを増やしながら、倉庫業や3PLに進出をしないトラック運送会社、フジトランスポート(奈良市)。断定はできないが、筆者の所感では、日本最大の「純粋な運送会社」と考える。物流業界において大きな注目の的となっているが、業界関係者からは「なぜあれほどの急成長を実現できるのか」──との声がよく聞かれる。その理由を探るため、同社 代表取締役社長の松岡 弘晃氏を直撃した。
執筆:物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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フジトランスポート 代表取締役社長 松岡 弘晃氏
(筆者撮影)

約15年で経営規模「8倍超」に急成長

 奈良市を本社とするフジトランスポートは、グループ企業を含めた国内拠点数が150カ所。これとは別に、29カ所の整備拠点を保有する(ともに2026年1月19日時点)。

 ホールディングカンパニーである、フジホールディングスにおける、2025年6月期の売上高は798億円で、従業員数3739人、保有車両台数3430台だ。

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ずらりと並ぶフジトランスポートの車両
(筆者撮影)

 だが倉庫業や3PL(サードパーティ・ロジスティクス:荷主に代わり物流業務を代行すること)を手掛けていない。正確な統計は存在しないため、断言はしにくいのだが、運送業に特化した「純粋な運送会社」としては、日本最大の企業と考えられる。

 また15年あまりで保有車両台数を約3000台も増やし、その経営規模を8倍以上に伸ばした、急成長企業である点もユニークだ。

 なぜ、倉庫や3PLを手掛けないのですか?──この質問に対し、フジトランスポート 代表取締役社長 松岡 弘晃氏はこう即答した。

「これからは儲からないと思います」

 実際には、倉庫業・3PL業で利益を出している事業者は多数存在する。にもかかわらず、なぜ松岡氏はこのように答えたのか?

倉庫業・3PL業は「儲からない」の真意

 あくまで一般論ではあるが、倉庫業・3PL業は変動要素が大きい。また、元手となる倉庫コストが大きいため、市場を見誤ると途端に経営危機に陥るリスクがある。

 筆者が注目していた運送会社があった。この運送会社は、WMS(倉庫管理システム)をはじめとするデジタル投資を積極的に行い、トラック輸送と3PLを同時に受託する営業開拓能力に長けており、創業からわずかな期間で急成長を遂げていた。

 コロナ禍も終盤に差し掛かり、この運送会社は3000坪の倉庫を新たに借りた。倉庫賃料は、月額で1,200万円を超える。コロナ明けの需要回復を狙った乾坤一擲(けんこんいってき)の策…というわけではなく、この社長は確実に勝算があると考え、投資を行ったらしい。しかし、コロナは明けたものの、取引している荷主は需要回復をすることなく、結果、この運送会社は経営破綻した。

 倉庫業・3PL業を手掛ければ、経営に影響を与える変動要素を増やしてしまう。それが、松岡氏の「儲からないですよ」という言葉の理由なのだろう。

強みは「シンプルすぎる」経営

 一方、フジトランスポートの経営は実にシンプルだ。このシンプルさが、同社の強みの1つである。少し遠回りになるが、あるエピソードを先に紹介したい。

 フジトランスポートでは、徹底した運送原価把握を行うべく、ある社内システムを導入している。

 Y軸方向には、車両。X軸方向には、現在車両が担当しているリアルタイムの輸送案件と、その売上(=運賃)、燃料代等の諸経費(=原価)、そして粗利が表示されている。至極シンプルな画面構成だが、これこそがフジトランスポートの強さの源泉である。

「このシステムは、所長以上であれば誰もが自由にアクセス可能です。つまり、所長以上であれば全支店の全運行収支をいつでも確認できるようにしています」(松岡氏)

 トラック輸送ビジネスは、保有する車両のすべてが黒字運行していれば、赤字化する危険を最小限に抑えることが可能だ。そして、特に中小運送会社が赤字化してしまうのは、案件単位での収支はおろか、保有するトラックそれぞれの原価をきちんと把握できていないことが原因である。

 しかしそうは言っても、トラック輸送ビジネスを案件単位で「すべて」、そして「常に」黒字化できるかと言えば、それは難しい。

 たとえばアイスクリーム輸送を担うある運送会社では、個建て運賃契約(貨物1個あたりの運賃を設定、輸送総個数が運賃総額〈=売上〉になる輸送契約)を締結している。しかしアイスクリームはもともと季節波動が大きい上、テレビなどのメディアで商品が取り扱われると販売量が2倍3倍にも膨れ上がる。そのため、この運送会社では赤字と黒字を行ったり来たりする、ジェットコースターのような経営を強いられていた。

 同様のことは小口配送にも言える。1日5件の集配を行う予定が、荷主の都合等により4件に減ってしまうと赤字化してしまうこともある。常に一定量の貨物輸送を確保することで、結果的にトラック輸送ビジネスは安定するのだ。

 その点、幹線輸送はこのようなビジネス上の変動リスクが比較的少ない。加えて、収支計算も小口輸送などに比べるとシンプルで済む。

 確実に儲けを出すために、変動要素の少ないビジネスとして幹線輸送に注力すること。そしてその収支結果をリアルタイムに観察できるシステムを導入し、利益を食いつぶしてしまうような危険な兆候をいち早く察知すること。

 端的に言えば、「経営をシンプルに」しているのだ。 【次ページ】「運賃、意外と高くないですね?」
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