- 2026/10/14 06:50 掲載
【潜入】生産効率2倍を実現「長野の工場」、物流ロボが自らエレベーターを使った衝撃(2/3)
連載:勝てる工場のつくり方~シスメックスRA~
外部委託を“逆手”に、「物流内製化」に向けた事前検証
新工場で自動化を進めるのに合わせ、それまで外部に委託していた物流業務を内製化することにした。先述したが、同社は生産規模の拡大に伴って工場が手狭になる中、部品や完成品の保管を外部倉庫に委託していた。こうした業務は、以前までは自社で担っていたものだ。「もともとシスメックスRAは、設計、製造、調達まですべて内製により行っていました。やむを得ず一部の業務を外部に委託していましたが、いずれ内製に戻したいという思いはずっとありました」(小澤氏)
新工場で物流を内製化するにあたって、ただ単に外部委託していた業務を自社に戻したわけではない。外部委託していた期間を、新たな物流の仕組みを試す機会としても活用していた。
その1つが、完成品を出荷する際のトラックの積載率改善だ。かつては「今日作ったものを今日出荷する」ことでリードタイムの短縮を重視していたが、出荷量は日によってバラつきがあり、トラックが満載にならないケースもあったという。
そこで、製品をいったん外部倉庫に保管し、1台分の荷量がまとまってから出荷する方法を検討。2020年ごろから、物流業務を包括受託する3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)を活用し、この運用を試した。
「2021年ごろに新工場の話が出たときに、物流業務を内製化に戻すという考えがありました。移転前から、製品を外部倉庫に一時保管して荷量をまとめてから出荷するオペレーションを、PoCとして検証していました」(小澤氏)
つまり、新工場での物流内製化を見据え、移転前から効率的な出荷方法を先行して検証していたのだ。こうした検証によって、トラック便を減らし、CO2排出量も削減できる見通しが立ったという。
AMRが自分でエレベーターに!?「入荷~出荷の自動化」解剖
2025年6月に新工場が稼働してから1年半ほどが経つ。物流の自動化は、入荷から出荷まで工場全体に及んでいる。部品の入庫・保管・ピッキングから、生産ラインへの供給、完成品の搬送、梱包・出荷までを一体的に設計。単に搬送ロボットを導入するだけではなく、工場全体の物流をつないでいる点が特徴だ(関連記事では動画と画像を使って工程ごとの自動化などについて解説しているので、ぜひ参照してください)。
(1)部品の入荷からピッキング
入荷した部品は倉庫に保管され、作業者はAMR(ラピュタロボティクス社製)の案内に従って必要な部品をピッキングする。扱う部品は月3万点程度に及び、当日にピッキングする部品の情報は同社のERPからAMR側に送られる。作業者は、その情報を基に必要な部品を選定する。
(2)生産ラインへの搬送
ピッキングした部品は、製品の機種ごとに分けられた台車へ積み込む。台車が満載になると、作業者が生産ラインのあるフロアへの搬送を指示する。iPhone端末でQRコードを読み取るだけで指示できるため、複雑な操作を必要とせず、パートタイマーにも配慮した仕組みとなっている。
台車の搬送はオムロン社製のAMRが担う。AMRが台車の下に入り込み、生産ラインのあるフロアまで運ぶ。部品倉庫と生産ラインは異なるフロアにあるため、途中でエレベーターを利用するが、ここも自動化されている。
AMRはWi-Fi経由でコントローラーと通信し、エレベーターの制御盤に指示を送る。エレベーターが指定された階へ移動すると、台車を載せたAMRが乗り込み、目的の階で降りる。その後、指定された位置まで台車を運ぶ。
エレベーターがAMRに使用されている間は、人が操作できない仕様になっている。また、人とAMRの動線が交錯しないよう、上り専用・下り専用といった運用ルールも設けた。
(3)完成品の組み立て・梱包・出荷
生産ラインに搬送された部品は、そのまま台車上で組み立てられる。フロアの照明は十字型に配置され、一方向から照らす場合に比べて作業者の手元に影ができにくいよう工夫されている。
完成した製品は、再びAMRによって台車ごと運ばれ、エレベーターを経由して別フロアにある梱包エリアへ搬送。梱包後は自動倉庫に格納され、出荷を待つ。
自動倉庫は、1階と2階の間をつなぐ搬送設備としての役割も担う。倉庫内を2つに分け、完成品に加えて梱包材なども保管している。 【次ページ】生産効率「なんと2倍」、自動化・内製化の飛躍的な成果
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