• 会員限定
  • 2024/09/09 掲載

愛知県発・旭鉄工の「有料の工場見学」に人が殺到する理由、凄すぎる“手作りの改革”

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
愛知県碧南市に本社を置く自動車部品メーカー「旭鉄工」は、売上169億円(2023年度)、従業員400人強(2024年5月時点)の規模を誇る業界でも知られたDX先進工場です。実際に、全社員が一丸となったDXにより、年間10億円以上の利益アップを実現しています。同社はどのような領域に改革のメスを入れ、どのような成果を得たのでしょうか。売上に直結する改革の進め方について、同社 代表取締役社長 木村哲也氏に詳しく聞きました。
photo
トヨタ系の最強工場「旭鉄工」とは何者か? なぜ、有料の工場見学に人が殺到するのか?
(旭鉄工 / i Smart Technologies 外観:筆者撮影)

旭鉄工流の収益アップ法(1):製造ラインの見える化

 長年、製造ラインの見える化は、製造業の生産性を大きく左右する重要課題として多くの企業が取り組んできました。しかし、製造ラインの稼働状況を把握するためのソリューションは高価なものが多く、旧型の生産設備と相性も悪いことなどから、なかなか導入が進まない状況があります。

 こうした中、自社独自開発の技術により、初期投資コストを大幅に抑えながら、社内の全200の製造ラインの稼働状況をモニタリングできる体制を整えたのが旭鉄工です。これが他社には真似できない、旭鉄工の生産性の高さにつながっているのです。

1ページ目を1分でまとめた動画
 具体的に同社では、主要な指標としてサイクルタイムや可動率(製造ラインがきちんと動く割合)を重視しています。一方、従来のように手間や時間をかけてストップウォッチで人がサイクルタイムを測り、停止時間を人が記録する方式では、継続的な測定や正確な記録が難しいために、ばらつきや、作業者間の差が把握しづらくなりますし、停止時間は短く記録されがちであり、問題が隠れてしまいます。

 その課題を解決するために同社では、磁気センサーや光センサーを用いて自動測定する仕組みを独自構築してきました。

 これにより停止時間は自動で正確に記録され、停止要因は作業者がボタン(5つから選択)を押下する仕組みにより把握が可能になっています。これは、必要以上にシステムが複雑・高価にならないようにすることと、カイゼンで効果を出すのが目的なので頻度の高い5つの要因について把握すれば実用上十分であるというこれまでの経験に基づいた割り切りによるものです(さらに詳しく知るには過去記事を参照)。

旭鉄工流の収益アップ法(2):問題を徹底的に見直す仕組み

 一方、一定以上の規模のカイゼンを実現するには、IoTのようなデジタル技術を活用する仕組みだけでなく、人の測定や分析のサポートも欠かせません。

 たとえば、同社では「ラインストップミーティング」と呼ばれる関連従業員全員で問題点の洗い出し、共有、対策を行う取り組みが毎日継続的に行われています。

 また、目標達成時にはカイゼン活動&報告会で同社 社長の木村氏に報告し、それを木村氏が承認し、笑顔で写真を撮り、Slackで共有されるような流れが自然に起きています。

画像
旭鉄工の「問題を徹底的に見直す仕組み」
(作成:コミュニケーションデザイナー/グラフィックファシリテーター:りんどうまき氏)

 Slackのようなコミュニケーションツールの活用も進めており、あえて用途を限定しないことで、情報共有のスピードアップに貢献しています。こうした前例にとらわれない取り組みこそ、企業体質を強くするために欠かせないものだと木村氏は言います。

旭鉄工流の収益アップ法(3):自社ノウハウを外販する

 同社では「人には付加価値の高い仕事を」を合言葉にカイゼンを進め、そこで得られたノウハウをソリューション化し、製造ライン遠隔モニタリングサービス「iXacs(アイザックス)」として外部販売をしています。この外部販売を担う企業として2016年には、i Smart Technologiesを設立しています。

 iXacとは、センサーを取り付け、トヨタ生産方式(TPS)に基づき設備の稼働状況を可視化し、改善活動に生かすためのサービスです。


 iXacsの稼働モニタリングのソリューションは、すでに200社以上の企業が導入しており、継続率も約86%と高くなっています。付加価値生産性は30%向上(2016年比)しており、損益分岐点売上高は2015年から2022年の間に30億円下がっています。

 このように、自社のノウハウをソリューションとして外部販売することにより、生産を請け負う以外の強みを作ることができるのです。これは、国内のあらゆる工場が参考にできる点でしょう。

 ここからは、旭鉄工の収益を押し上げた「カーボンニュートラルの取り組み」や、「生成AI活用の3つの用途」についても解説します。 【次ページ】なぜ、電気代を2億円も削減できた?「3つのポイント」を図解

関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます