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- 2024/09/09 掲載
愛知県発・旭鉄工の「有料の工場見学」に人が殺到する理由、凄すぎる“手作りの改革”
連載:第4次産業革命のビジネス実務論
旭鉄工流の収益アップ法(1):製造ラインの見える化
長年、製造ラインの見える化は、製造業の生産性を大きく左右する重要課題として多くの企業が取り組んできました。しかし、製造ラインの稼働状況を把握するためのソリューションは高価なものが多く、旧型の生産設備と相性も悪いことなどから、なかなか導入が進まない状況があります。こうした中、自社独自開発の技術により、初期投資コストを大幅に抑えながら、社内の全200の製造ラインの稼働状況をモニタリングできる体制を整えたのが旭鉄工です。これが他社には真似できない、旭鉄工の生産性の高さにつながっているのです。
その課題を解決するために同社では、磁気センサーや光センサーを用いて自動測定する仕組みを独自構築してきました。
これにより停止時間は自動で正確に記録され、停止要因は作業者がボタン(5つから選択)を押下する仕組みにより把握が可能になっています。これは、必要以上にシステムが複雑・高価にならないようにすることと、カイゼンで効果を出すのが目的なので頻度の高い5つの要因について把握すれば実用上十分であるというこれまでの経験に基づいた割り切りによるものです(さらに詳しく知るには過去記事を参照)。
旭鉄工流の収益アップ法(2):問題を徹底的に見直す仕組み
一方、一定以上の規模のカイゼンを実現するには、IoTのようなデジタル技術を活用する仕組みだけでなく、人の測定や分析のサポートも欠かせません。たとえば、同社では「ラインストップミーティング」と呼ばれる関連従業員全員で問題点の洗い出し、共有、対策を行う取り組みが毎日継続的に行われています。
また、目標達成時にはカイゼン活動&報告会で同社 社長の木村氏に報告し、それを木村氏が承認し、笑顔で写真を撮り、Slackで共有されるような流れが自然に起きています。
Slackのようなコミュニケーションツールの活用も進めており、あえて用途を限定しないことで、情報共有のスピードアップに貢献しています。こうした前例にとらわれない取り組みこそ、企業体質を強くするために欠かせないものだと木村氏は言います。
旭鉄工流の収益アップ法(3):自社ノウハウを外販する
同社では「人には付加価値の高い仕事を」を合言葉にカイゼンを進め、そこで得られたノウハウをソリューション化し、製造ライン遠隔モニタリングサービス「iXacs(アイザックス)」として外部販売をしています。この外部販売を担う企業として2016年には、i Smart Technologiesを設立しています。iXacとは、センサーを取り付け、トヨタ生産方式(TPS)に基づき設備の稼働状況を可視化し、改善活動に生かすためのサービスです。
iXacsの稼働モニタリングのソリューションは、すでに200社以上の企業が導入しており、継続率も約86%と高くなっています。付加価値生産性は30%向上(2016年比)しており、損益分岐点売上高は2015年から2022年の間に30億円下がっています。
このように、自社のノウハウをソリューションとして外部販売することにより、生産を請け負う以外の強みを作ることができるのです。これは、国内のあらゆる工場が参考にできる点でしょう。
ここからは、旭鉄工の収益を押し上げた「カーボンニュートラルの取り組み」や、「生成AI活用の3つの用途」についても解説します。 【次ページ】なぜ、電気代を2億円も削減できた?「3つのポイント」を図解
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