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- 2024/07/16 掲載
電子マネーより「QRコード決済」が伸びてる理由、なぜ新紙幣発行も追い風になるのか?
QRコードが伸び、電子マネーが失速
現時点におけるキャッシュレス決済で最も高いシェアを占めているのはクレジットカードである。経済産業省の調査によると、2023年におけるクレジットカードの決済額は105.7兆円となっており、キャッシュレス決済の8割以上をクレジットカードが占める。次いで比率が高いのはSuicaや楽天Edyなど、いわゆる電子マネー決済だったが、QRコード決済が普及したことで状況が変わりつつある。キャッシュレス決済に占める電子マネーのシェアとQRコード決済のシェアは2022年以降逆転しており、現在ではQRコード決済が電子マネーを上回っている。2024年に入ってからはその傾向が顕著となっており、電子マネーの決済金額は毎月、前年比でマイナスが続いている状況だ。
日本においてQRコード決済のサービス事業者が登場した当初は、国内での評価はかなり低かった。すでに電子マネー決済が相応に普及していたことや、仕組みが簡便であることからセキュリティ面での不安を口にする人も多かった。さらに言えば、中国や東南アジアで急速に普及しているという現状も、否定的な見解を増やす材料になっていたように見える。
日本ではQRコード決済は普及しないと主張していた論者の多くは、中国や東南アジアはクレジットカードが未整備だったので、QRコードしか決済手段がなく、これが普及を後押ししたと分析していた。日本はクレジットカードのインフラが整っているので、そう簡単にQRコードには移行しないという理屈である。
しかしながら、こうした見立ては、あくまで日本と中国・東南アジアを比較した議論に過ぎない。欧米各国と比較すると、日本のクレジットカードの普及率はかなり低く、現時点でもクレジットカードが使えない店舗が存在することで訪日外国人客の需要を取りこぼしているケースは枚挙にいとまがない。
先進国を基準にグローバルで比較した場合、日本はどちらかというとクレジットカードのインフラがあまり整備されていな地域であり、これはQRコード決済が大きく普及する余地があることの裏返しでもある。
MMD研究所の調査、よく使われている決済手段は?
クレジットカードはもちろんのこと、電子マネー決済を導入する場合でも、店舗側にとっては専用端末の導入が必須であり、相応の負担が必要となる。一方、QRコード決済は、設備投資の負担が最小で済むため、零細店舗や屋台などでも利用が可能であり、初期導入のハードルはかなり低い。MMD研究所がインターネットを通じて行った調査によると、直近1カ月において普段利用している支払い方法として最も多かったのは現金で78.1%、次いでクレジットカードが57.0%だった。QRコード決済は47%とクレジットカードに迫る勢いだが、これに対して非接触型電子マネーは34.7%とかなり水をあけられている様子が伺える。
この調査は、あくまで普段利用している支払い方法についてのアンケートなので、高額決済を中心にクレジットカードへのニーズは強く、決済市場の全体像を示しているわけではない。だが、電子マネーと比較してQRコード決済が伸びているのはほぼ間違いないだろう。 【次ページ】新紙幣の流通がキャッシュレス化を促進する可能性も
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