• 2026/03/02 掲載

SMBCはどこを狙う?世界のBaaSプレイヤー「18社」に学ぶ“最前線の差別化戦略”(2/3)

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世界BaaSの構造と銀行由来BaaSの実際

 今、世界のBaaS市場を俯瞰すると、大きく「銀行由来」と「フィンテック由来」の2系統に分類される。両者はそれぞれ、信頼性や規制適合性、あるいはUX(ユーザー体験)や越境展開の柔軟性といった異なる強みを持ちつつ、BaaS基盤としての役割を拡大している。

 銀行由来のBaaSとは、チャータードバンク(ライセンス保有銀行)が自らの勘定系機能や金融サービスをAPIで開放し、業種を超えた他社の窓口を通じてデジタルに金融サービスを提供するモデルである。

 ただし、世界の多くの銀行は、BaaSを構築していても、実際にはその銀行の戦略に基づき自行専用で運用しているのが実情である。

 たとえば、米フィフス・サード・バンク(Fifth Third Bank)の「Newline」やグリーン・ドット・バンク(Green Dot Bank)の「Arc」、ドイツ・ソラリスバンク(Solarisbank)の「Embedded Financial Services」、日本における、みんなの銀行の「みんなのBaaS」などは、自行用のBaaS基盤として設計しており他行へのBaaS基盤の外販やシステム開放を行っていない。

 他行差別化の戦略的サービスとして、自行だけで一般企業(ブランド)への組込型金融サービスを提供しているのだ。

 ここで、Green Dot Bankの組込み先としては米国でのウーバー(Uber)やApple Cashが有名であり、多くの欧州諸国へ広域展開しているSolarisbankの筆頭株主は日本のSBIである。

 こうした中で、英国のクリアバンク(ClearBank)、スターリング・バンク(Starling Bank)、米国のファースト・インターナショナル・バンク・アンド・トラスト(First International Bank & Trust)といったプレイヤーは、例外的に“開かれたBaaS”としての展開を進めている。

 ClearBankは英国で初めて新設されたクリアリングバンクであり、第三者にリアルタイム決済インフラを提供する。

 伝統的金融機関だけでなくネオバンクのレイジンUK(Raisin UK)や仮想通貨交換所のCoinbase UKでの英国内利用も報道されており、オランダに設立したClearBank Europe NVから欧州へも進出している。Starlingはリテールバンキング業務(銀行)とシステム外販 の部門を分け、競合関係を避けられる海外へ「Engine」と名付けた部門で外販を行う体制を整えている。

 すでにルーマニアのソルトバンク(Salt Bank)やオーストラリアのAMP Bank、ニュージーランドのSBS Bankへ外販し、米国地銀への拡販も狙っている。米国のFirst International Bank & Trustは、「Kavinu」と名付けたBaaS基盤上の「KotaPay」サービスによる支払・送金や売掛金管理・請求書処理をネオバンクRaisinのドイツ本社を通じて欧米へ提供している。

フィンテック由来BaaSとSMBCの選択とは?

 一方で、フィンテック由来のBaaSは、UX最適化や越境対応といった柔軟性を武器に急成長している。

 ストライプ(Stripe)は別格の感があるが、とりわけ注目されるのが、オランダ発のアディエン(Adyen)と、オーストラリア発で本社機能をシンガポールに移したエアウォレックス(Airwallex)、米国のガリレオ(Galileo)である。

 すでにStripeだけでなく、アディエン(Adyen)とエアウォレックス(Airwallex)は日本へも進出しサービスを開始している。

 Adyenはもともと決済ゲートウェイとしてスタートしたが、銀行免許取得後は口座、決済、ローン、KYCなどを統合的に提供するBaaSへ進化。2024年時点ではAIによるUX最適化スイート「Adyen Uplift」を武器に、エンタープライズ企業との連携を拡大している。新しいAndroid POS端末も好調で、Uberもアラブ首長国連邦/香港/カリブ海諸国などで利用を開始している。

 また、エアウォレックス(Airwallex)は多通貨口座、為替、グローバルカード発行、越境送金を中核とし、ロンドン拠点の倍増を進めるなど、銀行免許取得を模索しながらグローバル展開を加速している。

 米国ではガリレオ(Galileo)がソーファイ銀行(SoFi)傘下で存在感を高めており、KYC、カード発行、リアルタイム決済APIなどをワンストップで提供している。Enablerとして銀行免許を持たないBaaS提供業者であるPlaidやMarqeta、Q2などとも競合している。

 レイルズ(Railsr)(旧Railsbank)や、アンリミット(Unlimit)、インタージロ(Intergiro)、バンカブル(Bankable)といったEnabler(BaaS提供業者)も、ヨーロッパを中心に着実に採用を広げている。

 Enabler(BaaS提供業者)は複数の銀行へBaaS基盤を提供しており、一般企業(ブランド)へ金融サービスを組込みながら銀行との間のトランザクション処理を行っている。

 ガリレオ(Galileo)は、子会社のテクニシス(Technisys)が持つサイバーバンク・コア(Cyberbank Core)を親会社であるSoFi Bankへ外販するだけでなく、現在、そのフロント部分のCyberbank DigitalをベネズエラのMercantil Bancoなど南米の銀行に拡販している。近い将来、Enablerとして南米でも展開すると見られている。

 近年ではGalileoのように、特定の銀行によるフィンテック由来のBaaS囲い込みが進んでいる。たとえばソシエテ・ゼネラル(Societe Generale)は、BaaS企業であるトレゾー(Treezor)を買収し、自社グループの決済・BaaS基盤として統合した。

 これは、自行でBaaS基盤をゼロから構築するのではなく、既存のフィンテックを取り込むことでBaaS機能を強化する戦略である。

 ただし、現在、フィンテック企業のSharesへ売却する交渉を進めてもいる。AIやブロックチェーンを活用するエージェント機能やステーブルコインなどの進化を捉えたビジネスモデルの見直しを行う中で、BaaS機能を自行開発し新たに創り直そうとしているのだという。

 インドで先進的にBaaSによるEmbedded Financeビジネス(組込型金融サービス)へ取り組むイエス・バンク(YES BANK)を持分法適用会社としたSMBCは、2026年1月に、米国のBaaS提供業者Syncteraへも出資をした。

 これは単なる海外投資ではない。YES BANKはインドにおけるBaaSスタートアップ企業Falconと提携したEmbedded Financeの実装拠点であり、Syncteraは米国における“中間レイヤー”の代表格だ。SMBCは、銀行免許を軸とした伝統的なモデルだけでなく、フィンテック由来の接続基盤にも関与することで、BaaSビジネスの構造変化そのものを押さえようとしているとも読める。

 小俣氏は「世界的には“フィンテック由来の中間レイヤー”利用が非常に好調です。自分たちで構築せず、免許もあまり持ちたくない一般企業が、こうしたBaaS提供業者の傘下に入って金融サービスを実現しているのが現状です」と語る。

 ただし、金融サービスを組込み(Embedded)始めた一般企業は、1社だけのBaaSを利用するのではなく、銀行由来のBaaSも含めた複数のBaaS基盤利用をし始めており、それぞれのアプローチが市場で競合するだけでなく、連携・買収といった融合も進みつつある。

 また、一般企業(ブランド)やBaaS提供業者(Enabler)と銀行(Chartered Bank)の間でデータ共有を巡る取扱いや手数料についての議論が続いていること、BaaS利用各社のデジタル・ウォレットやweb3ウォレットと普通預金の関係の在り方には今後も注目しておきたい。

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18の世界のBaaS提供事業者
(出典:日本金融通信社)
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