- 2026/05/22 掲載
残高11兆円…地銀8割が手を染める「仕組み貸し出し」、金融庁が警戒する“ある目的”(2/2)
金融庁が求める「リスク管理態勢」の再構築
レポートではこうした状況を踏まえ、仕組み貸し出しを手がけている金融機関に対し、実効的なリスク管理態勢の整備を求めています。具体的には、「経営戦略上の位置付けと組織体制」「入口審査」「期中管理」の3つのフェーズでそれぞれ対応方針を示しています。経営戦略のフェーズでは、融資部門だけで完結させるのではなく、市場部門やリスク管理部門と連携して取り組みの可否を判断する体制の構築が重要とされています。
レポート内では、懸念される事例として、有価証券評価損が拡大した銀行が、時価評価の不要な仕組み貸し出しに逃避したケースを紹介しています。専門知識を備えた市場部門を第1の防衛線とし、リスク管理部門を第2の防衛線として、相互けん制を働かせる組織体制を構築することが推奨されています。
商品を購入する前の入口審査においても、厳格な姿勢が求められています。
仕組み貸し出しは、満期を迎える前に市場で途中売却することが難しい「流動性リスク」を抱えています。そのため、販売会社(証券会社)が提示する利回りだけを鵜呑みにするのではなく、金利リスクやスワップのカウンターパーティーリスク(取引相手の破綻などによって契約が途中で立ち行かなくなるリスク)、オプションの非線形リスク(ある一線を越えた瞬間に損失が一気に膨れ上がるリスク)を含めて計測し、実際にコストに見合ったリターンが確保されているかを検証することが重要です。一部の銀行では、仕組み貸し出し単体で保有限度枠を設定するなど対策を講じています。
購入後の期中管理も重要です。時価評価が免除されているとはいえ、内部管理としては実質的な価値の変動をしっかりウォッチする必要があります。
販売業者から提供される時価情報をただ確認するだけでなく、自社で計算した内部時価と比較して価格が妥当かどうかを検証したり、損失限度額やアラームポイントを設定しうえで、ALM(資産負債総合管理)委員会に定期的に報告したりといったプロセスを回すことが推奨されています。
情報の非対称性を解消する自主的開示とは
リスク管理態勢の構築と並んで、金融庁が強く促しているのが「開示の適切性と充実」です。制度上、仕組み貸し出しの評価損益を財務諸表へ反映させたり、単体での時価を開示したりする法的な義務はありません。しかし、金利上昇によって実質的な評価損が膨らんでいるにもかかわらず、それが外部から見えない状態は、投資家や預金者といったステークホルダーの不信を招きかねません。
金融庁は、仕組み貸し出しの取り組みが財務に一定の影響を及ぼす規模に達している場合、決算説明資料やディスクロージャー誌において、自主的な情報開示を行うよう促しています。開示する項目としては、貸出残高の推移や今後の取り組み方針に加え、有価証券報告書における時価の算定方法、さらには商品特性を踏まえたリスク管理態勢の整備状況などが挙げられます。
市場不安定化の火種になりかねない金融商品として米国などで注目を集めているプライベートクレジットが「投資の見た目をした融資」であるとすれば、仕組み貸し出しは「融資の見た目をした投資」と言えます。レポートからは、仕組み貸し出しの商品性自体を否定することを避けつつも、プライベートクレジットと同じようにその動向に目を光らせる当局の姿勢が読み取れます。
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