- 2026/06/29 掲載
軍事大国ロシアの「AI敗北」は他人事ではない…日本の成長戦略にも潜む“危険な発想”
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
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日本でも世界11位…31位ロシア「AI後進国化」の実態
先日、友人との会話で、「ロシアのAIはなぜ遅れているのか?」が話題になった。ロシアのAIが遅れているのは、事実である。英トータス・メディアの「Global AI Index」(2024年版)によれば、世界83カ国中第31位。ブラジルとほぼ同じレベルで、米国や中国には大きく水をあけられている。
日本はAIで遅れているとよく言われるのだが、上記「Global AI Index」によれば日本は第11位だ。ロシアは、これよりずっと遅れている。
世界政治におけるロシアの存在感は、今でも大きい。冷戦時のソ連に比べて存在感はずっと低下したものの、ロシアは世界政治においてなお主要なアクターの1つだ。そのロシアが、AIにおいてかくも遅れているのは、どうしてだろうか。簡単には納得がいかない。
独裁国家でもAI大国にはなれる
ロシアがAIで後れをとる理由としてまず考えられるのは、政治体制の違いだ。AIのような技術は政治体制と強い関係がある。米国のような民主主義体制では、自由な研究活動や企業活動で自由が認められる。だからAIも発達する。しかし、ロシアのような中央集権的、独裁的政治体制では進歩できない。
こうした見方をする人が多いだろう。
しかし、この仮説は明らかに誤りだ。その明白な証拠が中国である。中国は独裁国家だが、それにもかかわらず、AI分野において、さまざまな指標で見て、米国につぐ世界第2位だ。
そして、1年程度で現在の米国の水準に追いつくと言われる。場合によっては、半年程度とも言われる。
個々のAIを見ても、極めて高性能という評価が多い。米アンソロピックが開発したクロード・ミュトス級のAIが、近い将来に中国で開発されるだろうという声もある。
なお、最近のスタンフォードAI Index 2026では、米中のAIモデル性能差は「実質的に閉じた」とされ、中国モデルが米国モデルと首位を争う状況になっている一方、米国はトップ級モデル数や民間投資でなお優位と評価されている。 【次ページ】ロシア転落の分岐点、AI以前からその原因はあった
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