- 2026/07/22 07:00 掲載
今押さえるべき「企業価値担保権」とは?成長企業を見抜ける銀行・逃す銀行の分岐点(2/2)
赤字や債務超過だけで判断しない、新たな格付の考え方
そもそもの「貸す・貸さない」に始まり、「いくらまで貸し出すのか」にいたる基本的な判断についても、決して簡単ではありません。不動産担保のように算定ノウハウが業界内・銀行内に蓄積があるわけではないからです。今回の資料の中では、お金を貸す上で企業の信頼度をランク付けする「格付」(債務者区分)についても、事業性融資を前提として見直すことも有効な選択肢と位置づけられています。
足下の多くの国内金融機関の格付制度は、基本的に過去の財務情報を相対的に重視する傾向にあります。ただ、過去情報への依拠が強すぎると、企業が現在持っている実態や将来性を十分に反映できず、成長資金の供給をためらってしまう可能性があります。
企業価値担保権付き融資においては、金融機関が平時から事業者とのコミュニケーションを深め、経営改善の早期支援を行いやすくなることで、信用リスクそのものを抑制する効果が期待されています。
そのため、赤字や債務超過といった過去の財務指標や事業清算時に係る評価のみに囚われるべきではありません。事業の継続性や将来のキャッシュフロー創出能力といった「将来・定性情報」を格付に反映させることが、より合理的かつ的確なリスク評価につながるのです。
新たな格付手法の具体的なアプローチとしては、大きく3つの方法が考えられます。
1つ目は審査担当者の専門的判断に委ねる「エキスパートジャッジメント」、2つ目は評価基準を組織内で明文化する「スコアカード」、3つ目は数理モデルに基づく「モデル」です。これらを金融機関の規模や特性に応じて組み合わせることが想定されます。
特に「スコアカード」の活用においては、たとえば将来情報を考慮するために、過去の財務だけでなく将来数期分の財務情報の予測も含めてスコア化を行うことも考えられます。その際、事業継続性や事業見通しの蓋然性が確保されていることを前提に、現在の表面的な債務超過よりも事業の将来見通しを重視する姿勢が求められます。
また、定性情報についても、明文化された評価基準に基づいてスコア化し、財務指標に基づいて算出されたスコアとおおむね同程度のウェイトで総合的に評価するなど、将来の成長性を適正に測る工夫が大切です。
加えて、金融機関が「企業価値担保権信託会社」に当たる場合には、事業者(委託者)に対する適切な説明と情報提供が求められます。具体的には、信託契約を締結するときは、事業者に対してあらかじめ信託契約の内容を説明し、信託契約を締結したときは、委託者に対し遅滞なく、法定の情報を提供することが義務付けられています。
「目利き力」を根づかせるための人材育成を
このように、「事業者と金融機関の信頼関係に基づく事業性融資に関する基本的な考え方」では、企業価値担保権制度などを活用して事業性融資を行う際に求められる対応が段階ごとに整理されています。それでは、こうした対応を持続的に実施するためにどのような態勢整備が必要となるのでしょうか。金融庁の監督指針では、具体的な態勢整備の例としていくつかのポイントが示されています。
まず、経営陣が企業の成長性等を重視した融資への取り組みを、経営の基本方針に明確に位置づけることです。さらに、それを推進するための専門部署の設置や担当者の配置を行うなど、組織としての実行体制を整えることが求められます。
現場レベルにおいては、事業分野別の業況や顧客ニーズに関する情報を、営業店と本部が適切に連携して組織全体で共有し、融資審査の過程で活用していく姿勢が不可欠です。
必要に応じて外部の専門家や機関と連携し、企業の成長性を客観的かつ合理的に評価する仕組みを作ることも推奨されています。これらを内部規程などにしっかりと盛り込むとともに、担当者に対して研修や教育を実施し、評価能力の向上に継続的に努めることが重要とされています。
貸出先の事業の状況は絶えず変化するため、当初の認識と実態とが次第にズレていくのは当然のことと言えるでしょう。ズレを最小限に抑え、経営悪化の兆候が見られる場合には早期の対応が行えるよう、日頃から質の高いコミュニケーションを継続することが、一層強く求められることになります。
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