- 2026/07/28 06:30 掲載
なぜ三菱UFJトラストの改革はすごい? 銀行系IT子会社の「リアルな悩み」完全攻略術(2/3)
「若手にCOBOL」は限界? 「レガシーとAI両立」への現実解
銀行のシステムを語る上で避けて通れないのが、複雑化・肥大化したレガシーシステムの存在だ。「DX予算の7~8割が維持費に消える」と言われる構図は同社も例外ではない。しかしここ数年、基幹システムを守り続けるエンジニアの仕事がいかに重要で高度なものか、金融庁のオペレーショナルレジリエンス(業務継続体制)強化の流れも手伝って、正当に評価されるようになってきた。だが、小倉氏の危機感は強い。
「数十年前と同じ技術スタックをそのまま若い世代に引き継がせ続けることには、私自身は否定的です。レガシーの重圧を次世代に残さないための刷新を、私たちの世代が責任を持って進めるべきだと考えています」(小倉氏)
この強い問題意識こそが、システムのモダナイズ(現代的な技術基盤への刷新)を推進する原動力になっている。
モダナイズの手法として、昨今は「AIによるレガシーコードの刷新」も話題にのぼるが、小倉氏の視線は冷静だ。
「過去のエンジニアたちが長年かけて構築したCOBOL資産は、一見古く見えても、膨大な業務知識と暗黙知の塊です。AIによる一発逆転的なモダナイゼーションは、現時点では慎重に見る必要があります」(小倉氏)
ただし、5年後には様変わりしているはずだとも付け加える。(AIにより)属人的な暗黙知を解きほぐし、モダナイゼーションを地道に促進する「AI for Modernization」の方向性には、着実な進化を見込んでいる。
データ・AI時代に金融IT子会社が担うものとは?
AIやデータ活用の時代において、IT子会社の役割もまた再定義を迫られている。数年前なら「データ活用のすべてを自前で担うべき」と考えただろうが、今は状況が変わったと小倉氏は言う。スノーフレーク(Snowflake)やデータブリックス(Databricks)といった強力な外部クラウドサービスや、Boxなどのクラウドストレージが前提となる現代において、自前でデータレイクやデータウェアハウスを一から構築するスキルを磨き続けることには、開発スピードや費用対効果の観点から限界がある。
「インフラ層のスキルを自前で磨き続けることよりも、外部の優れたサービスをいかに金融機関の文脈で安全に活用するかという方向に、注力すべき領域がシフトしていきます」(小倉氏)
では、これからのIT子会社の強みはどこにあるのか。それは、金融機関特有の法規制や情報管理を熟知した上で、安全な形で外部サービスと接続するための基盤設計を行うこと。あるいは、既存システムのモダナイゼーションの過程で、データを扱いやすくするアーキテクチャー(構造)を整備することだ。
外部の最先端ツールを、金融機関の文脈に合わせて安全かつ効果的に着地させる「橋渡し役」こそが、これからの主戦場になる。
それに伴い、外部パートナーとの関係についても、各領域での個別最適から全社的な戦略管理へと移行することを視野に入れた検討を進めている。パートナーが持つ強みに応じた関係構築に向けた枠組み作りを進めている段階だ。
AIの分野ではトラストとの業務提携、メインフレームの運用維持では専門の外部パートナーとの長期提携を結ぶなど、実際の動きも始まっている。 【次ページ】金融IT子会社「5年後の分水嶺」その4つの未来とは?
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