- 2026/07/28 06:30 掲載
なぜ三菱UFJトラストの改革はすごい? 銀行系IT子会社の「リアルな悩み」完全攻略術(3/3)
金融IT子会社に迫る「5年後の分水嶺」、向かうべき道は4つ?
今後5年間で、銀行のIT子会社はどこへ向かうのか。小倉氏は、業界全体が「分水嶺」に立っており、各社の選択によってその姿は大きく4つにわかれていくと予測する。| 4つの選択肢 | 特徴と到達イメージ |
| 1.再統合 | 親会社がIT子会社を吸収合併する。経営とITを一体化させるが、子会社特有の柔軟な人事や技術カルチャーが薄まるリスクもある。 |
| 2.戦略子会社化 | 親会社の「ビジネスパートナー」として自律的に高付加価値を提供し、DX戦略・技術戦略をともに担う。(※三菱UFJトラストシステムが選んだ道) |
| 3.外販の推進 | 外部向けビジネスを拡大。自前で財源を稼ぎ、それを研究開発や人材育成に再投資して自走する。 |
| 4.現状維持 | 従来の受託・請負構造にとどまる。内製化も上流工程への進出もできず、緩やかな「縮小均衡」へと向かう。 |
小倉氏は、4つ目の「現状維持」を選んだ先の未来をシビアに見据えている。
「現状維持を選択した先にあるのは、縮小均衡です。内製化もできない、上流工程にも進出できない、AIも活用できない。その先に競争力は残りません」(小倉氏)
その末路として金融業界全体で課題として顕在化しつつあるのが、「ベンダー依存の加速」だ。外部パートナーとの協業は不可欠である一方、自社でシステムを維持・運営する力が弱まり、ノウハウが外部パートナーに移転してしまうリスクは、規模を問わず金融機関共通の構造的な問題となっている。
三菱UFJトラストシステムが選択したのは、2つ目の「戦略子会社」への道だ。自律的に高付加価値を出し、親会社と伴走する存在になる。そのために今、2つの人材類型の育成・獲得に全力を挙げている。
1つは、ビジネスとITをつなぎ、要件定義のさらに手前を牽引する「超上流工程」の人材。もうひとつは、技術とビジネスの双方を理解して全体の設計図を描ける「アーキテクト」だ。AIが実装を担う割合が増えるからこそ、人間はより上流の役割にシフトしなければならない。
採用においても、外資系やメガテックと無理に競うのではなく、「金融×IT」の面白さや、作ったシステムを最後まで守り抜く責任感、ユーザーと直接課題を解決する手応えといった同社ならではの強みをアピールし、共感する人材を集めている。
従来から大切にしてきた誠実に仕事に向き合う姿勢はそのままに、チームで仕事をする楽しさやワクワク感、そして失敗を許容し称賛するカルチャーへの変革も、着実に進めている。
受託開発会社から、グループの専門性を支える「戦略組織」へ
銀行のIT子会社は今、単にシステムを「作る・守る」だけの受託開発会社から、金融の専門性と最先端の技術をつなぎ、グループ全体の事業変革を支える「戦略組織」へと変わろうとしている現状維持の先にあるのは、ベンダー依存と技術継承の断絶だ。だからこそ三菱UFJトラストシステムは、自らを「戦略子会社」へ変える道を選んだ。
IT子会社という言葉が醸し出す「従属的なイメージ」を完全に脱ぎ捨て、「親会社とともに事業変革を構想・実装する」存在へ。
その転換の勝敗は、投資を獲得しにいく闘い、人材を育てる継続性、そして何よりも「現状維持は退歩である」と見抜く経営者の覚悟にかかっている。
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