- 2026/07/28 06:30 掲載
なぜ三菱UFJトラストの改革はすごい? 銀行系IT子会社の「リアルな悩み」完全攻略術
銀行の文化の妙味、IT子会社が「提案する側」に回った理由
役割分担の構造に、明確な変化が起きている。かつては「親会社が考えて、IT子会社はその通りに実行する」という関係だったが、ここ数年は子会社自らが経営戦略や業務戦略を立案し、グループ全体で議論・承認する形へと移行しつつある。
取締役 兼 常務執行役員
小倉哲哉氏
「IT子会社は一貫性を持ってシステムを継承できる強みがあります。その専門性の蓄積が、グループ内での役割を変えつつあると感じています」(小倉氏)
加えて、AIやクラウドを筆頭に技術トレンドの変化が速いため、技術に詳しいIT子会社に判断を委ねる流れも生まれている。こうした構造的な変化が、子会社の発言力を高める後押しになっている。
現在は、「AIを使った開発の生産性や品質向上」「エンジニアの人材戦略の立案と実行」といった自律的に完結できる領域から積極的に主導している。システム全体のアーキテクチャー戦略のようにグループ全体での合意が不可欠な領域との棲み分けを意識しながら、自律性の輪を少しずつ広げている段階だ。
DXを止めているのは「技術」ではなく、「投資構造の設計」
DXや内製化を推進する上で、最も進みにくいボトルネック(障害)はどこにあるのか。小倉氏はためらわず、「投資の使い方の設計だ」と答える。金融グループにおいては、業務ドメイン毎に最適化がされやすい一方で、IT子会社の「内製化のための人材育成」や「DXのための研究開発」といったグループ横断的な基盤投資が後回しになりやすい構造的な課題があり、こうした投資に対してもROI(投資対効果)を厳密に求められるケースもある。
「この投資構造の課題を解決しないと、DXや内製化を支える基盤そのものが育ちません。本質的に立ち止まりやすい構造になっているのです」(小倉氏)
この壁を突破するため、小倉氏はグループ経営層へのアプローチを変える準備を進めている。経営層がビジネス視点でIT投資の価値を判断できるよう、投資をしなかった場合のリスクをいかに定量的に、わかりやすく示せるか。そこが勝負の分かれ目になる。
そもそも、なぜそこまでして内製化にこだわるのか。小倉氏は、世間で言われる「スピード向上」や「コスト削減」とは異なる、2つの本質的な動機を挙げる。
「エンジニアとしてのキャリアを選んだのに、外部パートナーの管理だけに終始するのでは、技術者としての力を発揮しきれません。金融機関であっても、何をどう作るかを自分たちで考え、実際にものづくりに携わりたいというエンジニアは多い。そのような人材が活躍できる環境を作ることが重要です」(小倉氏)
もう1つは、信託銀行固有の深い業務知識とシステム知識を持つのは自分たちしかいないという矜持だ。年金や証券代行など複雑なコア業務を理解し、法制度の変更に耐え得るシステムを守れる存在は、外部パートナーでは代替できない。だからこそ、自分たちの手でものづくりをする意味があるのだという。
【次ページ】「若手にCOBOL」は限界? 「レガシーとAI両立」への現実解
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