- 2026/01/19 掲載
SBI新生「ハイパー預金」1兆円がヤバすぎる、金融業界者が知るべき預金ビジネスの変化
1兆円までたったの3カ月、何が新しかったのか
SBI新生銀行は2026年1月13日付で、SBI証券との連携サービス「SBIハイパー預金」の預金残高が1月9日時点で1兆円を突破したと公表した。サービス開始は2025年9月23日で、一般的な預金商品では到達しにくい速度だ。背景には、金利を前面に出すだけでなく、証券口座と預金口座を一体で使える導線を設計し直した点がある。SBIハイパー預金は円普通預金の一種で、元本保証で預金保険の対象となる。SBI証券側の買付余力に自動反映される仕組みを備え、証券取引の資金管理を「預金で行う」感覚に近づけた。預金を置き場にするだけでなく、投資の待機資金としても使えるため、口座内の資金滞留が増えやすい。
もう一つの特徴は、預金残高の総額に応じて特別金利が上がる参加型のキャンペーンだ。SBI新生銀行は2025年12月10日から「目指せ1兆円!金利最大10倍キャンペーン!」を開始し、総残高が1兆円に達したことで特別金利を最大年5.0%相当(税引前)へ引き上げた。通常金利は1月9日時点で年0.50%(税引前)で、日々見直す変動金利としている。
通常金利が変動である点も、預金者の心理に影響する。固定金利の定期預金は満期まで条件が変わらない一方、普通預金は日々の金利が動く可能性がある。SBI新生銀行は金利を毎日見直すとしており、金利環境の変化を反映しやすい。金融機関の企画部門にとっては、金利水準そのものよりも、見直し頻度や告知方法が顧客の理解に直結することを再確認する材料になる。
金利の上乗せ分は利息として付与するのではなく、キャンペーン期間中の毎日の残高(上限100万円まで)を基に計算した金額を、2026年5月末までに現金で入金する仕組みだ。預金としての規制やシステムを変えずに、実質的なリワードを付けた形といえる。特別金利は2026年3月31日時点の通常金利に適用倍率を掛けて決めるとしており、期間途中で通常金利が変動しても、上乗せ分は期末時点の条件で一括して確定する。
預金が「動く」時代が到来、磨くべきは?
金融機関の預金獲得は、これまで「金利を上げる」「特典を付ける」「給与振込などの取引を囲い込む」といった手段が中心だった。ところが近年は、スマートフォンでの口座開設や資金移動が一般化し、預金が動くハードルが下がった。個人は複数の金融サービスを用途別に使い分け、企業側も資金管理の効率を重視する。預金は黙って積み上がるものではなく、機能や体験で比較される対象に変わっている。SBIハイパー預金が示した盲点は、金利水準よりも「使い勝手の一体化」が資金の行き先を左右し得る点だ。証券口座での取引は、待機資金が一定期間生まれる。従来は証券会社の預り金に滞留し、銀行側はその資金を取り込みにくかった。連携預金はその資金を銀行預金に寄せ、しかも買付余力として自動反映させることで、利用者の手間を増やさずに資金を移し替える。
この設計は、預金を「目的」にするのではなく、投資行動の「途中」に埋め込む発想に近い。現場の営業や企画に置き換えれば、商品単体の訴求ではなく、顧客の資金フロー全体を押さえる設計が重要になる。金融機関にとっては、預金、決済、投資を別々に最適化しても、顧客体験の段差が残れば資金が外に出るリスクが高まる。 【次ページ】公開資料で読む「1兆円」の条件
メガバンク・都銀のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR