• 2026/08/12 06:30 掲載

アマゾン・アップル歴任のプロ経営者が語る、国際送金に勝つ“4条件”と“4トレンド”(4/4)

FINOLABコラム

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400万人市場に照準、CEOが悔やむ「2~3年の遅れ」

 レミットリーは日本での資金移動業(二種)のライセンスを取得し、本格的な事業展開を開始した。ガニンガム氏自身、参入の話を聞いた瞬間に訪日を決めたという。

「正直に言えば、2~3年前に来るべきだったかもしれません。しかし今、準備が整って、素晴らしいチームがいます。日本のサービスに対する期待水準は非常に高いですが、私たちはこの市場で成功する準備ができています」と同氏は胸を張った。

 日本には約400万人の外国人が暮らしており、その数は増加傾向にある。中国、ベトナム、フィリピン、韓国の出身者が主要なコミュニティを形成している。レミットリーはこれらのコミュニティに焦点を当てたマーケティングと顧客獲得を進める方針だ。加えて、日本人のコンテンツクリエイターが海外に送金するユースケースにも注目している。デジタルコンテンツやeコマースを通じて海外と取引する個人が増えており、低コストかつ高速な送金への需要は国籍を問わない。

 日本市場での戦略について、ガニンガム氏は「顧客獲得の方法は国ごとに異なります」と説明している。日本では特に規制対応が重要で、当局との関係構築に細心の注意を払っている。米国の上場企業としてのコンプライアンス基準も、日本市場での信頼獲得に寄与するはずだ。

広告より強い“ある武器”…日本で勝つためのシンプル原則

 一方で、送金ビジネスの成長を支える最大の推進力は、意外にも「口コミ」だという。

「基本的に送金ビジネスの事業は口コミで広がるビジネスです。コミュニティ内で互いに情報を共有し、良いアプリや安い送金方法があれば自然に広まります。だからこそ、まず優れたプロダクトを作ることが最優先です。そうすれば、残りは自然についてきます」(ガニンガム氏)

 日本におけるもう1つの追い風は、現金からデジタルへの移行だ。世界的に見れば日本のキャッシュレス化はまだ途上にあり、この変化が進むほど、デジタル送金サービスへの需要は高まる。加えて、日本経済の労働力ニーズが変化し、外国人労働者の受け入れが拡大すれば、国際送金市場も成長する。

 ガニンガム氏が繰り返し強調したのは、「最も安く、最も早く、最信頼されるサービスを提供できる者が勝つ」というシンプルな原則だ。5000以上の送金ルートと10年以上にわたるコンプライアンスの蓄積を武器に、レミットリーは日本という新たなフロンティアに挑む。国際送金の世界で、テクノロジーと規制、そしてこれまで多くの送金ルートを築き上げてきた実績がどのように強みを発揮するのか。

【取材後記】勝敗を分けるのは手数料でもスピードでもない

 2021年にはNasdaq上場を果たし、直近では50億ドル程度の時価総額となっているレミットリーは、もはやフィンテックスタートアップからグローバル企業に進化したと言える。設立から10年の節目で創業者からプロ経営者にバトンが渡されたのもそうした進化に対応したものと考えられる。

 これまでに筆者がインタビューしたフィンテック企業トップの多くは創業者であり、夢を語る場合が多かったが、今回は冷静に市場の変化をみながら、創業時のミッションに沿う成長を遂げていこうとする姿勢を感じた。

 満を持して日本市場における本格展開を開始するのも、国際送金が中長期的に拡大するという見通しとともに、短期的にも既存のサービスに満足していない外国人居住者やデジタルコンテンツを海外に売る個人事業者が視野に入っているからである。

 資金移動業者の登録状況をみると、国際送金をめぐる競争は激化することが予想される。これまでの実績に頼っていては認知を拡げることは難しく、ガニンガム氏の強調した「口コミ」を、デジタルチャネルを効果的に使ってどのように進めていくかが当面の課題となろう。

 国際送金の競争は、手数料や送金スピードだけを競う時代から、世界規模の送金ネットワーク、ライセンス・コンプライアンス体制、そして金融機関との連携基盤で勝負する時代へと移行しつつある。

 勝敗を左右するのは個々の送金サービスではなく、「誰が国際送金のインフラを握るのか」という視点であり、その変化は銀行、フィンテック、さらにはステーブルコインを含めた次世代の金融エコシステム全体に大きな影響を与えることになるだろう。

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