- 2026/09/30 07:00 掲載
「金利上昇=銀行が儲かる」は甘い?地銀51行が評価損…金融庁が示す3つの落とし穴(2/2)
融資残高5兆円、ネット銀が伸ばす投資用不動産の実態
また、預金流出と保有債券の評価損に加え、銀行ビジネスの今後を考える上で無視できない要素として、不動産融資の潜在的リスクが挙げられます。近年、金融機関の法人向け貸出に占める不動産業向け貸出の割合は上昇傾向にあります。金融庁の共同データプラットフォーム(共同DP)の貸出明細データによる分析では、地域銀行による不動産業向け貸出の約24%が、借り手の所在地ベースで東京都心5区の物件に集中する実態が判明しています。
個人の住宅ローン市場では、1件あたりの平均実行額が増加するとともに、返済期間が35年を超える超長期ローンやペアローンの利用が拡大しています。
共同DPデータを活用した金融庁の分析によれば、返済期間が長いローンや適用金利水準が高いローンほど、将来的なデフォルト(債務不履行)率が高くなる傾向が統計的に確認されています。
金融機関に対しては、借入額の高額化・長期化に伴う将来の返済負担リスクについて、顧客の理解度に応じたシミュレーションと説明を行うとともに、金利上昇時の返済継続性を踏まえた融資審査を実施することが求められます。
個人のアパート・マンション投資(貸家業)向け融資分野において、ネット銀行等の投資用不動産向け融資残高は過去4年間で約6割増加し、融資残高約5兆円と国内銀行全体の約16%を占めます。
金融庁がネット銀行等8行を対象に実施した検証によると、融資対象物件の約43%が東京23区内に集中し、借入者の約70%を30代・40代が占めます。借入者の年収は1,000万円以上が46%を占める一方、1件あたりの融資額は2,000万~3,000万円の価格帯が増加し、区分所有マンション融資が全体の約9割を構成しています。
不動産関連事業者からの紹介に依存する構造において、金融機関側が審査や顧客対応を事業者や保証会社に一任する態勢への課題が指摘されています。これを受け、金融庁は金融機関に対して以下の対応の徹底を促しています。
第1に、保証会社付ローンであっても、電話やWeb面談を通じて顧客の属性やリスク理解度を金融機関自身が直接把握すること。第2に、案件を紹介する不動産事業者の財務状況や勧誘態勢、サブリース事業者の適切性を定期的に検証する提携事業者の管理。第3に、蓄積データや外部市場データを活用し、物件の売買価格や想定賃料水準の妥当性を独自に検証する体制の構築です。
金融庁が経営陣に迫る「データに基づくリスク管理」
金利上昇が並行する中、金融機関の経営陣には、過去の慣行に依存しない実効性のあるガバナンスが求められています。具体的には、預金調達の流動性リスクと有価証券の金利リスクを統合的に管理するALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)の実効性担保が必要とされています。
また、評価損の先送りを排し、経営体力に見合った損失限度額の中で計画的なリスク管理を実施することや、不動産融資のエリア集中や超長期ローンの潜在リスクに対し、データに基づくストレステストを実施し、与信方針へ反映させることが不可欠と指摘されています。
地元に比べて情報の非対称性が大きい越境貸出については、当局は賃料動向やテナント稼働率の実態把握と審査体制の維持を求めています。
「金利のある世界」への回帰は、適切なリスク管理と価格設定を行う金融機関にとっては、収益力強化のチャンスと言えます。データに基づくリスクの可視化と業務の合理化を通じ、金融機関が自らの財務健全性を保ちながら持続可能なビジネスモデルを構築することが大切でしょう。
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