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  • 2020/04/15

“ポストコロナ”の金融業界とは、その世界観と緊急事態宣言後に検討すべきこと

大野博堂の金融最前線(16)

一向に終息の兆しが見えない新型コロナウィルスの災禍ではあるが、コロナショック前後で金融業界の世界観も大いに変貌を遂げることは間違いないだろう。そこで本稿では、金融機関やフィンテック企業に対する新型コロナウイルス騒動の影響を探るとともに、ポストコロナの新たな世界観についてみてみよう。

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。

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ポストコロナのために今から着手すべきことは何か
(Photo/Getty Images)

コロナショックが金融機関に与えた影響

 これまで健全とされてきた銀行借入れに縁のない財務的な優良企業の一角が、目先の業績悪化への対応として銀行借入れに踏み切るケースが続出している。この「新たな優良顧客の発掘」という点については、プラス面を見出すことができるだろう。コロナ騒動が一段落した段階で元の業績に回帰することも大いに予見されるためである。

 財務への影響は計り知れないレベルである。ただし、これまで不良債権問題処理に注力してきた結果、融資先は健全性の高い企業が中心であるケースが多いだろう。このため既存の融資先企業の業績悪化への対処方針が政府レベルで示された場合、相応の支援も見込めることから、その影響は一時的なものにとどまる可能性がある。

 他方、政府として、現下の著しい企業側キャッシュ不足への対応として、危機対応融資を政府系金融機関ばかりでなく民間金融機関にも要請していることもある。場合によっては必ずしも優良とは言えない新規顧客への資金供給を通じて、将来的に新たな不良債権を抱え込むリスクが生まれつつある点には注意が必要である。

 さらに、古い体質の金融機関や地域金融機関の中には、初めてテレワークに踏み切る、といった例も生まれている。そこで利用するWeb会議システムなどのデジタルツールの中には、必ずしもセキュリティ要件が高度に実装されているとはいえないものも多々存在している。

 したがって、デジタルツールによってテレワークや本支店間で情報連携をする際、顧客情報のやり取りなどに代表される、「情報セキュリティ上の課題」を金融機関は改めて認識することになりそうだ。

フィンテック企業に加わる変化

 フィンテック企業は非対面でのビジネスモデルを標ぼうしている企業が多く、目先のビジネスモデルには大きな影響はない。かえって、これまでデジタル化投資を見送ってきた企業がデジタル化投資に踏み切ったり、新たなデジタルツールの導入を推進したりしようとしているため、事業機会の面ではメリットを享受するだろう。

 他方、これまで突き詰められて検証されてこなかった「サイバーセキュリティ面」の脆弱さに焦点があたる可能性が高い。とりわけ、少人数運営で特定技術を担いで起業したり、組織運営そのものが効率性至上主義となったりしているが故、セキュリティの高度化要求に関する感度の低い経営者も少なからず存在している。

 これまで以上にテレワークやデジタル決済などが指向される風潮の中、フィンテック企業に対し、取引先の大企業から利用するデジタルツールなどの厳しいセキュリティ要件が課せられる可能性もある。この瞬間、一気にそれまでの有意性を失う可能性も否めない(コインチェックなどにみられるように、金融庁検査においては、フィンテック企業全般におけるサイバーセキュリティの脆弱性が問題視されているのが実態である)。

金融業界ではこれからどのような対策を取っていくべきか

 目先で金融機関が求められているのは危機対応融資としての企業向け融資対応である。新型コロナウィルスでは対面での取引に支障をきたす可能性が高いため、電話やオンラインを通じた顧客要望の吸い上げが必要である。

 加えて、飲食店や観光関連産業など、今まさにキャッシュが枯渇し疲弊しつつある企業が続出しており、融資稟議の短期間化とこれを実現するための本店機能の営業店への大胆な権限移譲が緊急対応として求められている。危機対応として、通常時における事細かなチェックではなく、外形的な要件を満たしていることが確認できれば速やかに稟議を通す、といった柔軟な対応も、こと緊急時においては容認されるとみるべきだ。

 相手先企業における事業継続上に課題が存在しないか、といった点でのチェックも重要であるだろう。少人数対応を与儀なくされている小規模なパートナー企業においては、特定社員が新型コロナウィルスに感染し、職場から離脱しただけでも事業継続がなされない可能性があるためだ。こうしたパートナー企業における事業継続の脆弱性の有無については速やかに点検を進めるべきであろう。

 金融機関としては、人的リソースが不足する場面の想定も必要だ。たとえば、3人しかいない営業店で支店長が新型コロナウィルスに感染した場合、代替機能をいかに発揮すべきか(支店長のかわりを誰が務めるのか、支店長の作業を誰が代替するか)といった点検が急務である。

 とりわけ、金融機関において欠かせないリソースのなかでも「人」がボトルネックとなることを念頭においたリスクアセスメントを中心に、点検を進めるべきである。

 緊急時においては、通常のルールを一部逸脱した行動を余儀なくされる場面もあるし、容認されるものと解釈される。改めて緊急時対応に実行すべき本来必要とされる業務とは何か、といった面での点検は急務となっている。

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デジタルツールによって「情報セキュリティ上の課題」を金融機関は改めて認識することになりそうだ
(Photo/Getty Images)

【次ページ】金融機関におけるポストコロナの対応に欠かせないモディファイドRAF

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