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  • 2020/03/06

金融機関のパンデミック対策とは? “コロナ”に振り回されないための具体案

大野博堂の金融最前線(12)

降ってわいた新型コロナウイルスによるパンデミック騒動であるが、かつて同様の災禍に見舞われたことがあった。2009年のH5N1型新型インフルエンザ騒ぎである。これを契機に我が国では新型インフルエンザ対策行動計画や基本的対処方針が打ち出され、金融機関でもパンデミック対策が急速に進展した。今回は、新型コロナウイルス流行への対処方針としてのこれらパンデミック対策について、我が国金融機関での実装事例などを解説し、実効性の高い対処のありかたを考えてみたい。

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野博堂

93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。

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コロナウイルスに対し金融機関はどのように備えるべきか
(Photo/Getty Images)

新型感染症のフェーズ分類

 国立感染症研究所では、新型感染症の流行フェーズを6段階で区分している(図1)。

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図1:新型感染症の流行フェーズ
(出典:国立感染症研究所ホームページを参考にNTTデータ経営研究所が作成)

 このフェーズ分けは「感染地域の拡がり」を示すスケールである。たとえば、過去のインフルエンザの流行事例として、1918年のスペイン風邪(スペイン・インフルエンザ)がある。世界人口の25~30%が罹患し、4000万人が死亡したと推計されており、日本では当時の人口の半数にあたる2300万人が感染し、39万人が死亡したとされる。このスペイン風邪がまさにこのスケールでいう「パンデミック」に該当するのだろう。

 なお、当時のスペイン風邪は、全世界的に流行するまでに8カ月を要したとされている。ただし、同様の感染症が発生したとすると、航空機などの交通網が発達した現代では、ボーダーレスに人が行き交うため、世界のどこで発生したとしても短期間に蔓延する可能性が高いはずだ。

我が国における新型感染症対策

 我が国では、感染症を図2のように分類している。対象となる感染症ごとに取扱いがことなっており、一類感染症と二類感染症に該当するものは「法で定める強制措置」の対象とみなされる。たとえば、2009年には新型インフルエンザの脅威に各国がさらされたわけだが、ひとことで「新型インフルエンザ」と言っても、強毒性タイプと弱毒性タイプでは、感染症としての分類が異なっている。

 日本政府では、新型インフルエンザのうち、H5N1型の鳥インフルエンザについて、コレラや赤痢以上にリスクが高いと判断しており、H5N1型鳥インフルエンザを二類感染症として定義していることがわかる。他方、季節性の一般的なインフルエンザについては、五類感染症に分類され、風疹などと同程度の扱いとなっている。つまり、同じインフルエンザといえど、そのリスクには大きな差があり、あわせて国の取扱いも異なっているということだ。

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図2:我が国における感染症の分類
(出典:厚生労働省ホームページを参考に、NTTデータ経営研究所にて作成)

強毒性ウイルスか弱毒性ウイルスかで異なる国の対処方針

 我が国では、前述のH5N1型鳥インフルエンザは、2004年1月に山口県で初めて検出されて以降、実は全国各地で小規模な検出例がみられる。ただし、幸いなことに現在までのところヒトへの感染は確認されていない。H5N1型インフルエンザはもともと鳥がかかる病気であり、鳥と接触して人体に大量のウイルスが入り込んだ場合、ごくまれにヒト感染が起こる。これが新型インフルエンザ化である。アジアでは「ヒトと鳥(鶏)との距離感が近い」こともあり、これが感染原因とみなされているようだ。

 我が国では、2009年にH5N1型鳥インフルエンザが発生した際、人的被害を想定している。それによれば、出血を伴う多臓器不全で国内で3200万人が感染し、64万人が死亡するという。またその際、地域差や業態による差があるものの、従業員本人や家族の発症等により、国内企業の従業員のうち最大40%程度が欠勤する、といったシミュレーション結果も公表されていた。これは強毒性インフルエンザのパンデミックシナリオという前提付きである。

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図3:強毒性新型インフルエンザ流行時の想定
(出典:政府各機関公表情報を参考にNTTデータ経営研究所が作成)

 これをみると、全てのセクターで混乱が生じ、結果として経済活動が大規模に停滞するであろうことがわかる。金融セクターをみると、決済業務やATM機能が維持されるものの、その他の業務は縮小や中断を余儀なくされる、ということとなる。

 これを念頭に我が国政府では、平成21年2月に新型インフルエンザ対策行動計画を策定し、公表している(図4)。

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図4:我が国の新型インフルエンザ対策行動計画
(出典:国の公表資料を基にNTTデータ経営研究所が作成)

 日本では新型インフルエンザの流行フェーズを5つに分類している。これをみると、現在の日本における新型コロナウイルスの流行フェーズは、政府公表情報によれば「国内発生早期」に該当している。2月末から3月頭にかけての政府からの各種自粛要請は、この行動計画を踏まえた活動ということがわかる。

 他方、当時の我が国では、幸いなことに強毒性の新型インフルエンザの大規模な流行までには至らず、実際に流行したのはH1N1型といわれる季節性インフルエンザに近い弱毒性インフルエンザであることが判明したのだった。感染者が増加しているとはいえ、政府の定めた強毒性インフルエンザを念頭においた行動計画にしたがえば、あらゆるセクターの経済活動が停滞を余儀なくされ、金融システムにも甚大な影響を与えかねない状況でもあった。

 また、そもそも日本の感染症法では、一類と二類に分類された感染症が発生した場合には、国による強制措置が発動される、ともされていた。この強制措置の対象としては三つ定義されており、中でも厳しいのが就業制限、建物に係る措置である。

 前者の場合、都道府県知事は、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定められた業務(食品関係や接客業など)への就労制限を通知することができる。さらに、この通知を受けた場合には厚生労働省令で定める一定期間において就業が制限されることとなるのだ。

 また後者では、都道府県知事は、病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物への立入りの制限・禁止、封鎖を命じることができる、といったものだ。

 つまり、ただ単に法にしたがった行動を採れば、緊急事態の宣言にも近しい状況に陥ることが懸念されたのだ。

【次ページ】BCPとしてのパンデミック対策の特異性

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