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- 2020/06/23 掲載
キャッシュレス普及の最大の壁は決済手数料か?経産省の対応の効果とは
政府のポイント還元策の評価とは
政府は2019年10月の消費増税に際して、景気対策とキャッシュレス促進を兼ねたポイント還元策を実施した。内容は小規模店舗においてクレジットカード、電子マネー(Suica、楽天Edyなど)、QRコード決済(PayPay、LINE Pay)といったキャッシュレス決済を利用すると、代金の5%分がポイントとして還元されるというものである(コンビニなど大手チェーンに加盟している中小零細店舗の場合には2%)。この施策については、仕組みが分かりにくいといった批判が多数、寄せられ、政策的な効果も疑問視された。
総務省の家計調査では、2人以上の消費支出(実質)について、2019年10月は前年同月比5.1%減、11月は2.0%減、2020年1月は3.9減とマイナスが続いている。一方、クレジットカードの取扱高は、消費増税前と同水準の増加幅を保ったほか、電子マネーについては大幅増となった。洗練された政策とは言い難い内容であり、しかも巨額のコストをかけているという現実についても考慮する必要があるが、とりあえずキャッシュレス決済を増やす効果はあったようだ。
初期のシェア争いはほぼ終了
特に新規参入組であるPayPayやLine Payといったスマートフォン(スマホ)決済のサービスは、キャンペーンの効果もあり、世間の耳目を集めることになった。各社は利用者に対して大規模な還元策を実施したほか、加盟店に対しても当面、手数料を無料にするなど、かなりの大盤振る舞いを行っている。こうした大胆な戦略を実施できるのは、決済事業はシェアがすべてであり、初期にどれだけ先行投資をしても、シェアさえ確保してしまえば、後でその損失を取り返せるビジネスモデルであることが大きい。言い換えれば、初期段階のシェア争いが終了した後には、事業者は少数寡占となり、手数料には引き上げ余地が出てくることになる。
スマホ決済については、早くもシェア争いが終了する兆候が見え始めている。PayPayは4月1日から利用特典を変更し、決済金額の最大1.5%だったボーナスを原則として0.5%に引き下げたほか、利用金額に応じて加算する制度を導入した。LINE Payも5月1日からVisa LINE Payクレジットカードを紐付けた場合にのみ還元する仕組みに変更し、残高による支払いの場合にはポイントを還元しないことになった。
当初、各社は大規模な販促を展開し、特にPayPayは支払額の20%をポイント還元し、さらに40回に1回の確率で10万円を上限として総額100億円を支払うという驚くべきキャンペーンを実施。一気に利用者数を伸ばした。
しかもPayPayの最大のライバルになると思われていたLINE Payは、双方の事業主体が経営統合することで同一のサービスになる可能性すら見えてきた。初期のシェア争いはPayPayとLINE Pay陣営の圧勝というのが業界の一致した見方となっている。
還元策の縮小は、先行投資から徐々に利益回収のフェーズに入ったことを示唆しており、こうした状況から、政府のポイント還元策が終了する6月末以降、各社が手数料の引き上げに踏み切るとの観測が出ている。
【次ページ】手数料が高いのは日本独特の市場環境が原因?
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