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- 2021/03/18 掲載
マネックス松本大CEOに聞く、「日経平均3万」「フィンテックの理想像」とは
コロナ禍で株式、不動産、暗号資産が「上がった」理由
コロナ禍では、日本や米国だけでなく世界中の中央銀行と政府が大量金融緩和と財政出動を行った結果、大量のお金がマーケットに流れてきました。その規模は第二次世界大戦後、最大の資金供給と言ってもいいくらいで、2008年9月の「リーマンショック」とは比べものにならないくらい膨大な資金が供給されました。その結果、法定通貨の価値が比較的下がりました。野菜も作りすぎれば値段が下がるように、お金も刷りすぎると安くなります。そして供給量が限られ、かつ値段が動きやすくなったことで、人々の日々の生活に関係ないモノの値段が上がりました。
生活を守るために資金供給しているわけですから、物価が上がるのは政府としては困るわけです。そのため、生活物価は変わりません。一方、供給が限られて生活と関係ないもの、具体的には、株式や不動産、暗号資産であるビットコインなどの値段が高くなりました。いわゆる「資産インフレ」が起きたのです。
この流れに一番先に気がついたのが米国人です。米国ではコロナショック直後から、若い個人投資家がスマートフォン専業証券のロビンフッドなどで、株式投資に入門し、株を買い始めました。
私もコロナショックの直後、2020年3月中ほどからブログ「松本大のつぶやき」などで「資金供給が増えるから、株価は上がる」と言っていました。一方、世間では「コロナで景気が悪いのに、なんで株価が上がるんだ」と批判されましたが、そうした意見をものともせず主張し続け、2020年9月には「株価は3万円になる」と予測しました。その時は日経平均は2万3000円だったのですが、その際も、周りの人からはやはり「何を言っているんだ?」と笑われました。
なぜ多くの人が「オンライン証券」になだれ込んだのか
その後、日本人もだんだん株価上昇の傾向に気がつき始めて、さらに2020年末にかけては、ビットコインの値段も上がってきました。「本当に資産インフレは起きてるんだ」ということで、一気にお客さまが戻ってきたり、新しいお客さまが入ってきたりしました。また、在宅勤務の人も増えて、自宅での休憩時間などを活用してトレードが可能になるということで多くの方がオンライン取引をするようになり、お客さまの数とともに、取引量も増えました。「株式を買った方がいい」と気づいた人がだんだん増えてきたという実感があります。
多くの人が株取引を始められたのは「個人のバランスシートが改善しているからだ」と思います。ある調査によると、一部大変な業界の人を除いて、給与所得者の8割くらいはバランスシートが改善しているそうです。それは出費が減って、補助金が入ってきているからです。
さらに、次第に「儲かった!」という人が出てきたことも追い風となりました。振り返れば、2000年の初頭もそうした流れがありました。日本証券業協会の「個人投資家の証券投資に関する意識調査」では、投資を始める要因として「近くに株式の話を聞ける人がいるかどうか」「近くで株式投資をしている人がいるかどうか」が大きく影響していることが分かっています。
また今回は、株式やビットコインなどで儲かったという人がたくさん出てきました。米国人のような乗りで株価が下がった時にもガツンと買いにいきました。それがさらに儲けを生み、周りに喧伝してどんどん広がり、株式投資を始めた人が多くなったという印象です。
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