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  • 2022/04/11

なぜ大企業の賃金が高くなるのか? 「従業員1人あたり付加価値」に着目すべき理由

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

賃金水準には、企業規模別に大きな差がある。これは、分配率の差によるのではなく、従業員1人あたりの付加価値の差による。これを「従業員1人あたり売上高」と「売上高に対する付加価値の比」に分解すると、大企業は前者が高く、後者が低い傾向が見られる。

執筆:野口 悠紀雄

執筆:野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

画像
図表1:企業規模別の諸計数(全産業)
(出典:法人企業統計調査のデータより筆者作成)

企業規模による賃金水準の顕著な差は、分配率の差によるのではない

 法人企業統計調査によれば、賃金水準は、企業規模別および業種別に大きな差がある。

 企業規模別の状況は、図表1に示すとおりだ。

 全産業で見て、1人あたり賃金は、企業規模と強く相関している。

 大企業は零細企業の倍以上だ(本稿では、資本金10億円以上を「大企業」、資本金1,000万円未満を「零細企業」と呼ぶことにする)。

 なぜこのように大きな差が生じるのだろうか?

 しばしば、小規模な企業では労働組合の交渉力が弱く、このために賃金が低くなるといわれる。しかし、図表1に示すように、分配率(付加価値に占める賃金・報酬の比率)は、規模によって大きな差がない。

 分配率は、むしろ小規模な企業のほうが高くなる傾向がある。

 したがって、企業規模別の賃金の差は、分配率の違いによるのではく、1人あたり付加価値の差によるのだ。

価値生産構造を分解する

 経済理論によれば、賃金水準は、資本装備率(従業員1人あたりの固定資産額)の差によって説明される。

 2月28日の本欄で示したように、企業規模別の賃金の差も、たしかにこれで説明できる。

 しかし、これだけでは、どのようなメカニズムで賃金水準の差が生じているのかを、具体的な形で理解することができない。

 そこで、以下では、「1人あたり付加価値」を、「1人あたり売上高」と「売上高に対する付加価値の比率」に分解して分析することにする。

 この結果は、図表1に示すとおりだ。

 まず、「1人あたり売上高」を見ると、企業規模との間に明らかな相関関係が見られる。

 大企業の1人あたり売上高は、零細企業のそれの4.5倍にもなる。

 大企業の企業全体の売上高が巨大になるのは当然だが、従業員1人あたりの売上高で見ても、大企業は大きいのだ。

 ところが、「売上高・付加価値の比率」は、零細企業のほうが高い。零細企業の値は大企業の1.7倍だ。

 この比率が高いことは、効率のよい企業の証左であると考えられている。

 この意味でいえば、規模の小さい企業のほうが効率的に付加価値を生産しているということができる。これはやや意外な結果だ。

業界の取引慣行が影響している可能性

 なぜ以上で見たような結果になるのだろうか?

 この理由の解明は重要だ。なぜなら、その結論は、賃金政策や産業政策に直接の影響を与えうるからだ。

 仮に付加価値生産において零細・小企業のほうが効率的なのであれば、零細・小企業を積極的に育てるべきだということになる。

 「売上高・付加価値の比率」が大企業で低くなる1つの理由は、規模に関する収穫逓減の法則だ。

 事業規模が大きくなっていくと、比例的に付加価値が増えるわけではなく、売上高に対する比率は逓減してしまうということである。

 しかし、それだけでなく、日本における業種ごとの取引慣行と関連している可能性がある。これについて、次項で見ることにしよう。

【次ページ】大企業の資金力や信用力の影響

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