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  • 2022/07/25 掲載

なぜ海外で好かれる? 「イオンのデジタルバンク」が現地から歓迎される背景とは

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イオンフィナンシャルサービスは、マレーシアでデジタルバンクの開業準備を進めているが、このライセンスは国内の有力企業を中心に5グループのみが与えられた希少なものだ。なぜイオンフィナンシャルサービスの施策は海外で「歓迎」されるのか。同社が進めるアジア戦略やデジタル化戦略、そして同社が事業を遂行する上で最も重視する「社会貢献」などの取り組みについて、それぞれ詳しく語ってもらった。

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

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イオンフィナンシャルサービス
代表取締役社長
藤田健二氏

マレーシアでデジタルバンク事業に乗り出したわけとは?

 我々は現在、マレーシアにおいてデジタルバンクの開業準備を進めています。この4月にはマレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia:BNM)から店舗ネットワークを持たないインターネット専業の「デジタルバンクライセンス」を取得しました。29グループからの応募に対し、5つのグループにのみ与えられるライセンスを得ることができたため、準備に邁進している状況です。

 実はこの取り組みに乗り出した背景には、ビジネスの機会があることはもちろんですが「現地の社会課題の解決に貢献したい」という思いがありました。アジア新興国の多くは日本と比べて貧富の差が激しく、銀行口座を持っていない方や金融サービスへのアクセス方法が分からない方がいまだに多くいらっしゃいます。

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デジタルバンクライセンスを取得することで、預金や少額の割賦、融資、保険など新たな商品が加わり、ギグワーカーや高所得者層など、幅広い顧客ニーズへの対応と既存商品のクロスセル展開を目指す
(出典:イオンフィナンシャルサービス)
 その一方で、そうした国々では無線通信のインフラやスマートフォンは広く普及していますから、貧困層の方でもスマートフォンアプリを通じて金融サービスへ容易にアクセスできるような、いわゆる「デジタル金融包摂」の取り組みに各国が力を入れています。

 弊社も今回のデジタルバンクの開業を機に、マレーシアにおけるデジタル金融包摂の取り組みにさらに貢献できればと考えています。

国内の社会課題の解決にもデジタル施策で貢献していく

 日本国内にも社会課題は山積しています。タイにいたことで改めてデフレの怖さを実感しました。アジアは常にインフレが当たり前ですが、何もしなくてもこのインフレ分5%はビジネスが伸びていないとおかしい世界です。

 デフレが続く日本では、かつてのように「真面目に会社に勤めて社会保険料を払っていればリタイア後はきちんと年金をもらえて安心して老後を過ごせる」という前提が、今や崩れかけようとしています。こうした社会不安を解消するために金融業が果たせる役割はとても大きいと思いますし、その鍵になるのはやはりデジタル技術を用いた金融サービスの利便性・アクセス性の向上でしょう。

 さらには、高齢化の進展とそれに伴う医療の問題もこれからますます深刻化してくるでしょう。この課題を解決する上でも、金融業はいろんな側面から貢献できるはずです。幸いなことにイオングループは日本全国に数多くの店舗を展開しており、地域の方々とのタッチポイントという面でとても充実しています。

 こうした強みを生かしていくと同時に、これからはデジタルのインフラをさらに拡充していくことで地域の方々により手軽に金融サービスにアクセスできる手段を提供して、地域の社会課題解決に貢献していきたいと考えています。

 金融業で、セキュリティなど「守るべきところは守る」というのは当然ですが、同じく大事なことは、お客さまの方を向き、実現するための労力を惜しまないことです。新しい技術を採用することでシンプルにお客さまのニーズに応え、世界の潮流に合わせることが必要です。「システムが古い」「人材がいない」みたいな言い訳が通用しないのは当たり前です。

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Health & Wellness
(出典:イオンフィナンシャルサービス)

アジア事業で得たデジタルのノウハウを日本に逆輸入する

 なお、マレーシアでのデジタルバンク開業に当たり現地当局から交付されたライセンスには、「通常ライセンス」と「イスラム金融ライセンス」の2つのカテゴリがあり、弊社は後者のイスラム金融ライセンスを取得しました。イスラム金融とは「イスラム法(シャリア)」に則った金融取引のことを指し、利息の禁止や豚肉・酒類・タバコ事業への出資の禁止などの特徴があります。

 これらへの対応は一見するとハードルが高そうに見えますが、弊社は現地で既に長らく金融業を営んでおり、既存のイオンクレジットサービス(マレーシア)という現地子会社では、サービスのシャリア対応も済ませていました。簡単にいうと金利の代わりに手数料を乗せるといった対応です。この方式でのシャリア対応ローンはイスラムだけでなく、中華圏の華人やインド系の方にもお使いいただけます。

 最初から「イスラム対応しないと」ということではなく、マレーシアの中で顧客のニーズに応える形でシャリア対応が実現したわけですが、結果的に差別化にもつながりました。デジタルバンクのシステムやプロセスを新たに設計する上でも、通常の銀行取引のシステムにシャリア対応のモジュールを1つ挿し込み、API連携するだけで済むため、対応はさほど難しくありません。

 こうしたイスラム対応のノウハウは、今後他国においてデジタルバンク事業を立ち上げる際にも横展開できると考えています。くり返しになりますが、金融事業のデジタル化という点では、日本よりアジア各国の方がはるかに進んでいる面があることを改めて認識する必要があります。

 日本では規制が厳しく、新たなチャレンジに乗り出しにくい一方、マレーシアやシンガポールは英国圏だったこともあり、フィンテックが世界で最も進んでいる英国のスタンダードに則っていますから、法制度の面でも新たな施策にチャレンジしやすい土壌があります。デジタル化に関しても、シンガポールのDBS銀行などは10年にわたり大胆なデジタル戦略を推し進めデジタル人材をどんどん増やしています。

 弊社もこうした国々で得たさまざまな成果やノウハウを逆に日本に持ち込む「リバースイノベーション」を進めることによって、国内のお客さまにもアジア発の先進的なサービスを提供していけるのではと考えています。


【次ページ】アジア事業で得たデジタルのノウハウを日本に逆輸入する

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