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  • 2022/08/04 掲載

なぜ証券業界で専門人材の「奪い合い」が起きている? 高給を得られるスキルとは

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証券業界は採用意欲は旺盛で、特に専門人材へのニーズは、高まっていると言えます。同年代であっても実力に応じて給与水準が変わるという業界特性もあり、高い専門性を持つ人材なら転職による大幅な年収アップも期待できます。リクルートエージェントの金融領域専門キャリアアドバイザー水谷努氏が、年代別の「求められる人材」について解説します。

執筆:リクルートエージェント コンサルタント 水谷 努

執筆:リクルートエージェント コンサルタント 水谷 努

金融領域出身。リクルート(旧:リクルートキャリア)においては金融領域専門のアドバイザーとして多数のメガバンク・メガ証券・大手生損保出身者、リースや運用会社出身者まで幅広い転職支援実績を誇る。

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証券業界で専門人材の「奪い合い」が起きている理由
(Photo/Getty Images)

顧客・ビジネスモデルともに変化

 証券会社の求人数はここ1年ほど、過去最高の水準が続いています。各社とも力を入れているのが、富裕層向けの営業や投資銀行部門、M&A、リスク管理やコンプライアンス、DXを進めるプロジェクトマネジャーやエンジニアなど、専門人材の中途採用。20代の若手から管理職まで、幅広く求人が出ています。

 背景には銀行と同様、デジタル化で証券ビジネスが大きく変化したことが挙げられます。かつて株取引には、ある程度の資産を持つミドル・シニア世代が、証券会社の営業社員と電話や対面でやり取りしながら売買する、というイメージがあったと思います。

 しかし政府が「貯蓄から投資へ」の流れを打ち出し、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(小額投資非課税制度)の制度も整備されたことで、若いうちから資産運用に取り組む人が増えました。

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岸田内閣が掲げる看板政策『新しい資本主義』にも、資産所得倍増プランなど「貯蓄から投資へ」の流れが鮮明だ
(出典:内閣府 経済財政運営改革の基本方針2022)

 若者の多くは、ネットで金融商品を売買して手数料を抑え、分からないことがあればコールセンターなどに問い合わせて対応しようとします。こうした顧客のニーズに合致し、インターネット専業証券も存在感を強めています。

 このため、対面・電話営業が中心だった大手証券も、ネットを活用したビジネスモデルへの転換を迫られ、求める人材の質が大きく変わりました。年代を大まかに区切って見ていきましょう。

【20代】専門スキル獲得目指す人を「ポテンシャル採用」

 個人側の動きとしては、転職理由に変化がみられています。証券会社の営業社員は従来、販売、手数料目標が中心で、達成のために必死で駆けずり回る営業スタイルに疑問を持つ人もいました。こうした営業手法に疑問を持つ方もいたのは事実です。

 しかし現在、大手証券の大半で販売目標はほぼ廃止されています。他の金融機関から資金を移してもらうなどして、預かり資産を増やすことが評価されるようになりました。

 また人材育成についても前回お話しした銀行同様、支店営業を振り出しに多くの部署を経験させてゼネラリストを育てる方針から、投資銀行やマーケットなど部門別に採用し、専門人材を育成するシステムへと変わっています。こうした変化に伴い、仕事にやりがいを感じる人が増え、従前のような理由での離職・転職者は減ってきています。

 企業側の動きとしては、採用意欲は旺盛です。営業スタイルも、支店に多くの若手社員を配置して、手数料収入を得ることから、富裕層向けの中長期的な資産運用へとシフトしています。

 たとえばMUFGモルガン・スタンレー証券は、営業社員の年収引き上げと同時に、6~7年間同じ顧客を担当してもらう「長期担当制」の導入も表明しています。

 顧客の資産を包括的に運用できるよう、株式だけでなく不動産や保険商品、相続や税の知識がある人材を、中途採用する動きも活発です。営業だけでなく、投資銀行業務、M&Aや資本政策へのアドバイス、IPO支援などを担える人材の採用意欲も旺盛です。

 また20代の場合は、現段階で必要な知識やスキルが不足していても「これから勉強してプライベートバンカーになりたい」「M&Aのスキルを身につけたい」といった意欲の高い第二新卒や若手に関しては、ポテンシャルを評価して採用する傾向があります。

 さらにマーケティングの分野では、デジタルネイティブの若手社員に入ってもらうことでSNSなどを駆使したアイデアを提案してもらい、ネットで資産形成に取り組む若い顧客にアプローチしたい、という思惑もあるようです。

【次ページ】【30代~40代前半】年収大幅アップのチャンス

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「ChatGPTで株価予測」が実現? 金融分野の生成AI最新動向

リラ教授とタン准教授がシミュレートしたのは、ニュース報道翌日の株価パフォーマンス。決算発表を考えてもらえれば分かるようにこれはいわゆる株価予測とは違うのですが(決算前に、どんな決算になるかを考えるのが予測ですね)、こんなクルードな方式でも15ヶ月間リターンが+250%も出たとのことで(取引コスト10bps)、しかもシャープレシオが3以上と、ちょっと驚きを通り越してしまいます。

おそらくは、時価総額のごく小さな銘柄にはいかにミスプライシングが残されているかということが発見なのでしょう。

想像に難くありませんが、そのパフォーマンスは時価総額下位10%の銘柄に集中しています。NYSEの時価総額下位10%といえば$100m以下。その多くはペニーストックで出来高のない日も多く、取引金額は多くて$1m。

さて、この手の計算と現実の間には、常に流動性の制約があります。寄りオンリーの売買で実際にいくら張れるかについて簡単な試算をしてみましょう。

日次取引額の25%が寄りでの約定と仮定し、その20%までならティックアップしないとすると、張れるのは日次取引額の5%です。対象銘柄全体で平均日次取引額が$300kあるならトレード可能額は$15k。そして時価総額下位10%に属する300銘柄のうち、出来高がありかつその日にニュースが存在するのが150銘柄だとすると、合計$2m強しか張れないことに。

ちなみに上記の150銘柄という前提は、論文に使われている観察サンプル数の15ヶ月間46402件にマッチしますが、実際にはマイクロキャップ銘柄についてニュースが存在する日が全体の半数もあるとはとても思えず、さらに制約がある可能性は高そうです。(時価総額100億円以下の会社では、決算すらほとんど報道されませんよね)

投資とは、良い会社を安く買うこと。このシミュレーションは「ニュースがポジティブかネガティブか」だけを見ていて「株価が安いか高いか」は無視していますから、バリュエーションを組み合わせたストラテジーに仕立て上げたときにどうなるかに興味がひかれます。そのうえで、日計りではなくせめて数ヶ月スパンで、かつ大型株でパフォーマンスが出せるようなものが出てきたときには必ずや実用化されるでしょう。

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