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  • 2022/10/11 掲載

31年ぶりの「住宅地の地価上昇」、コロナから回復だけでは説明できない理由とは

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国土交通省が発表した2022年の基準地価が、全国平均で3年ぶりのプラスとなった。とりわけ住宅地については31年ぶりの上昇で、日本の不動産市場が本格的に動き出した可能性を示唆している。しかし、一連の価格上昇の背景には、インフレと二極化という現象が潜んでおり、必ずしも手放しで喜べるものではない。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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国土交通省が発表した2022年の基準地価が全国平均で3年ぶりのプラスとなった。価格上昇の理由をひも解くと、複雑な事情が見えてくる…
(Photo/Getty Images)

バブル以降、地価は一貫して下がり続けていた

 基準地価は、国土利用計画法に基づき、各都道府県が毎年7月1日時点での地価を調査したものである。似たような統計に公示地価と呼ばれるものがあり、こちらは毎年1月に国土交通省が調査を行っている。両者の評価方法には多少の違いはあるが、基本的に近い手法が用いられるので、基準地価と公示地価にはそれほど大きな乖離は生じない。

 一方、国税庁も毎年、路線価という指標を公表している。路線価は相続税の目安として作成されており、実勢価格とは乖離することが多い。基準地価や公示地価は不動産取引の指標としてよく用いられており、複数ある地価統計の中では、全体の値動きを最も適切に表わしていると考えて良い。

 今回の調査では、全用途の全国平均は0.3%の上昇だったが、商業地は0.5%とさらに上昇率が高く、先ほど説明したように住宅地も0.1%とプラスに転じた。

 図1は日本の商業地および住宅地の地価上昇率の推移について示したグラフである。

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商業地、住宅地ともに、バブル以降、マイナス圏で推移してきた

 商業地、住宅地ともに、バブル崩壊以降は基本的にマイナス圏での推移が続いており、地価は下がる一方だったことが分かる。

 よく見ると、商業地については2007年やコロナ前の2019年など、景気が多少、回復している時には、ある程度の上昇が見られた。2007年は円安が進み、株式相場も堅調だったことから地価も上がっていた。その後、リーマンショックで下落したものの、2016年から19年にかけてはインバウンドの影響で、大都市や観光地を中心に再び地価が上がった。

 一方、住宅地については、ずっとマイナス圏が続いていたが、なぜ、このタイミングで住宅地も含めた地価全体に上昇の兆し見られるようになったのだろうか。

 多くのメディアでは、コロナ禍からの景気回復期待によって需要が拡大しており、地価が上がっていると説明している。この見方は間違ってはいないが、コロナからの景気回復期待というのは、あくまで以前の状態に戻ることを意味するだけであり、需要そのものが大幅に拡大したわけではない。

 これまで長くマイナス圏の推移が続いていた住宅も含め、地価全体が上昇に転じたのは、やはりインフレの影響が大きいと考えられる。

【次ページ】地方の地価は上がっていない

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