• 2026/07/09 掲載

1.8兆円の巨額投資…アマゾン「最先端倉庫」で導入の触覚ロボVulcanのヤバい実力(2/2)

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次世代Proteus、STARK、DeepFleetで倉庫はどう変わるか

 ただし、Vulcanだけを見ていると、実はアマゾンの狙いを見誤る。倉庫の個別作業をロボット化するだけでなく、倉庫全体をAIで動かす方向へ進んでいるからだ。

 その象徴がProteusだ。Proteusはアマゾンの自律移動ロボットで、従来は主に限られたエリアで重いカートなどを動かしてきた。2026年6月に発表された次世代Proteusは、人の自然言語による指示を理解し、優先順位や経路を判断する方向へ進化している。米メディアThe Vergeは、次世代Proteusが欧州で2027年前半に展開される計画だと報じている。

 STARKも見逃せない。STARKはコンベヤー上の満載トートをつかみ、カートに載せる協働ロボットシステムである。人が重いトートを繰り返し扱う作業を減らす。アマゾンはSTARKを2027年までに欧州15拠点へ拡大する計画を示している。

 さらにアマゾンは、すでに100万台超のロボットを自社オペレーション網に展開したと説明している。2025年にはDeepFleetという生成AI基盤モデルを発表し、ロボット群の動きを調整して移動時間を10%改善するとした。倉庫では、1台のロボットが速く動くだけでは足りない。大量のロボットが互いに邪魔をせず、商品、人、台車、棚、コンベヤーの流れを滞らせないことが欠かせない。

 物流AIの本丸は、ロボットの数ではなく、ロボット同士の交通整理にある。倉庫の中で商品が詰まる場所を予測し、作業者の位置や負荷を見ながら、短い経路を選ぶ。ここまで来ると倉庫は保管場所ではなく、リアルタイムに動く生産システムに近い。

 アマゾンが強いのは、この実験を自社の巨大な物流網で回せることだ。ロボットを導入し、データを取り、AIを更新し、現場へ戻す。この循環を大規模に回せる企業は限られる。Vulcanは目立つ入り口だが、実際には倉庫全体をソフトウェアで編み直す構想の一部だ。

「人を減らすAI」では終わらない、物流自動化の本当の争点

 アマゾンはロボット導入を、作業者の安全性向上や負担軽減と結び付けて説明している。高い棚や低い棚の作業、重いトートの移動、長距離の移動を減らせるなら、現場の負担は軽くなる。物流の仕事は、長時間の立ち作業、繰り返し動作、無理な姿勢を避けにくい。ロボットが担える領域は大きい。

 ただし、論点はそれだけではない。米Business Insiderは2025年5月、アマゾンの内部文書に基づき、Vulcanなどのロボットが今後10年の採用増加ペースを抑えるうえで重要だと報じた。アマゾンは人とロボットの協働を強調する一方、自動化が人員計画に影響することは避けにくい。

 英Guardianも、アマゾンがロボットは雇用を奪うという見方を否定している一方、倉庫自動化が人員構成や生産性に与える影響は単純ではないと指摘している。ロボットが人を奪うのか、人を助けるのか。そうした二分法では、現実を捉えきれない。

 実際には、減る仕事と増える仕事が同時に起きる見込みだ。棚の上段から商品を取る作業は減るかもしれない。一方で、ロボットの保守、フロー制御、例外処理、データ監視、現場改善の仕事は増える。問われるのは、現場の人がその変化に移れるかどうかだ。

 日本の物流会社にとって、これは遠い話ではない。人口減少が続く中で、倉庫作業を人海戦術で支えるのは難しくなる。人件費が上がり、配送品質への要求は下がらない。アマゾンのような巨額投資は誰にでもまねできないが、何をロボットに任せ、何を人に残すかという設計思想は参考になる。

 Vulcanの衝撃は、触覚ロボットという派手な技術だけにあるのではない。物流現場の制約を、人の根性や長時間労働ではなく、ロボットとAIの組み合わせで解こうとしている点にある。配送が速い会社は、倉庫の奥で人を急がせているのではなく、棚の前の仕事を作り替えている。

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