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  • 2026/10/11 09:30 掲載

川崎重工が「AIロボ重工」へ覚醒? 人型ロボットから四足モビリティまで全方位戦略

現場の強みを、AIとロボットに活かすフィジカルAI戦略

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川崎重工業が「フィジカルAI」を成長の柱に据え、ロボット企業への変貌を急加速させている。2026年10月6日に示した経営計画では、2027~2030年度の4年間で約5,500億円の成長投資枠を設定。2030年度に売上収益3.3兆円超、事業利益3,300億円超を目指す。見えてくるのは、既存事業をAIロボティクスで強化し、新市場を開く「AIロボット重工」への進化である。

現場の強みを、AIロボットへ活かす

 川崎重工の武器は、ロボットをつくる技術と、ロボットを使う製造現場の両方を持つことだ。製造現場のデータやノウハウを、AIの学習と検証に活用する。遠隔操作システム「Successor」では、熟練者の動作を学習・再現する開発を進めてきた。難しい作業は人が補い、その経験から自動化できる範囲を広げる。完全自律の完成を待つだけでなく、使いながら賢くする発想だ。

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【図版付き記事はこちら】川崎重工がAIロボット重工へトランスフォーム、フィジカルAIのすごい戦略(図版:ビジネス+IT)
 2026年5月には米サンノゼに「Kawasaki Physical AI Center San Jose」を開設し、NVIDIA、マイクロソフト、富士通などとの協業を推進。自社現場で改善した技術を外部顧客にも展開する構図に、製造業としての強みがある。一方、半導体向けロボットには約75億円を投じ、2029年度までに生産能力を倍増する計画だ。長期の新市場開拓と、需要が見える領域の設備投資を並走させる。

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川崎重工のシリコンバレーの新拠点 Kawasaki Physical AI Center San Jose(画像:川崎重工業)

Kaleidoは人間の職場を使えるヒューマノイドへ

 2015年から開発するヒューマノイド「Kaleido(カレイド)」は第9世代に進んだ。追求するのは、転倒しても壊れにくい堅牢性と、人間用の道具や階段を使える実用性だ。平地の長距離移動には車輪式の「Kaleido Station」を組み合わせ、現場で立って作業する構想もある。作業が固定された高速ラインには専用機を使い、人型は既存設備を変えずに働く場面へ投入する。「何でも人型に置き換える」戦略ではない。2030年ごろには、工場など管理された環境での搬送・巡回といった用途を見据える。

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デモを披露する川崎重工のヒューマノイドロボット「Kaleido」(画像:川崎重工業)
 頭脳側の開発にも関与する。川崎重工は、ソフトバンクやソニーグループなど44社が出資する国産AI企業「Noetra(ノエトラ)」に参画。同社は2030年度に、空間や物理特性を理解する「実世界ネイティブAI」の実現を目指す。機体の自社開発と、産業界が共同で進めるAI基盤の開発を組み合わせる布陣だ。

ソーシャル犬型ロボ Home LEOはペットと見守り

 10月6日に試作機の完成を発表した犬型のソーシャルロボット「Home LEO(ホーム・レオ)」は、2028年度の市場投入を予定する。会話から生活習慣や好みを把握し、室内の物品探索、転倒や体調変化、火の不始末などのリスク検知に役立てる構想だ。これらは今後の実装予定を含む。本人の同意と適切な管理を前提に医療・介護機関とデータを共有し、高齢者が安心して自宅で暮らせる社会を目指す。

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自宅見守りから介護まで用途が広がる ソーシャル犬型ロボット「Home Leo」(画像:川崎重工業)
 事業の広がりは、見守り機器の販売にとどまらない。グループには手術支援ロボット「hinotori」や院内搬送ロボット「FORRO」があり、富士通とは電子カルテなどの業務システムに連動した医薬品・検体搬送や患者案内を検討中だ。院内業務の自動化から在宅生活の支援へ。個々のロボットを情報システムにつなぎ、医療・介護の負担を一連のサービスで減らす戦略として読み解ける。

造船AIロボで、熟練工の技能を引き継ぎ

 造船では、船体の壁面や天井を移動する4脚ロボットで、溶接・塗装・検査の自動化を目指す。2028年度の本格運用が目標だ。国土交通省が進めるBRIDGE事業では、名村造船所、新来島どっくと開放空間向けAIロボットの開発に参画。熟練者の技能を引き継ぎながら、高所や曲面での作業を機械に担わせる計画だ。

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開発中の次世代造船AIロボット(映像:川崎重工業株式会社)
 並行して、坂出工場には10年間で約1,000億円を投じる方針だ。この投資は機体開発だけでなく、造船所全体の高度化・能力増強を含む。NVIDIAとの協業では、現場を仮想空間に再現するデジタルツインを使い、設計から建造までを統合する。船ごとに設計が異なり、工程を固定しにくい造船だからこそ、現物に応じた判断が意味を持つ。個々の作業だけでなく、生産工程の組み方そのものを変える取り組みだ。

CORLEOは四足でフィールを駆けるモビリティの新提案

 4脚モビリティ「CORLEO(コルレオ)」は、ロボット技術とバイクの開発力を融合させる。後脚が独立して上下する構造で衝撃を吸収し、乗馬のような体重移動で操縦する構想だ。水素エンジンで発電し、各脚を電動で動かす。開発では仮想のオフロードコースで足場の揺れまで再現し、歩行を学習させる。社長直轄の開発体制で、2030年のリヤド万博での走行デモ、2035年の「CORLEO X」と乗車体験施設の実現を目指す。

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四足歩行でフィールドを駆け回る新たなモビリティ「CORLEO」(画像:ビジネス+IT)
 収益化の道筋も機体販売だけではない。2027年の完成を目指すライディングシミュレーターは、ゲームやeスポーツへの展開も想定する。実機の事業はまず法人向けから始め、その先に個人向け販売を見据える。利用環境を管理できる体験施設から市場を開く構想は、安全性の検証と顧客体験づくりを両立させる事業設計といえる。

 この戦略から見える勝ち筋は、AIやロボティクスをドライバーに、既存事業の強化と新たな成長事業への投資を同時に進めることだ。さらには日本や世界が抱える課題、人手不足、高齢化、技能継承をハードウェアとAIの組み合わせで解く。どれだけ安全に稼働し、人の介入を減らし、導入費用に見合う効果を出せるか。川崎重工の変革は、日本の製造業が培ってきた現場のノウハウを成長領域へ転換できるかを測る試金石になるだろう。

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