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- 2023/03/10 掲載
地銀にはDAOが最適? Web3.0時代の金融機関の生き残り策とは
前編はこちら(この記事は後編です)
金融機関はどう当局に対応すべきか
近年、Web3.0とメタバースが、次の経済成長エンジンとして注目されている。Web3.0はブロックチェーンの技術を利用した分散型ウェブであり、NFT・ステーブルコイン・暗号資産・セキュリティコインなどのトークンと、スマートコントラクトを活用したDeFi(分散型金融)・DAO(分散型自律組織)が、主な構成要素だ。メタバースはWeb3.0との親和性が高く、メタバースが発展していくことにより、Web3.0に近づいていくとされている。このメタバースへの企業の参入が急速に増えつつあるのが現状だ。メタバース上での経済活動が増加すること、すなわちDeFiが増加することは、既存の世界での経済活動が減少することを意味する。つまり金融機関も、積極的にメタバースで新しいビジネスを構築していく必要があると言えるだろう。
しかし、メタバース上でのビジネスをはじめとするWeb3.0に対応したビジネスにおいては、法規制の問題がからむため、金融機関がメタバースでビジネスを展開する上ではさまざまな点に留意する必要がある。
その一例として挙げられるのがデジタル資産だ。KPMGジャパンWeb3.0推進支援部の部長であり、有限責任あずさ監査法人の金融統轄事業部ディレクターでもある保木健次氏は、デジタル資産での留意点についてこう語る。
こうした状況を受け、Web3.0関連のビジネスを行っているスタートアップの多くは、国外へと拠点を移しつつある。大企業においても、トークンビジネスを行うために、シンガポールなどの海外に子会社を設立するという動きが目立ってきたという。
しかし、ライセンスを受けた法域でのみ業務が認められる金融機関は、海外に拠点を移すことはできず、Web3.0関連のビジネスに踏み込みづらい。
取引価格が安定することを企図して設計された「ステーブルコイン」もパブリック型の国内での発行の道は開かれたもののハードルは高く、Web3.0における金融サービスの提供は、難しい状況が続くという。この状況について保木氏はこう説明する。
「ステーブルコインを含めパブリック型ブロックチェーンを実際に使用しなければ、知見は蓄積されません。規制に対応しやすい日本のみで使われるコンソーシアム型の閉じられたブロックチェーンでステーブルコインなどのデジタル資産を発行するのも1つの方法でしょう。ただし、グローバルではパブリック型ブロックチェーンが当たり前です。ユーザーはいずれそちらを選択する可能性が高く、どちらの型のブロックチェーンでステーブルコインなどを発行するかについては、慎重に検討する必要があります」(保木氏)
DeFiのために国内の金融機関が一致団結する必要がある?
つまり、日本の金融機関の多くが、パブリック型ブロックチェーンやスマートコントラクトにふれたこともない状況自体が問題であり、日本の金融機関は、Web3.0とメタバースにおいて、まだビジネスのスタートラインにも立っていない現状がある、といえるだろう。もちろん、Web3.0の中にはDeFiのように金融機関が単独で新たなビジネスを展開するのは難しいものがある。しかし、方法によってDeFiであっても可能性は広がると保木氏は語る。「『国内の金融機関がコンソーシアムを組んで、1つの大きなDeFiを作る』くらいのことをやる必要があると考えます。ただし、金融機関がDeFiを作るとなると、それこそ当局と積極的な対話が必要になるでしょう。そこまでやれるかどうかがポイントです」(保木氏)
DeFiの規制に関しては、日本では法的な位置付けが明確になっていない現状があり、課題や論点を1つずつ、クリアしていく必要があると保木氏は話す。
「DeFiを作るためには、さまざまなコンプライアンス上の課題があります。現段階では、DeFiを作れるかどうかも、わかっていません。また、流動性を集めるDeFiによる寡占化が起こりやすい市場で個社として取り組むのは難しい状況です。しかし、先々の展開を考えるならば、大手の銀行が連携し、DeFiを作る動きがあってもいいだろうと考えます」(保木氏)
海外では、シンガポール金融管理局(MAS)がシンガポールのDBS銀行や米国の銀行JPモルガン・チェース、日本のSBIデジタルアセットホールディングスとともにトークンやDeFiの研究イニシアチブ「プロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)」を発足する動きもあった。日本国内で金融庁がからむのは難しいが、複数の金融機関が手を組んで、DeFiの研究を進めることは可能といえるだろう。 【次ページ】地銀がDAOに適している、ある理由
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