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  • 2024/06/14 掲載

インフレで本当に苦しんでいる国民はどこか? 日本はなんと「インフレ収束しない」1位

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日本では円安もあり、昨今の物価高に驚いている人も多いだろう。マクロ経済指標的にはインフレ圧力は和らぎ、各国中央銀行による金利引き下げの動きが出始めている。しかし、人々が実感できる物価高の緩和には1年以上かかる可能性もある。各国の人々はどのような経済センチメントを抱いているのか。収入水準や家賃水準などを参考にしながら、各国の物価高状況を俯瞰してみたい。
執筆:細谷 元
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日本では物価高は二度と収束しない? 写真はニューヨークのスーパーマーケットでの様子
(Photo:rblfmr / Shutterstock.com)

物価高の収束への期待感、「二度と収束しない」との回答も

 いま米連邦準備制度理事会(FRB)がいつ金利引き下げに動くのかに注目が集まっている。一方、欧州ではECBがすでに2019年以来初となる金利引下げを発表、インフレ圧力は緩和され始めているとの見方が趨勢となっている。

 それでも消費者が実感できる状態にはなっておらず、実感できる水準まで物価が下がるのは、1年後になる可能性も指摘されている。グローバルの市場調査会社Ipsosが2024年5月に発表した最新の消費者センチメント調査で、この状況が浮き彫りとなった。

 Ipsosの「Cost of Living Monitor」(2024年5月)によると、調査対象32カ国のうち、29カ国でインフレが「ノーマルな状態」に戻るのは1年以上先、あるいは二度と戻らないと考える人が多数を占めたことが判明した。

 国別に見ると、日本、フランス、トルコ、ベルギー、オランダの5カ国で、インフレが収束するのは「1年以上先」あるいは「二度と収束しない」と考える人の割合は70%以上となった。特に、日本では「二度と収束しない」との回答割合が44%と32カ国中トップ、平均21%の2倍以上と、インフレからの回復期待が薄いことが分かった。

 自国経済が景気後退にあるかどうかという質問でも、日本では51%が景気後退にあると回答、平均の45%を超えた。ただし、この設問では、韓国では76%が景気後退にあると回答したほか、トルコで75%、ハンガリー72%、マレーシア68%、ニュージーランド68%、タイ66%、スウェーデン64%、アルゼンチン58%などと、日本よりも景況感が悪い国が複数存在することが確認できる。

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自国経済が景気後退にあるかどうか? という質問で日本は38カ国平均を上回った
(出典:Ipsos「Cost of Living Monitor」(2024年5月))

 同レポートでは、実際にインフレや景気後退でどれほど生活が苦しくなっているのか、という点にも焦点が当てられている。

 「生活に余裕がある」「まあまあやっていける」と答えた人の割合は、32カ国平均で39%。この割合が最も高かったのは中国で71%だった。これにインド64%、オランダ62%、スウェーデン61%、イスラエル54%、英国48%が続いた。一方「生活が苦しい」「非常に苦しい」と答えた人の割合は32カ国平均で26%だった。国別では、アルゼンチンが56%で最多となり、これにチリ51%、ペルー47%、トルコ43%、コロンビア42%、メキシコ36%など中南米諸国で、生活苦を訴える人が多い傾向が顕著だった。

主要国におけるインフレの影響、食費や光熱費が高騰

 Ipsosの調査では、生活費の中でも特にどの分野が直撃を受けているのかも明らかになった。

 今後6カ月の生活費の見通しでは、「食費」(67%)、「光熱費」(65%)、「日用品費」(64%)の上昇を予想する人が多いことが判明。国別に見ると、南アフリカ、ハンガリー、トルコ、オランダ、カナダで8割前後が食費の上昇を見込んでいた。

 南アフリカでは、平均月給が約1,285米ドルほど。2人でミドルレンジのレストランで食事をした場合、約37ドルかかる。またスーパーで牛乳1リットル購入した場合、1ドルかかる。平均月給2,000ドル、ミドルレンジレストランでの食事代38ドル、牛乳1リットル1.37ドルの日本と比べても、南アフリカの食費の高さが際立つ。

 一方、アルゼンチンとトルコでは8割以上、南アフリカ、フランス、シンガポールでは約8割が光熱費の上昇を予想。カナダ、ニュージーランド、オーストラリアでも7割以上が値上がりを見込んでいる。

 アルゼンチンの平均月給は446ドル。これに対し光熱費は47ドルと、月給の10%を占める状況。日本は平均月給2000ドルに対し、光熱費は159ドルと、8%を下回る比率となる。

 交通費(ガソリン代など)の上昇予想では、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、トルコが最も割合が高く、いずれも75%以上だった。欧米諸国も軒並み6割以上が値上がりを見込んでいる。

 今後1年間の可処分所得の見通しでは、32カ国平均で29%が「減少する」と回答。前回調査(2023年11月)から6ポイント悪化した。トルコ(44%)、ハンガリー(38%)、アルゼンチン(38%)、ニュージーランド(38%)で、減少を予想する声が特に多かった。

 トルコの平均月給は682ドルだが、1ベッドルームアパートの家賃は平均536ドル、光熱費は60ドルに上る。可処分所得の減少見込みに加え、家賃などの負担が、景況感に影響している可能性は否めない。

 生活に影響を与えるインフレが何によって起こっているのか、人々がどのように考えているのかの傾向が同調査であぶり出された点も注目したい。なぜなら、各国の選挙結果に影響を及ぼし、政治・経済が大きく動く可能性があるからだ。

 人々が考えるインフレ要因としては、「世界経済の状況」(70%)、「自国政府の政策」(68%)、「自国の金利水準」(67%)、「ウクライナ侵攻の影響」(58%)、「企業の過剰な利益追求」(58%)、「移民の流入」(52%)などが上位にランクイン。実際、欧州では、反移民を掲げる保守政党への注目が高まり、域内各国で政治的な趨勢が大きく変化している。 【次ページ】アジアで最もインフレがひどい国
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