• 2026/05/21 掲載

精度99.3%「AIコンタクトセンター」の衝撃、T&D生命が“採用前提”から脱却するワケ(2/3)

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“FAQ整備”から始めた「段階的AI導入」

 T&Dフィナンシャル生命がAI活用に着手した起点は、いきなり電話対応を自動化するところではなかった。

 まず取り組んだのは、長年見直しが行われず品質が低下していたWeb上のFAQ(よくある質問)の再構築だ。顧客の閲覧ページや行動データに基づいて関連性の高い回答を自動表示する仕組みを整え、問い合わせの手前で自己解決を促す基盤を築いた。

 並行して着手したのが、VoC(Voice of Customer=顧客の声)の分析基盤だ。

 従来、苦情の抽出は担当者が通話ログを手作業で確認しており、「苦情か苦情でないか」の判断が属人化していた。AIによる自動分類・可視化を導入し、抽出・分析・報告のプロセスを標準化した。

 これは、VoCが「分析するもの」から「経営判断に使うもの」へ変化したとも捉えられる。

「FAQから始めて、VoCの自動分類、そしてAIオペレーターへ。段階的に推進していった」(賀來氏)

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【画像付き記事全文はこちら】
AI導入に踏み切った背景と導入の進め方
(出典:ライトタッチ報道発表)

 こうして同社は、AI導入ではなく“業務構造の再設計”として取り組みを進めていった。

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T&Dフィナンシャル生命におけるAIコンタクトセンター全体像
FAQによる自己解決支援、VoC分析、オペレーター支援、AIオペレーター(音声一次対応)までを含め、コンタクトセンター全体をAIで再設計する取り組み。RightTouch(ライトタッチ)のプロダクト群を基盤に、共通データ基盤と連携しながら段階的にAI活用を拡大している。単なる電話応対の自動化ではなく、「AIコンタクトセンター」全体の構築を通じてCX向上と業務効率化の両立を目指す
(出典:ライトタッチ報道発表を編集部が修正)

「精度99.3%」、 現場の不安を払拭した“ある設計思想”

 そして本丸であるAIオペレーターの導入は、対象を極限まで絞ったところから始まった。

 選ばれたのは、保険業界で問い合わせ件数が多いマイナンバー関連のダイヤルだ。

 まずは社内検証としてPoC(概念実証)を実施し、用件の振り分け精度は99.3%を記録した。この高精度は、対象領域を限定し、問い合わせパターンを徹底的に分析・整理した上で段階的にチューニングを重ねた結果だ。

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AIオペレーター導入の進め方
(出典:ライトタッチ報道発表)

 この99.3%という精度は、単にモデルの性能だけで実現されたものではない。

 実際には、問い合わせ内容を数十パターンの意図に分解し、それぞれに対して明確な分類基準を定義した上で学習データを整備している。

 重要だったのは、この成果を社内にていねいに浸透させるプロセスである。

 各種会議体でAIオペレーターの進捗や実際の音声を共有し、経営層を含めた社内の理解を段階的に醸成していった。

 PoCから本番運用に移行する過程では、現場のオペレーターの不安や、金融規制への適合性といった課題も浮き彫りになった。

 特に大きかったのは、現場オペレーターの心理的な壁だ。

 AIが一次対応を担うことで、自身の役割が縮小するのではないかという不安は少なくなかった。また、金融機関特有の厳格なコンプライアンス要件のもとで、「AIがどこまで対応してよいのか」という線引きも明確ではなかった。

 これに対して同社は、AIを“代替”ではなく“前処理”として位置づけた。

 AIは問い合わせ内容の整理と一次応答に特化し、判断が必要な領域は必ず人に引き渡す。この役割分担を明確にしたことで、現場とAIの関係性を再定義し、段階的な受け入れを実現した。

 第2フェーズでは、実際の顧客からのマイナンバー関連の問い合わせをAIが受ける運用に移行。この段階でも精度は満足のいく水準を維持している。

「何か1つにテーマを絞って社内で検証し、情報提供をまめにしながら進めていきました」(賀來氏)

 段階的に適用範囲を広げたことで、社内調整や運用面の負荷を抑えながら進められたという。

 AIオペレーターの設計思想は「AI一次対応+人による補完」のハイブリッド型だ。

 AIが聞き取りと要点整理を担い、想定外の内容や判断が難しいケースは人が対応する。金融規制への配慮から、個人情報を扱わない領域からスタートし、金額に関わる回答はAI化の対象外とするなど、リスクを前提とした設計が採られている。 【次ページ】処理件数が“数倍”に…? 人員増なし「AI自動分類」のカラクリ
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