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  • 2026/01/26 掲載

2026年10大リスク第1位…経営者が必ず知るべき、トランプ2.0「政治革命」の正体

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一律関税、ベネズエラ攻撃、グリーンランドの領有権主張、WTO脱退──2期目となるトランプ政権(トランプ2.0)によるこの1年は世界中が振り回され続けた年だった。こうした中、ホワイトハウスでは20日、365項目にわたる「実績」を公表、11月の中間選挙に向けてトランプ2.0の成果をアピールした。トランプはこの1年でいったい何をしたのか。トランプ2.0の本質はどこにあるのか。長年、米国大統領選挙・政権における経営とマーケティングおよび広報戦略の事例分析に携わってきた埼玉大学名誉教授 政治学博士 平林 紀子氏が「スタートアップ戦略」、「実装と成果」、「市場株主反応」の3つの観点から解説する。
執筆:埼玉大学名誉教授 政治学博士 平林 紀子

埼玉大学名誉教授 政治学博士 平林 紀子

専門は、現代米国政治、政治マーケティング・広報。とくに米国大統領選挙・政権における経営とマーケティングおよび広報戦略の事例分析。
東京都出身、早稲田大学政治経済学部政治学科卒、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。埼玉大学教養学部・助教授、同大学人文社会科学研究科・教授(2002年~2022年)を経て、2022年4月より名誉教授。米国ハーバード大学行政大学院・ジョージワシントン大学政治経営大学院にて客員研究員(1999年~2001年)。
主な著作に、「マーケティング・デモクラシー: 世論と向き合う現代米国政治の戦略技術」 (単著、春風社、2014年)、「政治コミュニケーション概論」 (共著、ミネルヴァ書房、2021年)、「現代のメディアとジャーナリズム6:広報・広告・プロパガンダ」 (共著、ミネルヴァ書房、2003年)など

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トランプ2.0の本質はどこにあるのか?
(Photo:Lucas Parker / Shutterstock.com)

政治を「意味」から作り替えたトランプ2.0の「大統領職」ブランド戦略

 1月6日に発表されたユーラシア・グループ「2026年世界10大リスク」のトップは、トランプの政治革命だった。イアンブレマー氏率いる同グループは「米国は政治革命のただ中にある。ドナルド・トランプ大統領は、自らの権力に対する抑制を組織的に解体し、政府機構を掌握し、それを敵に対して武器化しようとしている」とそのリスクを評価している。

 「米国を再び偉大に(Make America Great Again:MAGA)」を掲げるトランプ2.0の「政治革命」は、政策の中身そのものというより、「大統領職」や「政治」の定義を組み替える「意味の革命」を深めたものと言える。

 2期就任直後から、大統領は「常に動いている」。すなわち発言し、命じ、署名し、対立の構図を作り出してきた。関税をかけると言い、交渉すると言い、相手国や企業を名指しする。制度の説明や手続きの整理より先に、行為と言葉が前に出る。この連続が、「政治が進んでいる」という感覚を生む。

 トランプ2.0の統治像は、制度としての大統領ではない。国家を代表する人格として決断し、命じ、「敵」を名指しする主体としての大統領である。その正統性は、民主的手続きによる立法化や制度的定着、結果責任よりも、「やっている」「闘っている」という行為の可視性、あるいは前面化によって支えられている。

 それは単なる「政治の劇場化」ではない。トランプ2.0は既存制度を軽視するだけでなく、むしろ制度を超越することに価値を置く。「私を制約するのは、自身の規範だけ」(1月7日NYタイムズ、ベネズエラ支配の国際法違反を問われて)。個人の意思と国家の意思の区別が曖昧になり、トランプ個人が国家そのものを意味する「帝王制」的統治である。

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【画像付き記事全文はこちら】
2025年6月14日には全米で700万人規模の「キングス反対運動(王はいらない)」が起きた。写真はボストンでのデモ
(Photo:Heidi Besen / Shutterstock.com)

もはや政治ではなく、アメリカ株式会社のワンマンCEO

 加えてトランプ2.0のスタイルは、政治家というより企業経営者に近い。国家を「アメリカ株式会社」という1つの経営体として扱う、ワンマンなCEO型の統治様式だ。関税は「交渉」カードとなり、同盟関係は理念ではなく「取引」条件として語られる。国益は「正しいか」ではなく、「もうかるか/不利か」という経営判断の語彙で再定義される。

 さらにトランプ2.0では、大統領が政治言説空間を支配する。発言は即座に拡散され、吟味される間もなく次の発言が重なる。報道体制の再編、情報「洪水」で異論を封じる広報戦略、大統領の言葉が最短距離で支持者に届く回路の整備。側近や「代理人」は制度的専門性より、大統領の言葉を忠実に代弁する能力で配置される。

 出来事の意味づけをめぐる主導権は制度や報道機関ではなく、大統領個人に集中していく。しかも時空間の制約を超えて、大統領は「いつでも、どこにでもいる」。この可視性の「遍在」は、絶対権力の常套手段である。

 本稿が行う「トランプ2.0」の前半1年の「成績評価」は、単純な成功・失敗の判定ではない。

 核心は、迅速な意思決定や経営効率を重視する統治様式が、民主主義的統治や制度的正統性とどのような関係を結んだのか、すなわち「経営」と「公共」の相克にある。ここでは、この1年間の統治を、①戦略的一貫性、②実装スピードと可視化、③市場適合性、④レガシー耐久性の3つの軸で評価する。

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次ページ以降でトランプ2.0の要点を筆者がわかりやすく図解します
【次ページ】「トランプ2.0」の前半1年の「成績評価」
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