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- 2026/01/26 掲載
2026年10大リスク第1位…経営者が必ず知るべき、トランプ2.0「政治革命」の正体
専門は、現代米国政治、政治マーケティング・広報。とくに米国大統領選挙・政権における経営とマーケティングおよび広報戦略の事例分析。
東京都出身、早稲田大学政治経済学部政治学科卒、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。埼玉大学教養学部・助教授、同大学人文社会科学研究科・教授(2002年~2022年)を経て、2022年4月より名誉教授。米国ハーバード大学行政大学院・ジョージワシントン大学政治経営大学院にて客員研究員(1999年~2001年)。
主な著作に、「マーケティング・デモクラシー: 世論と向き合う現代米国政治の戦略技術」 (単著、春風社、2014年)、「政治コミュニケーション概論」 (共著、ミネルヴァ書房、2021年)、「現代のメディアとジャーナリズム6:広報・広告・プロパガンダ」 (共著、ミネルヴァ書房、2003年)など
政治を「意味」から作り替えたトランプ2.0の「大統領職」ブランド戦略
1月6日に発表されたユーラシア・グループ「2026年世界10大リスク」のトップは、トランプの政治革命だった。イアンブレマー氏率いる同グループは「米国は政治革命のただ中にある。ドナルド・トランプ大統領は、自らの権力に対する抑制を組織的に解体し、政府機構を掌握し、それを敵に対して武器化しようとしている」とそのリスクを評価している。「米国を再び偉大に(Make America Great Again:MAGA)」を掲げるトランプ2.0の「政治革命」は、政策の中身そのものというより、「大統領職」や「政治」の定義を組み替える「意味の革命」を深めたものと言える。
2期就任直後から、大統領は「常に動いている」。すなわち発言し、命じ、署名し、対立の構図を作り出してきた。関税をかけると言い、交渉すると言い、相手国や企業を名指しする。制度の説明や手続きの整理より先に、行為と言葉が前に出る。この連続が、「政治が進んでいる」という感覚を生む。
トランプ2.0の統治像は、制度としての大統領ではない。国家を代表する人格として決断し、命じ、「敵」を名指しする主体としての大統領である。その正統性は、民主的手続きによる立法化や制度的定着、結果責任よりも、「やっている」「闘っている」という行為の可視性、あるいは前面化によって支えられている。
それは単なる「政治の劇場化」ではない。トランプ2.0は既存制度を軽視するだけでなく、むしろ制度を超越することに価値を置く。「私を制約するのは、自身の規範だけ」(1月7日NYタイムズ、ベネズエラ支配の国際法違反を問われて)。個人の意思と国家の意思の区別が曖昧になり、トランプ個人が国家そのものを意味する「帝王制」的統治である。
もはや政治ではなく、アメリカ株式会社のワンマンCEO
加えてトランプ2.0のスタイルは、政治家というより企業経営者に近い。国家を「アメリカ株式会社」という1つの経営体として扱う、ワンマンなCEO型の統治様式だ。関税は「交渉」カードとなり、同盟関係は理念ではなく「取引」条件として語られる。国益は「正しいか」ではなく、「もうかるか/不利か」という経営判断の語彙で再定義される。さらにトランプ2.0では、大統領が政治言説空間を支配する。発言は即座に拡散され、吟味される間もなく次の発言が重なる。報道体制の再編、情報「洪水」で異論を封じる広報戦略、大統領の言葉が最短距離で支持者に届く回路の整備。側近や「代理人」は制度的専門性より、大統領の言葉を忠実に代弁する能力で配置される。
出来事の意味づけをめぐる主導権は制度や報道機関ではなく、大統領個人に集中していく。しかも時空間の制約を超えて、大統領は「いつでも、どこにでもいる」。この可視性の「遍在」は、絶対権力の常套手段である。
本稿が行う「トランプ2.0」の前半1年の「成績評価」は、単純な成功・失敗の判定ではない。
核心は、迅速な意思決定や経営効率を重視する統治様式が、民主主義的統治や制度的正統性とどのような関係を結んだのか、すなわち「経営」と「公共」の相克にある。ここでは、この1年間の統治を、①戦略的一貫性、②実装スピードと可視化、③市場適合性、④レガシー耐久性の3つの軸で評価する。
【次ページ】「トランプ2.0」の前半1年の「成績評価」
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