- 会員限定
- 2025/10/06 掲載
“帝王化”進む米政権……「勝者」トランプ氏を待ち受ける「負け組」の“倍返し”
専門は、現代米国政治、政治マーケティング・広報。とくに米国大統領選挙・政権における経営とマーケティングおよび広報戦略の事例分析。
東京都出身、早稲田大学政治経済学部政治学科卒、早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。埼玉大学教養学部・助教授、同大学人文社会科学研究科・教授(2002年~2022年)を経て、2022年4月より名誉教授。米国ハーバード大学行政大学院・ジョージワシントン大学政治経営大学院にて客員研究員(1999年~2001年)。
主な著作に、「マーケティング・デモクラシー: 世論と向き合う現代米国政治の戦略技術」 (単著、春風社、2014年)、「政治コミュニケーション概論」 (共著、ミネルヴァ書房、2021年)、「現代のメディアとジャーナリズム6:広報・広告・プロパガンダ」 (共著、ミネルヴァ書房、2003年)など
経済でも政権でも「勝ち組」、トランプ2.0の凄み
政治でも経済でもトランプ大統領は「勝者」だ。ニューヨーカー誌(2025/8/11号)によると、トランプ大統領は大統領職を利用して、計34億ドル(約5,000億円)の「私腹を肥やしている」という。ペルシャ湾岸の5つの大型プロジェクト、カタールのプライベートジェット機、ハノイの広大なリゾートホテル、暗号資産の6つのプロジェクト、そしてMAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大に)グッズ──利益相反が明らかなこの不当所得は、大統領個人が経済面で「勝ち組」たる明白な証拠だ(下の図)。

政権運営でも勢いは増す。
たとえば大統領特権の指標である「大統領令」は、1期政権4年間で総数220件(年平均55件)に対し、2期はわずか8カ月で198件、このペースで続くと1年で329件になる。
これはフランクリン・ルーズベルト元大統領(在位4期12年、計3726件)の年平均307件を超え、大統領史上最多(最速)記録である(American Presidency Project調べ)。
しかもその内容は、バイデン政策の転覆と報復から、内政、国防、通商、国際関係まで、政権公約のほぼすべての領域をカバーし、憲法・連邦法が定める大統領権限を大きく逸脱して訴訟になるケースも多い。
関税の“政治的武器”化、独立機関の権限と人事への介入、移民摘発や治安対策に軍を投入して力を誇示(国防総省という名称も、防衛だけでなく攻撃的な「戦争省」に改名)、思想や価値観の合わない有力大学や博物館などの文化・研究助成の切り捨てなど、網羅的に踏み込む。
それを可能にした最大の理由は、三権分立の均衡を破る議会および司法への支配力と、米国民主主義と法治主義を超える「帝王的大統領制」に対する組織的抵抗がないことだ。 【次ページ】「移民→犯罪」トランプ2.0が磨く“目逸らし”技法
グローバル・地政学・国際情勢のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR