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QRコード決済の普及に伴って、全国各地で小額決済のデジタル化対応が進んでいる。その一方で、QRコード決済を提供する事業者間での競争は激しく、既に合従連衡の様相を呈しつつもある。デジタル化が進展するにつれ、ITやスマホに親和性の高い個人が相応のメリットを享受しているのは事実だ。しかし、デジタルに取り残された人々は今後どうなっていくのであろうか。既存の金融機関の利用者の高齢化が進む中、金融庁はこうしたデジタル化の恩恵に必ずしも預かることのできない特定の利用者へ配意するように各金融機関に促し始めた。
そのQRコード決済、本当に需要があるの?
大阪商工会議所は2019年2月、大阪市内に事業所を持つ会員企業に対して「キャッシュレス対応」についてのアンケート調査を実施した。284社から回答を得た結果、「キャッシュレス対応済み」と回答した企業は全体の13%、「キャッシュレス化を検討中」と回答した企業も全体の8%にとどまる一方、「対応しない予定」と回答した企業は全体の40%に上った。
「対応しない予定」と答えた企業の多くが、「手数料の高さ」と「オペレーション上の問題」を課題として掲げていたようだ。大都市部の大阪市内でもこのような結果であることから、多くの地域金融機関が営業基盤とする他の地域での実態は推して知るべきだ。
2019年5月に公表された、リサーチ・アンド・ディベロプメントの調査でも「QRコード決済の中止率の高さ」が取り上げられていた。
具体的には、QRコード決済は登録(ダウンロード)されても48.6%が利用開始後に中止しており、QRコード決済は浸透しつつも継続使用者は約半数であると報告されている。また、この中止率の高さは、他の決済手段と比べても、デビットカードの62.4%に次ぐ中止率となっているのが特徴だ。
その背景には、多くのQRコード決済事業者が乱立していることもある。また、現在実施中の手数料無料キャンペーンやポイント還元などを目的とした利用が進む一方で、面倒なスマホ操作や店頭での複雑なオペレーションなどがネックとなっている可能性も否定できない。
ところが、こうした状況でありながら、2019年秋口から急激にQRコード決済の利用が増加しているという。もちろん政府によるキャッシュレス還元施策が奏功した結果ではあるものの、還元施策が途絶えた場合、QRコード決済市場はどうなっていくのだろうか?
金融行政方針で示された高齢者と障がい者への配意
地域金融機関では早くから、キャッシュレス化の一環としてQRコード決済の地域への普及啓発に取り組んできた。キャッシュレス決済は、インバウンドの外国人や若年層を中心に、その利便性を提供することにも寄与している。他方、高齢者はITリテラシーなどがネックとなり、必ずしも安易に利用可能なツールとはなっていない。そうした層の利用拡大には相当の時間が必要だろう。
地域金融機関の主要顧客は、中高年層が中心であるため、キャッシュレスをはじめとしたデジタル化の過度な進展は顧客を置き去りにしかねない。政府によるキャッシュレス還元施策についても、利用頻度やITリテラシーの高い一部の利用者に還元が集中することが想定される。そもそもの消費税引き上げに伴う消費者の負荷軽減措置として機能していないようにも捉えられる。
さらには、金融庁が「フィンテック企業とのアライアンスによって実現されるデジタル化された金融サービスの多くが、デジタルに疎い高齢者や障がい者を置き去りにしているのでは」という問題意識を有しているようにも見える。
金融機関がフィンテックの活用と歩調を合わせて店舗統廃合を進めた場合、「高齢者や障がい者の側に立った金融サービスをいかにして継続提供すべきなのか」「スマホ決済などについて高齢者との親和性はどうなのか」という問題が出てくる。さらに直近の金融行政方針では、「金融機関はデジタル化によるメリットを享受すべき」というメッセージに加え、利用者ニーズの多様化への対応を引き続き要請している。
具体的には「我が国では、今後一層高齢化が進展、高齢者の財産管理やライフデザインに対する支援が一層重要」になるとした上で、「障がい者の権利、利益が尊重されるよう、必要かつ合理的な配慮が行われる必要がある」としている。中でも、金融庁が以下のように明示している点に注目する必要がある。
- ✔ 後見制度支援預金の導入
- ✔ 認知症サポーターの養成
- ✔ 不測の事態における預金の払出し
- ✔ 高齢者等や認知症に対応した金融商品・サービスの開発・普及
- ✔ 障がい者への対応について、金融機関の施設・態勢の整備、現場職員への浸透の徹底
「デジタルネイティブ」といわれるITに親和性の高い顧客層をターゲットとして、過度にデジタル化を推進した場合、金融機関の提供サービスがいわば「顧客を選別化する方向へと突き進んでしまう可能性があることに配意すべし」というメッセージが込められていると理解できるだろう。
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