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  • 2020/10/28 掲載

平井卓也デジタル相は「ブロックチェーン」をどのようにとらえているのか?

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菅義偉新政権が2020年9月16日に発足した。同政権では、とりわけ遅れの目立つ日本のデジタル化を促進するために、デジタル改革担当情報通信技術(IT)政策担当 内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)に平井卓也 元IT・科学技術担当大臣を起用した。また、同政権の目玉政策として「デジタル庁の創設」を掲げている。同大臣、およびデジタル庁への期待が高まる中、IT業界各団体の平井大臣への表敬訪問が続いている。本稿では、日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事 加納裕三氏が平井議員と表敬訪問の際話したこととその後について詳説する。

フリーライター 高橋ピョン太

フリーライター 高橋ピョン太

ゲーム開発者から、90年代はアスキー(現・アスキードワンゴ)のパソコンゲーム総合雑誌『LOGiN(ログイン)』編集者・ライターに転向。ログイン6代目編集長を経て、ネットワークコンテンツ事業を立ち上げ、PC向けネットワークコンテンツ開発、運営に携わる。2002年にドワンゴの執行役員に就任後、モバイル中心のコミュニケーションサービス、Webメデイア事業に従事。現在は、フリーライターとして、ゲーム、VR、IT系分野、近年は暗号資産メディアを中心にブロックチェーン・暗号資産(仮想通貨)関連のライターとして執筆活動中。

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平井卓也デジタル相はブロックチェーンをどうとらえているのか

「ブロックチェーンを国家戦略に」、JBAが平井大臣へ直接提言

 2020年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(以下、骨太方針2020)では、「デジタル化の推進は、日本が抱えてきた多くの課題解決、そして今後の経済成長にも資する」(第3章 「新たな日常」の実現)と記されている。

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日本ブロックチェーン協会(JBA)
代表理事
加納裕三氏
 日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事 兼 bitFlyer Blockchain代表取締役の加納 裕三氏は、10月1日にデジタル庁発足人の平井卓也デジタル担当大臣を表敬訪問。「ブロックチェーンを国家戦略に。」をスローガンとして、デジタル庁へ、ブロックチェーンに関する3つの提言を行った。

 その提言とは「ブロックチェーン特区」「CBDC(中央銀行デジタル通貨)試験導入」「行政システムのブロックチェーン化」である。

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「ブロックチェーンを国家戦略に。」
(出典:JBA)

「日本は日本流のやり方を考える」ことが国家戦略に

 まず加納氏はブロックチェーンを取り巻く状況について「仮想通貨(暗号資産)の盛り上がり以降、DeFi(decentralized finance:分散型金融)へと続き、ブロックチェーン技術そのものも徐々に盛り上がりつつあり、世界的にも注目されている」と、を平井大臣に説明した。

 それを受けて、平井大臣は「中央に管理者がいなくなるというブロックチェーンの考え方は、これからの時代に1つの考え方としてはある」と述べた。

 加納氏は続いて、ブロックチェーンにおける中央集権という考え方は2種類の側面があると説明。

 1つは「政治機構や意思決定機構など管理者が中央集権であること」。もう1つは「システムそのものが中央集権的か分散的かに分かれること」だ。「ビットコインは、この両方を分散的に行っており、意思決定そのものも特定の誰かが決めていない状況である」と解説した。

 平井大臣は、中国が進める「デジタル人民元」を引き合いに出し、「その観点では、中国のデジタル人民元の考え方はちょっと違う。要するに、管理者がいるブロックチェーンだから、元々ブロックチェーンの考え方と中国共産党の考え方に合わないはずだ。それをうまく中国はやろうとしている。新たな考え方だ」とした。

 「意思決定の部分は恐らく中央集権でやりたいが、(ブロックチェーンの)システムのメリットを取りたい。その結果、それをハイブリッドにしたものが、中国のデジタル人民元であろう」と加納氏は返答した。それを受けて平井大臣は「日本は日本流のやり方を考えようというのが、国家戦略になるのかな」と解釈したようだ。


JBAのブロックチェーンに関する3つの提言の詳細とは?

 加納氏は、JBAが提案する「ブロックチェーン特区」「CBDC試験導入」「行政システムのブロックチェーン化」について説明した。

 1つ目は「ブロックチェーン特区」の創設だ。新たな技術や新しいビジネスの実用化の可能性を検証し、現行の規制制度の見直しにつなげる「サンドボックス制度」の活用、スタートアップ企業を支援する「インキュベーション施設」の開設などを提案した。

 加納氏は、インキュベーション施設の例として、英国のスタートアップ促進プログラムである「レベル39」を挙げ、日本でも同様の施策の必要性を説き、「関係者が一堂に会して議論する場が重要になる」という考えを示した。

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ブロックチェーン特区
(出典:JBA)

 2つ目の提案は、中央銀行が発行するデジタル通貨である「CBDC」の試験導入だ。加納氏は「日本銀行によるデジタル通貨の発行が望ましいが、それが難しい場合は財務省のMOFコインとして500円玉をトークンとして発行する方法も考えられる」と説明した。「要は試験導入が大事であり、いきなりCBDCを発行してしまうと非常に大きなインパクトを与えてしまう。まずは段階的に試験導入として発行する」ことを提案した。

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CBDC(中央銀行デジタル通貨)試験導入
(出典:JBA)

 それを受けて、平井大臣は「今のローカルのコイン(地域通貨)ではダメなのか?」と質問。加納氏は「日銀が発行することが重要だ」と即答し、「日銀が発行することで、日本円と同じであると示すことが重要である」と説明した。

 また、「1年間の期限を設け、その後は流通を停止して残高を現金に換金することもあり得る。期限が切れることもデジタル通貨ならでは。現金換金を保証することで、CBDCの流通を促進できる」と加納氏は主張する。

 さらに、ブロックチェーン特区を指定してCBDCを試験導入し、「どのように流通するか」「決済がどう変わるか」「金融機関はどう対応するのか」「マネタリーポリシー(金融政策)はどう変化するのか」などについて概念実証(PoC)を実施することを提言した。

 最後は、「行政システムのブロックチェーン化」である。

 現在、縦割り行政の見直しが叫ばれているが、現行の行政システムもまた連携性に乏しく、統合化が難しい点が指摘されている。ブロックチェーンには、「くっつきやすい=疎結合しやすい」という特徴があるため、各省庁などでバラバラになっている行政システムを結合できる可能性を大幅に増やすことができるという。

 加納氏は「ブロックチェーンでは秘密鍵と公開鍵という暗号化技術を利用する。たとえば、マイナンバーカードの管理にブロックチェーンを使用すると、住民票システムなど他のシステムとそれぞれが容易にデータを参照できる仕組みが作れる」と説明。システムの統合とブロックチェーン技術の相性の良さを力説した。

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行政システムのブロックチェーン化
(出典:JBA)

 平井大臣は「総務省が何年か前に検討を始めたよね?」と質問。対して加納氏は「検討されてはいるが、今はトーンダウンしている」と返答した。それを受けて平井大臣は、行政システムのブロックチェーン化の可能性を評価し、「特に医療情報への適用に向いているのでは」との考えを示した。

 最後に加納氏は、JBAが掲げたスローガン「ブロックチェーンを国家戦略に。」の重要性について、「米国や中国でも、ブロックチェーンを国家戦略として位置付けている。大臣が提言を受け入れてもらえると、国内でも非常に盛り上がるのではないかと考えている」とまとめた。

JBAが政府に提言した理由・目的とは?

 JBAでは2019年を「ブロックチェーン元年」とし、その認知度向上を目標に取り組んだ。その結果として、「ブロックチェーン」という言葉が、小学館DIMEのトレンド大賞IT部門賞を受賞した例を挙げた。「訴求し続けることの重要性を実感するとともに、一定の成果を感じた」(加納氏)

 現在、他国でもブロックチェーンを国家戦略として位置付けている動きを受け、JBAでも「ブロックチェーンを国家戦略に。」というスローガンを掲げ、この声が日本政府を始め、多くの人に届いてほしいという思いを持って提案し続けていくという。加納氏は、そこで何をすべきかという具体例として、今回の3つの提言があると説明する。

 ブロックチェーン特区の提言理由については、法的にさまざまな規制やルールがある現状において一気に促進することは難しいことから、新しい取り組みに前向きな自治体とブロックチェーンを活用したモデルケースを作ることを想定している。

 具体的には、東京都23区における事例づくりを開始し、「ブロックチェーンで何が変わるか」を理解してもらえるような取り組みの必要性を説く。「ぜひ積極的な自治体と組んで実現させていきたいと考えている」と、今後の展開を明かした。

 CBDCについては、中国のデジタル人民元を始め、世界各国で中央銀行による発行検討が進められている。日本においても日銀がデジタル日本円のあり方を検討する動きが始まっており、JBAとしてもそこに注目しているという。

 しかし、CBDCが注目される一方で、CBDCを導入することでどのような変化が起こるのかを懸念する声も少なくない。CBDCもまた一気に全国で導入するのは難しいとの見解を示した。

 平井大臣との会談でも触れられたが、1年間の期限付きのCBDCを発行することによる流通促進策によって、指定したブロックチェーン特区内での活用を評価していければと考えているようだ。

 行政システムのブロックチェーン化については「デジタル庁設立の動きを受けて強い追い風が吹き始めている、今がチャンス」と捉えている。「通常の行政システムを統合するためには、あらかじめ設計されていなければ難しい。システム統合に相性が良いブロックチェーンの重要性を、デジタル庁での検討事項の1つと提言した」と説明する。

【次ページ】JBAが提言する3つの要望、その要請理由は?

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