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  • 2021/02/25

金融庁推進の「サステナブルファイナンス」を解説、金融機関と循環経済の関係とは

世界経済はこれまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の「線形経済」から、「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への中長期的な転換が求められている。経済産業省と環境省は2021年1月に「サーキュラーエコノミーにかかわるサステナブルファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」の取りまとめを公表した。また、金融庁も「サステナブルファイナンス有識者会議」を同月主催し、金融機関によるサステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現するための金融)を推進している。本稿では、こうした政府の取り組みを踏まえ、サーキュラーエコノミーとサステナブルファイナンスの今後の展望を解説する。

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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なぜ「サスティナブルファイナンス」が注目されるのか
(Photo/Getty Images)

「循環経済(サーキュラーエコノミー)」とは何か?

 「資源やエネルギー・食料需要の増大」「気候変動といった環境問題の深刻化」が世界的な課題となる中、「循環経済」(以下、サーキュラーエコノミー)が注目を浴びている。

 サーキュラーエコノミーとは、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持して廃棄物の発生を最小化し、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動を指す。これまでの「大量生産・大量消費・大量廃棄」の一方通行の資源の流れであった「線型経済」に代わる考え方だ。

 これまでにも「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」による循環型社会の実現に向けて推進してきた各種の活動は存在していた。サーキュラーエコノミーは、これらの活動を、シェアリングやサブスクリプションといった循環性と収益性を両立する新しいビジネスモデルの広がりを踏まえ、より持続可能な経済活動として捉え直したものだ。

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「線形経済」と「循環経済(サーキュラー・エコノミー)」における資源の流れの違い
(出典:経済産業省・環境省 第1回 サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環ファイナンス研究会の開催資料「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」2020年5月)

経産省と環境省が公表、「サーキュラーエコノミー 6つの重要項目」

 サーキュラーエコノミーに関する取り組みは、短期的には企業収益や消費者便益につながらない場合もある。そのため、企業によるサーキュラーエコノミーへの移行に向けた動きは必ずしも主流とはなっていないのが現状だ。

 サーキュラーエコノミーへの移行を加速させていくためには中長期的に、企業と投資家・金融機関が意識的に持続可能性を重視し、企業価値向上に向けた「質の高い対話」や「エンゲージメント」が重要となっている。

 そこで登場したのが、経済産業省と環境省が公表した「サーキュラーエコノミーにかかわるサステナブルファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」である。

 このガイダンスは、サーキュラーエコノミーに取り組む企業と投資家や金融機関の間での対話やエンゲージメントを促し、適切にファイナンスを供給することで、技術・ビジネスモデルのイノベーションの推進を後押しするための「手引書」として取りまとめられたものだ。

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「サーキュラー・エコノミーにかかわるサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」の策定の趣旨
(出典:経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーにかかわるサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」2021年1月)

 同ガイダンスでは、企業価値の向上につなげる際に着眼すべき開示および対話のポイントを示し、一般的なESG(環境、社会、ガバナンス)情報の開示フレームワークに共通する「リスクと機会」「戦略」「指標と目標」「ガバナンス」「価値観」と「ビジネスモデル」の6つの項目で構成されている。

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サーキュラー・エコノミーを企業価値の向上につなげる際に着眼すべき6つのポイント
(出典:経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーにかかわるサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」2021年1月)

 6項目の中でも、特に「ビジネスモデル」は、サーキュラーエコノミーを中長期的に捉える点で重要だ。これまで企業が社会的責任を果たす上では、環境保全や法規制対応の一環として「コスト」と見られることが多かった。

 今後、企業はサーキュラーエコノミーへの取り組みを「付加価値を生み出す持続的な経済活動」として捉え直すことが求められる。そして、中長期的な新市場創出・獲得につながるストーリーを示し、それを投資家が投資評価を行うという「開示と対話の促進」が重要なポイントとなる。

 ガイダンスは、サーキュラーエコノミーに取り組む企業だけでなく、投資家や金融機関が、投資先企業の企業価値向上と持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る「スチュワードシップ活動」に役立てるためのガイドでもある。また、アセットオーナーと運用機関との対話に活用されることも期待されている。

サーキュラーエコノミーを担う投資家や金融機関の役割とは

 サーキュラーエコノミーに関連するのが「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」である。SDGsが社会へと浸透するにつれて、環境に配慮された製品・サービスを求める市場が拡大する兆しも見られる。その結果、企業に投資する投資家や金融機関の果たす役割も大きくなっている。

 投資家や金融機関の役割の変化は、2006年に国連が提唱した「責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)が契機となった。

 PRIは、署名機関による国際的ネットワークと協力し、責任投資原則の6つの原則を実践に移すこと目的としたもの。投資家や金融機関が短期的な業績動向ばかりに捉われることなく、中長期的な視点から企業行動の変容を促し、経済価値と社会的価値の両立を図ることが重点に置かれている。

 また、2019年には、国連が「責任銀行原則(PRB : Principles for Responsible Banking)」を策定。これにより、金融機関がSDGsや、2020年以降の温室効果ガス排出削減のための新たな国際的な枠組みである「パリ協定」に示されている社会的目標を考慮する重要性が国際的にも共有されるようになった。

 これまで環境分野にかかわる投資対象は「気候変動分野」が中心だった。サーキュラーエコノミーへの移行の必要性が国際的に認識されたことで、環境分野を対象としたインデックスファンドやテーマ型投資ファンドも組成され始めている。

 欧州委員会は現在、環境的にサステナブルな経済活動を分類・定義する基準の検討を進めている。そこでは6つの環境目的の1つとして、サーキュラーエコノミーが位置付けられている。これを受け、今後、欧州市場内の金融市場関係者や大企業に対して、サステナビリティに関する非財務情報の一層の開示要求が義務付けられる見込みである。

 そのため、サーキュラーエコノミーへの移行に当たっては、投資家や金融機関が、中長期的な視点に立って企業を評価することが重要である。金融市場において事業の推進力となる資金を供給・循環させる役割を担うからだ。

【次ページ】サーキュラーエコノミー移行促進する「サステナブルファイナンス」

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