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- 2022/08/26 掲載
サステナブルファイナンスとは何か? 事例や有識者会議報告書を解説
サステナブルファイナンスとは何か?
サステナブルファイナンスとは、「持続可能な経済社会システムの実現に向けた広範な課題に対する意思決定や行動への反映を通じて、経済・産業・社会が望ましい存り方に向けての発展を支える(融資などの)金融メカニズム」を指す。「持続可能な社会を実現するための金融」を意味するのが、サステナブルファイナンスであると言えそうだが、より具体的には何を指しているのか。金融庁では3つの定義を示している。
(1)金融の意思決定にESG要素を統合すること
(2)持続可能な経済・社会・環境開発を促進する金融
(3)持続可能な雇用、退職後の資金調達、技術革新、インフラ建設、気候変動緩和など“長期的な教育、経済、社会、環境問題に取り組む安定した金融システム
サステナブルファイナンスが注目されている背景
サステナブルファイナンスが注目されている背景には気候変動や格差、人口減少などの社会的課題への対応が急務となる中で、社会的課題の解決に資する資金やアドバイスを提供する役割(=サステナブルファイナンス)の重要性が高まっていることがある。特に脱炭素については、世界全体で設備投資や技術開発に官民合わせて巨額の資金が必要とされており、企業の取組みを支える民間金融の機能発揮が欠かせない。
日本では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け日本企業の取組みや強みが適切に評価され、内外の投資資金が円滑に供給されるための環境整備が重要である。
経済産業省では、国内の2030年の脱炭素関連投資の見込みについて、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた投資額として、2030年の単年で約17兆円が最低限とみている。
世界が脱炭素へと向かう中、日本の金融もこの新たな成長分野に取り組んでいくことが必要である。
3,000兆円とも目される世界のESG投資資金を日本に呼び込み、国内外の成長資金がこうした企業の取組みに活用されるよう、金融機関や金融資本市場が適切に機能を発揮しなければならない。
金融庁がサステナブルファイナンスの有識者会議を設置した理由
金融庁では、2020年12月に「サステナブルファイナンス有識者会議」を設置しサステナブルファイナンスを、「持続可能な経済社会システムを支えるインフラ」として位置付け、推進している。そして、金融行政におけるサステナブルファイナンスの推進に向けた諸施策について議論を進めている。サステナブルファイナンス有識者会議では、2021年6月に一次報告書となる「サステナブルファイナンス有識者会議報告書 持続可能な社会を支える金融システムの構築」(第一次報告書)のとりまとめを公表。
2022年7月には、「金融庁サステナブルファイナンス有識者会議 持続可能な新しい社会を切り拓く金融システム」(第二次報告書)を発表している。
第一次報告書においては、サステナブルファイナンスを政策的に推進していく観点から、「企業開示の充実」「市場機能の発揮」「金融機関の投融資先支援とリスク管理」の3つの柱と「横断的取組」を施策を取りまとめている。
「報告書」が示すサステナブルファイナンスを取りまく諸課題
サステナブルファイナンスを取りまく諸課題について、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議の第二次報告書では、以下の4項目で整理をしている。(1)気候変動と脱炭素をめぐる動き
(2)生物多様性と自然資本をめぐる動き
(3)ガバナンスと社会課題をめぐる動き
(4)新しい資本主義
サステナブルファイナンスを取りまく諸課題4つについて、具体的にみていこう。
(1)気候変動と脱炭素をめぐる動きについては、 IPCC2第6次評価報告書では、温室効果ガス排出量を 2025年までにピークアウトさせる必要性が示されるなど、課題の緊急性を強調している。
(2)生物多様性と自然資本をめぐる動きについては、自然資本や生物多様性と事業活動に関する影響や依存、リスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みの構築が求められている点を指摘している
(3)ガバナンスと社会課題をめぐる動きでは、持続可能性に係る課題としては、コーポレートガバナンスや腐敗防止といったガバナンスに関する諸課題、また、人権の尊重や雇用・労働慣行、多様性の尊重といった、多様な内容を包摂する社会的課題が存在する点を示している。
(4)について政府は、さまざまな社会的課題の解決を、「新しい資本主義」の実現によって克服すべき主要な課題と位置付けている。サステナブルファイナンスの推進の取り組みは、持続可能な新しい社会を切り拓く金融システムとしての役割を担う。
【次ページ】「報告書」が示すサステナブルファイナンスのポイント
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