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  • 2021/09/15 掲載

コロナで値上がりする「食品」「電気・ガス」「ガソリン」、いつまで続くのか?

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このところ生活必需品が次々と値上がりしている。背景となっているのは、コロナ後の景気回復を見据えた企業の動きだが、日本経済の低迷によって日本人が買い負けしているという実状もある。急激な物価上昇は一服するとの見方が多いものの、インフレ傾向は今後も続くと見る関係者は多い。私たち日本人はどうすれば生活を防衛できるのだろうか。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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昨年の年末以降、毎月のように値上がりしているガソリン…
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

食品、電気・ガス、ガソリンも値上げ

 電力各社が10月の電気料金を値上げすることが明らかとなった。都市ガス大手4社も値上げの見通しとなっており、電気・ガス料金の値上げは2カ月連続となる。電気料金は基本的に火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)や石炭の価格に連動する。このところ原油価格やLNG価格が高騰していることから、相次いで値上げが決まった。

 実際、電力・ガス各社はコスト増に苦慮している。原油価格はこの1年で1.7倍に値上がりしたほか、LNG価格は地域によっては4倍になっている。石炭価格も同様に上昇しており2倍を超えた。

 エネルギーだけではない。食糧価格も上がっており、食品メーカー各社は厳しい状況に置かれている。コーヒー豆の価格は同じ期間で1.4倍、コットンの価格は1.4倍、パーム油は1.7倍、大豆は1.6倍、砂糖は1.4倍、小麦は1.4倍といった具合で、何もかも値段が上がっているという状況だ。

 たとえば、コーヒー製品を製造するメーカーは、コーヒー豆を原料にさまざまな加工を施すが、それでもコーヒーという商品は限りなく原材料に近い形で消費者に提供される。このため製品の付加価値に占める原価の比率が高く、原材料費の高騰はメーカーの利益を直撃する。各社は秋にも2割の値上げを実施する予定だ。

 コーヒーは以前から価格高騰が続いており、メーカーは品質の維持に躍起になっていたが、これも限界に達しつつある。同じ価格帯の製品を打ち止めにし、少し品質を下げた新しい製品を後継として提供するケースが増えており、同一の商品を継続できなくなりつつある。

 大豆の価格高騰によって8月からすでに食用油が値上がりしているほか、10月からマーガリンなどの最大で10%以上値上げされる。同様に小麦粉の価格上昇を受けて、パスタや蕎麦の値上げを表明したメーカーも多い。当然だが、ガソリン価格は原油価格に連動するので、昨年の年末以降、毎月のように値上がりしている状況だ。

 よく知られているように、日本では価格を据え置いて内容量を減らす、いわゆるステルス値上げが横行しており、一見すると値上げしていないように思えることもあるが、これは立派な値上げである。そして、とうとうステルス値上げが限界に達したことから、一部のメーカーが本格的に値上げを決断している状況である。

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コロナで食品、電気・ガス、ガソリンの価格は上昇し、家計は苦しくなるばかり……物価上昇はいつまで続くのか?
(Photo/Getty Images)
 

世界はブロック経済に向けて動き始めている

 では、一連の物価上昇は一時的なものなのだろうか。ここまで急激な1次産品の値上がりは、一服する可能性が高いが、長期的な傾向としては今後も価格上昇が続く可能性が高いと筆者は見ている。その理由は、コロナ危機をきっかけとした世界経済の構造転換である。

 現時点で1次産品の価格が上昇しているのは、コロナ後の景気回復に備え、各企業が原材料の確保を強化しており、資材の争奪戦が起こっているからである。コロナ危機で原材料の生産や輸送がタイトになっていたところに、各社から注文が殺到したので、価格が急上昇したという流れである。

 では、コロナ危機が一段落すれば、完全に元の状態に戻るのかというとそうではないだろう。理由は、コロナ危機をきっかけに、従来のサプライチェーンを見直す動きが活発になっているからである。

 これまでの時代は、1円でも安い価格を求めて、企業は全世界に広範囲なサプライチェーンを構築していた。だが、コロナ危機の発生によって、こうした広範囲なサプライチェーンは見直しを余儀なくされている。


 各企業は、大きすぎるサプライチェーンをリスクと見なすようになっており、調達範囲を近隣に絞る傾向が顕著となっている。このところ米国と中国の対立で、双方の貿易が減少し、中国はアジア地域との取引を強化しているが、この動きは政治的な対立だけが背景ではない。世界経済全体が、近隣調達比率を増やしており、経済のブロック化が進んでおり、米中対立もその流れの一部と見なすことができる。

 今後はアジアで消費されるものはアジア地域で調達される可能性が高くなるし、日本においても国内生産できるものは国内生産する傾向が強くなるだろう。これはモノの安定供給という点ではプラスに作用するが、物価という点では確実に上昇圧力となる。つまりモノの価格は今後も継続的に高くなる可能性が高いのだ。

【次ページ】今後もジワジワ物価上昇が続く理由

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