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  • 2023/12/09 掲載

NVIDIA Jetsonとは何か?ロボティクス分野でも飛躍、NVIDIAが変える「エッジAI」市場のゆくえ

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生成AI関連で大躍進を遂げているNVIDIAだが、ロボティクス分野でも存在感を高めている。エッジAIデバイス「NVIDIA Jetson」を活用したロボット開発の取り組みが増加しているからだ。多くのロボティクス企業が、NVIDIAによって開発された「NVIDIA Jetson」を活用し、無人走行する自動車や船舶を開発、それらが現実世界で実用化され始めている。NVIDIA Jetsonとはどのようなデバイスか、ロボティクス分野での現状を踏まえて解説しよう。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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NVIDIAが提供するエッジAIデバイス「Jetson」を活用したロボット開発が増加中
(出典:NVIDIA公式サイト

ロボティクス分野でもNVIDIAが注目される理由

 生成AI需要の急速な高まりにより、同市場での大規模言語モデル開発競争が加速、AI開発・運用に必要なGPUを提供するNVIDIAの売上は記録を更新中だ。

 OpenAI、AnthropicInflection AIHugging Faceなどの生成AI分野の注目スタートアップに加え、イーロン・マスク氏が設立したxAI、さらにはメタ、マイクロソフト、グーグルなどのテック大手がNVIDIAの高性能GPUをこぞって購入しているためだ。すでにNVIDIAの高性能GPUは、2024年分まで売り切れたとの報道もある。

 そのため、NVIDIAは生成AI文脈で注目される存在となっているが、一方でロボティクス分野での存在感の高まりも認識されつつある。NVIDIAが提供するエッジAIデバイス「NVIDIA Jetson」を活用したロボット開発の取り組みが増加しているからだ。

 エッジコンピューティングとは、クラウドのようにネットワークを介することなく、プロセシング能力やストレージをネットワークのエッジ(端末)に持ち、ユーザーに近いエンドポイントでデータ収集や処理を行うアプローチ。自動運転車やヘルスケア分野など、高いパフォーマンスや安全性に配慮が求められる環境などで活用が進んでいる。

NVIDIA Jetsonとは何か?

 NVIDIA Jetsonとは、エッジコンピューティング環境でAIを駆動する「エッジAI」の能力を有するデバイス群を含めた開発者キットのこと。エッジAIを搭載した小型コンピューターのJetson モジュール、ソフトウェアを高速化するNVIDIA JetPack SDK、センサー、サービス、開発をスピードアップする製品などから構成されており、いわゆる組み込みコンピューターともいえる。この開発者キットが自律マシンを開発するスタートアップでの導入が増えているのだ。

 たとえば、シリコンバレーを拠点とするSaildroneは、NVIDIA Jetsonを活用して無人水上車両(USV)を開発、科学、漁業、気象予報、海洋地図作成、海上保安などを対象とする費用対効果の高いデータ収集システムを提供している。

 最近では、特に海洋と湖の環境研究分野で無人データ収集アプローチへの関心が高まっており、Saildroneの技術を活用する大学や研究機関が増えているという。

 ハワイ大学マノア校は、海洋酸性化が気候変動に与える影響を調査する研究プロジェクトを発足、そのデータ収集に、Saildroneの無人水上車両3台を利用するという。ハワイ、マウイ、オアフ、カウアイの島々周辺で海洋データを収集し、海洋の健康状態を調べる。同ミッションは6カ月かけて実施される予定だ。

 またSaildroneは最近、海洋のマッピングを目指すSeabed 2030とも提携するなど大規模プロジェクトでも同社の無人水上車両が導入されつつある。Seabed 2030は、日本財団と海底地形図を作成する世界唯一の公的団体GEBCOによる、世界の海底を2030年までにマッピングするという大掛かりなプロジェクトだ。

 Saildroneは、2021年10月に1億ドルを調達しており、累計調達額は1億9,000万ドルに上る。

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この事業規模でとてつもない成長を遂げているNVIDIA
(Photo:Michael Vi / Shutterstock.com)

NVIDIAのエッジAIを活用した無人走行トラクター

 NVIDIA Jetsonは、陸上でも活用されている。

 シリコンバレー発のMonarch Tractorは、NVIDIA Jetsonを活用して、スマートトラクターの開発を進めており、農業の変革を目指している。

 同社の主力モデルとなるファウンダーシリーズMK-Vトラクターは、6つのNVIDIA Jetson Xavier NX SOM(システムオンモジュール)を利用しており、実質的にスーパーコンピュータを搭載したロボットであるという。

 Monarchは、NVIDIA Jetsonを活用して、カメラのみで農場を安全に移動できるトラクターを開発。GPS信号が届かない場合でも、エッジAIがカメラの映像を解析し、安全に移動できるルートを導き出す仕組みだ。これにより、運転手不要の完全自動運転トラクターを実現した。

 2018年設立で、これまでに1億1,000万ドルを調達した同社。創業メンバーには、シリコンバレーのEVスタートアップに所属していた人物、またアマゾン傘下の自動運転車開発企業Zooxの元社員などが含まれる。同社CEOは、テスラのギガファクトリーの責任者だったマーク・シュワガー氏、またCTOはカーネギーメロン大学のロボティクス博士号を持つザカリー・オモハンドロ氏が務める。

 同社のトラクターは、自動運転できるだけでなく、作物データを常時収集しており、作物の成長段階を分析し、収穫予想を行うなどの能力も備えている。 【次ページ】NVIDIA、ロボット開発での生成AI活用促進へ

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