- 2026/08/04 06:50 掲載
物流は崩壊寸前…国交省・経産省・農水省が明かした「危機の正体」と「改革の中身」
1993年早稲田大学第一文学部卒業後、ぎょうせい入社。地方行政をテーマとした月刊誌の編集者として、IT政策や産業振興、防災、技術開発、まちおこし、医療/福祉などのテーマを中心に携わる。2001年に日本能率協会マネジメントセンター入社。国際経済や生産技術、人材育成、電子政府・自治体などをテーマとした書籍やムックを企画・編集。2004年、IDG Japan入社。月刊「CIO Magazine」の編集者として、企業の経営とITとの連携を主眼に活動。リスクマネジメント、コンプライアンス、セキュリティ、クラウドコンピューティング等をテーマに、紙媒体とWeb、イベントを複合した企画を数多く展開。2007年より同誌副編集長。2010年8月、タマク設立、代表取締役に就任。エンタープライズIT、地方行政、企業経営、流通業、医療などを中心フィールドに、出版媒体やインターネット媒体等での執筆/編集/企画を行っている。
【国交省】相次ぐ法改正、2024年問題で物流はどう変わった?
最初に登壇したのは、国土交通省 物流・自動車局 物流政策課 課長の髙田 龍氏。同氏は冒頭、2024年問題をきっかけに多くの制度改正が進んでおり、2024年には改正物流効率化法が公布され、2026年4月に全面施行となった流れを紹介した。物流効率化法では、荷主企業などに対する中期計画の作成や年1回の定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任義務化などがスタート。また、議員立法によるトラック適正化2法(貨物自動車運送事業法および適正化体制整備推進法の総称)も2025年に公布され、委託日数の制限や違法な運送に関わる荷主への取り締まりも始まった。
こうした中、労働力不足への対応に向けて、担い手の確保・育成、物流DXの推進、モーダルシフト、荷待ち・荷役時間の削減など多岐にわたる施策を総動員する必要がある。このうちモーダルシフトに関して髙田氏は、最新事情を紹介。
「航空旅客機の空きスペース活用やダブル連結トラックの導入など『新モーダルシフト』と呼ぶ取り組みも進められています。ダブル連結トラックであれば、ドライバーの数で見れば半分で済みます」(髙田氏)
【国交省】最大25%輸送力不足も…「中継輸送」支援を拡充
こうした施策を経てなお残る課題が長距離運転に伴うドライバーの負担である。この解決策として2026年の通常国会で成立したのが、中継輸送を促進するための物流効率化法の改正だ。複数のトラック事業者が共同で計画を策定し、国土交通大臣の認定を受けることで、課税特例や財政投融資による出融資、運行経費の支援、行政手続きの一括化といった支援メニューを活用できる。
「中継輸送をやってくださいというよりは、やりたいという方々に対して、より進めるような選択肢を提供しています。さらに、中継輸送施設が産業振興や雇用創出、災害対応の観点からも地域にとって重要な存在であるため、地方公共団体との対話の必要性も重要です」(髙田氏)
続いて髙田氏は、2026年3月閣議決定の総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)を解説。3省合同の有識者検討会を計9回開催して策定されたこの大綱は、(1)徹底的な物流効率化、(2)商慣行の見直しや産業構造の転換、(3)物流人材の地位向上と労働環境改善、(4)物流標準化とDXの推進、(5)サプライチェーンの高度化・強靱化という5本柱で構成される。
2030年度の輸送力不足は需要の置き方次第で7%から最大25%の幅で生じるとされており、大綱の施策を着実に進めることでこの不足分を埋めていく方針だ。髙田氏は「物流を単なるコストではなく、新たな価値を創造するサービスとして捉え直して、より魅力ある産業へと転換させていきましょう」と締めくくった。
【経産省】2030年「数兆円の経済損失」の可能性
続いて登壇したのは、前 経済産業省 商務・サービスグループ 流通政策課 課長 兼 物流企画室 室長の平林 孝之氏だ。平林氏は2024年問題と物流コストインフレという2つの課題を軸に「フィジカルインターネット」の必要性を論じた。経済産業省が2026年2月に実施した荷主向けアンケートでは、全体の約1割の荷主がドライバーの時間外労働の制限を理由に貨物輸送を断られた経験があると回答した。一方、帝国データバンクの調査によれば2025年の物流業における人手不足倒産は過去最多となり、全業種中ワースト2位。トラック運送業の価格転嫁率は全業種の中で最下位であり、前回調査から悪化しているという。
平林氏は「現金はあるのに人手不足が理由で倒産する事業者の事例をはじめ、価格転嫁が行われずに賃上げの原資を確保できない、こういった状況が垣間見えます」と厳しい実態を指摘した。
もう1つの課題が物流コストの上昇だ。道路貨物輸送のサービス価格は2010年代後半にバブル期の水準を超え、宅配便に至っては2017年頃から急騰している。このまま放置すれば2030年時点で数兆円規模の経済損失が生じ得ると指摘されており、物流能力が産業競争力を左右する時代に入っているという。
「振り返れば、2000年代までの運賃圧縮による低コスト化が労働環境の悪化とドライバー減少を招いてきました。今後は効率化によってコストを圧縮しつつ、賃上げでドライバーの担い手を増やす方向への転換が必要になります」(平林氏) 【次ページ】【経産省】解決のカギに挙げた「フィジカルインターネット」とは
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