• 2026/03/16 掲載

スゴイはずが…5社比較で見えた「人工ダイヤモンド」の惨状…逆転への「勝機2つ」とは

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日米関税合意に基づく米国への投資で第1弾に選ばれた人工ダイヤモンド。宝飾品向けの値下がりが続く一方、EVや半導体の熱設計を支える産業素材として存在感を増す。だが、イーディーピー、旭ダイヤモンド工業、住石ホールディングス、住友電工、中村超硬の関連5社の決算を並べてみると、産業用の需要も思うように伸びていないことが分かる。ただ、市場は3つの大きな転換点を迎えている。特に宝飾用のコモディティ化によって市場構造は大きく変わり、企業によっては期待との乖離も生まれている。それでも日本企業にもチャンスはまだある。そのカギを握るのが、2つの勝機だ。
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人工ダイヤモンド銘柄5社の決算を比較して人工ダイヤモンド事業の勝機を読み解く
後ほど詳しく解説します

宝石から産業用へ、評価高まる「人工ダイヤ」

 人工ダイヤモンドは、宝飾向けの「ラボグローンダイヤ(LGD)」と、工具・基板などの産業用途でまったく違う相場を持つ。

 宝飾は供給増と流通の価格競争が先行し、値ごろ感が広がるほど「価格が下がり続ける」商品だ。実際、デビアスのLGDブランド「Lightbox」は宝飾市場における人工ダイヤの大幅な値崩れを主な原因に2025年5月、撤退を発表している。

 一方、製造業の現場で使われる人工ダイヤは、硬さ・耐摩耗に加え、放熱や電気特性といった「機能」で評価されている。

 住友電工は世界で初めて、大型合成ダイヤモンド単結晶の工業化に成功。「スミクリスタル」と名付けられたこの人工ダイヤモンドは工業用素材として使われ、熱伝導率の高さや耐摩耗性などを強みとしている。

 自動車の電動化や半導体の高性能化が進むほど、熱を逃がす材料や高耐圧材料の選択肢は広がり、ここにダイヤが入り込む余地が生まれる。

 ただし「需要が伸びる=儲かる」ではない。宝飾の値下がりが産業用途の投資判断にも影を落とし、設備投資や在庫の波が企業業績を揺らすからだ。

 ここからは、人工ダイヤモンド関連企業より、旭ダイヤモンド工業、住石ホールディングス、住友電工、中村超硬の5社の決算情報を読み解きつつ、勝機をひも解いていく。

【5社比較】“明暗”分かれる決算結果…

 各社の2026年3月期第3四半期決算を見てみよう。

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人工ダイヤモンド銘柄の決算を比較
(本文をもとにAI(Gemini/Nano Banana)を使用して生成)

■イーディーピー
 イーディーピー(EDP)は売上高2億5,300万円(前年同期比61.3%減)、営業損失9億5,400万円(前年同期は7億4,100万円の赤字)、純損失20億1,100万円(同7億2,500万円の赤字)だった。

 EDPは単結晶ダイヤモンドの研究用基板やヒートシンク、種結晶を展開する企業だが、足元では業績悪化が続く。背景には、かつて世界的シェアを持っていたLGD用種結晶ビジネスでインド勢の低価格攻勢を受け、競争力を失ったことがある。

 会社開示では、減損損失10億6,571万円の計上などにより純損失は20億円を超えた。減損には在庫評価の見直しだけでなく、将来の収益性低下を見込んだ設備の減損も含まれているとみられる。海外子会社については、SFD Indiaについては輸入ライセンス取得後に営業開始へ移る一方、SFD Antwerpは閉鎖を含む抜本改革を進めるとしている。

■旭ダイヤモンド工業
 工業用ダイヤモンドを用いた工具の最大手メーカーである旭ダイヤモンド工業は売上高が310億2,100万円(前年同期比0.4%減)、営業利益が18億1,000万円(同14.2%減)だった。一方、純利益は前年同期比46.0%増の31億5,100万円となった。

 電子・半導体分野でAI関連需要は堅調だった一方、パワー半導体用工具の需要低迷が大きく影響。輸送機器業界では、航空機需要の増加に伴い関連工具が伸長したものの、米国の通商政策を巡る不透明感やEV市場の調整などを背景に自動車生産の伸び悩みが影響した、と説明している。

■住石ホールディングス
 住石ホールディングスは石炭が主力だが、人工ダイヤモンドをはじめとした新素材事業を持つ。売上高は82億8,600万円(前年同期比12.5%増)、営業利益1億8,300万円(前年同期は1,300万円の黒字)、経常利益14億4,400万円(前年同期比38.9%減)、純利益13億4,600万円(41.6%減)だった。受取配当金が大きく経常利益・純利益への反動が高かったため、ただ「減益」とだけ書くと実態をやや見誤る。

 なお、住石ホールディングス全体をそのまま人工ダイヤ事業の成績とみなすのは注意が必要だ。その上で、新素材事業部門の売上高は、多結晶ダイヤモンドの国内顧客での在庫調整と海外販売の伸び悩みなどが影響し、2億200万円(4.2%減)となった。

 一方、工業用ダイヤモンド砥粒や関連工具の製造・販売・輸出入を行う専門メーカー・商社であるトラストウェルが持分法適用会社に加わるなどで、セグメント利益は6,700万円(14.2%増)と増益だった。これは必ずしも自社の技術力向上というより、外部企業の収益を取り込む形で利益が増えた側面がある。

■住友電気工業
 住友電工は世界的な非鉄金属メーカーとして、5社の中では規模が突出している。売上高3兆6,869億円(7.1%増)、営業利益2,710億4,500万円(31.0%増)と好調だった。

 同社は「スミクリスタル」を工業用素材として展開し、ダイヤモンド放熱基板も訴求している。ただ人工ダイヤモンドは同社の事業ポートフォリオの一部に過ぎない。現在の業績を押し上げている主因は電力インフラ向けケーブルや光通信関連事業であり、ダイヤモンド材料は超硬工具や研究用途を含む素材事業の一部として位置づけられている。

■中村超硬
 中村超硬はダイヤモンドワイヤを主力の1つとする。売上高21億7,300万円(2.7%増)、営業損失4,600万円(前年同期は100万円の黒字)だった。ダイヤモンドワイヤの販売は、半導体・パワー半導体市況低迷により低調だった。もともと同社のダイヤモンドワイヤは太陽光向けが主力だったが、中国勢との価格競争で市場が縮小しており、現在は半導体向けなど新用途開拓の途上にある。

 なお、純利益が1億8,200万円(前年同期は1,300万円の赤字)と大幅に回復したのは、江蘇三超社との国際仲裁に関する特別利益計上の影響であり、本業回復とは分けてみる必要がある。ただ、この仲裁決着により長年の係争リスクが解消された点は、同社の経営の不透明感を取り除いたという意味では一定の前進と言える。 【次ページ】日本企業の勝機は「大きく2つ」
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