• 2026/06/10 掲載

ウソだろ…岐阜の小さな町工場に「AI社員」爆誕、Claude等でアプリ量産「神事例4選」

連載:勝てる工場のつくり方~田中工業編~

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岐阜県 海津市にある小さな町工場が、生成AIを駆使して「あったらいいな」を次々と形にしている。金属部品加工を手掛ける田中工業が実践するのは、ChatGPTやClaude Codeなど複数のAIを使い分けながら現場に役立つアプリを自作するという取り組みだ。傷を自動検出するツールから、受注から請求書発行までを一元管理するアプリ、毎朝メールを送ってくる「AI社員」まで、その中身は幅広い。そこで今回、同社 取締役 田中 慎一氏に話を聞き、現場発で生まれた4つのアプリ開発事例を通じて、町工場における生成AI活用の実像に迫る。
構成:編集部 井内 亨   執筆:ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

ビジネスライター 和地 慎太郎(わち・しんたろう)

東北大学大学院応用化学専攻修了。大手製造業を経て自治体に勤務し、大学での産学連携業務も経験。現在はビジネス分野を中心に取材・執筆。導入事例、記事広告、技術紹介、セミナー記事、SEO記事、法令解説記事などのほか、企業向けコンテンツ制作にも携わる。理系・技術職出身で、環境分野(脱炭素・廃棄物・水質)に強み。脱炭素アドバイザー(環境省認定)、公害防止管理者。著書に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)。

  撮影:大参 久人
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Claudeなど複数のAIモデルを使い分けながら、「あったらいいな」と思うツールを開発している
(田中工業提供)

【事例1】3つのAIで「打痕・傷検出アプリ」開発

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【画像付き記事全文はこちら】打痕・傷検出アプリの画面。赤枠で傷の箇所を示してくれる
(田中工業提供)

 「打痕・傷検出アプリ」は、スマートフォンのカメラを製品にかざすと、AIが表面の傷や打痕を自動で検出しマーキングするものだ。「サビがあります」「三角形の傷があるようです」といった分析結果と合わせて出力される。

 製造現場では、機械で制御できる工程と、職人が手作業で行う工程が混在する。特にネジ切りなどの作業は人の手に依存する部分も多く、わずかなばらつきが不良につながる可能性がある。

 最終工程で外観検査を行うものの、数百にのぼる加工箇所をすべて人の目で確認するのは現実的ではない。「ネジ穴の深さが少し足りないだけで、客先まで出向いて直しに行くこともあります」と田中氏は話す。

 田中氏はこのアプリの作成にGoogle AI Studioを用いた。「スマホで撮った金属部品の画像から、打痕や傷を検出するアプリを作ってほしい」と入力するだけで、アプリの骨格が生成される。

 その後の調整では、ChatGPTで不具合の原因を探り、Claude Codeでコードを補完するなど、AIを使い分けながら進めた。生成したコードをGoogle AI Studioに反映することで、精度改善を図ったという。

 実際にアプリを動かすと、傷や打痕を検出し、結果をリアルタイムで表示することが確認できた。一方で、検出位置のずれなど精度には課題も残る。実運用には至っていないものの、プロトタイプとしては十分に機能したようだ。

 「こんなのがあったらいいな、が簡単に形にできました」と田中氏は語る。試作したアプリは、将来的に外部開発を行う際のベースとしても活用できる見込みである。

【事例2】職人が言葉で「3Dモデル」を作れる環境に

 「3Dモデル作成ツール」は、言葉で指示するだけで、簡易的な3Dモデルを生成する仕組みである。製造業では、加工前の形状確認やプログラム作成のために3Dモデルが使われるが、専用ソフトの操作には専門知識が求められ、現場で扱える人材は限られていた。

 田中氏は、Claude Codeを指示役として活用し、無料の3DモデリングソフトであるBlenderを操作する環境を構築した。両者をつなぐ仕組みとして、MCP(Model Context Protocol)も組み合わせている。これにより、コードを書かずに言葉で指示するだけでBlenderを操作できるようになった。

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田中工業 取締役 田中 慎一氏

 環境構築には一定の手間がかかるものの、各ツールの仕様をClaudeに読み込ませながら対応したという。環境が整えば、「〇〇を作って」と指示を出すだけでシンプルな3Dモデルが生成される。さらに、Hyper 3Dというツールを組み合わせれば、よりリアルなモデルの作成も可能になる。

 田中氏は実際に現場で使用している旋盤の3Dモデルを試作した。現時点では精度や表現力に課題は残るが、AIの進化により複雑な形状にも対応していくと見ている。「話し言葉で指示するだけでモデリングができる点に、製造業の未来を変える可能性を感じます」と田中氏は語る。

 将来的にはモーションキャプチャと組み合わせることで、職人の動きをデータとして蓄積する活用も視野に入れる。暗黙知の形式化につながれば、技術承継の課題解決にも寄与できるかもしれない。 【次ページ】【事例3】作業手順を動画で解説「多言語対応マニュアル」
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