• 2026/06/08 掲載

「AIの電気、地球じゃ足りない」イーロンもベゾスも本気“宇宙でのAI競争”が始まった

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「AIを動かす電力が足りないなら、発電所ごと宇宙へ持っていけばいい」──。そんなSFすぎる構想が今、グーグル、スペースX、ブルーオリジンらの参入で一気に現実味を帯びている。生成AIの利用が広がる裏で、データセンターは電力不足や水資源・送電網の制約で限界寸前。そこで浮上しているのが、宇宙空間で太陽光を浴びながら発電する「宇宙データセンター」だ。イーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏らが本気で取り組む計画の全貌と、実現のカギを握るこれまで“夢物語”扱いされてきた技術とは何か。
執筆:サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発) 秋山 文野

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発) 秋山 文野

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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イーロン・マスク氏、ジェフ・べゾス氏らも参戦…“次のAI競争”は始まっている
(画像:本文をもとにAI(Gemini/Nano Banana)を使用して生成)

【もう限界か】AI需要爆伸びの裏で急浮上した問題点

 急増するAIデータセンターの需要は、世界各地で電力、水資源、用地取得をめぐる摩擦を引き起こしている。米国のシンクタンク「世界資源研究所」によれば、AIとデータセンターの普及に伴う電力需要の爆発的増加は、供給網(グリッド)の安定性や一般家庭の電気料金にも深刻な影響を与え始めたという。

 また、S&Pグローバルは、米国のデータセンターによる電力需要について、2025年の61.8ギガワットから、2026年には75.8ギガワット、2030年には134.4ギガワットへと拡大すると予測している。

 新しいデータセンターを稼働させるためには送電線や変電所の整備が欠かせない。だが、その建設費用やデータセンターをグリッドに接続するための作業遅延は、電気料金の上昇を招き、さらに膨大な水消費も社会全体の負担を押し上げている。

 こうした負担は米国に限った話ではなく、欧州や日本でも同様に起きている。そこでマイクロソフトやグーグルなど大手テック企業は、原子力発電や大規模な蓄電池システムへの投資を加速させるなど自衛策を講じている。「宇宙へデータセンターを移行して地上との摩擦を避けよう」という考え方もこの流れに位置づけることができる。

 では、地上の電力争奪戦から抜け出そうとする巨大テックは今、宇宙でどのような勝ち筋を描いているのか。各社の計画を整理すると、「軌道上のデータセンター」をめぐる、次のAI競争が見えてくる。

【5社比較】グーグル、スペースXら“異次元すぎる”宇宙構想

 まず、グーグルは独自のAIチップ「TPU」を搭載し、太陽光発電機能を備えた多数の小型衛星を編隊飛行(フォーメーションフライト)でクラスタ化してデータセンター化するProject Suncatcherという構想を持つ。宇宙空間で直接AIの演算を行い、光通信(レーザー通信)で高速ネットワークを構築する。TPUは軌道上で5年間受けるのに相当する放射線試験に耐えたといい、2027年ごろに試験衛星の打ち上げを予定している。

 イーロン・マスク氏が率いるスペースXの軌道上データセンター構想は、自社のAI企業「xAI」の買収を経て推進中。1月末に連邦通信委員会(FCC)に提出された資料によれば、100万機の衛星を高度500~2000キロメートルの地球低軌道に配置し、高効率の発電とデータ処理、衛星間光通信でのネットワーク化を行う。今後世界のデータセンター需要が地上の電力需要の4%を消費するという予測を前提に宇宙へデータセンターを移行し、Starlink通信衛星網と接続する方向性だ。

 アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジンも2026年3月に、「Project Sunrise」という軌道上に5万機規模の「宇宙データセンター」を構築する計画をFCCに提出した。先行して提出している5000機級の通信衛星コンステレーション「TeraWave」とも接続し、軌道上データセンターと通信網を一体的に整備する計画だ

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【画像付き記事全文はこちら】
大型ロケット「New Glenn」の1段再使用を実現したブルーオリジンも独自の軌道上データセンター計画をFCCに申請
(出典:ブルーオリジン)

 スタークラウドは、宇宙での大規模AIトレーニング(学習)を目的としたデータセンターを展開するスタートアップ企業。2025年にNvidia H100を搭載した試験衛星「Starcloud-1」を打ち上げた。宇宙の真空と低温を活かした「受動冷却」により、地上では不可能な効率での冷却を目指している。

 カウボーイスペースの「Galactic Brain」構想は、「太陽光をシリコン(チップ)の隣に置く」というコンセプトで太陽光発電とAI演算ユニットを一体化した衛星を構築する。ロケットの上段をまるごとデータセンター衛星として利用するという考え方だが、技術的ハードルはまだ高い。 【次ページ】“救世主”なるか?「宇宙太陽光発電」のスゴさと致命的弱点
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