• 2026/04/15 掲載

ヤバすぎ…米国の4割が「経済崩壊」覚悟、景気後退が現実になる「原油○○ドルの壁」(2/2)

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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即効薬はトランプ大統領が“TACOる”こと?

 ところが、燃料価格を急落させる「即効薬」は、あった。それは、米軍最高司令官であるトランプ大統領が「TACOる」、すなわち「トランプがいつも尻込みする(Trump Always Chickens Out)」ようになることである。

 まず、トランプ氏は3月21日に、イランがホルムズ海峡の封鎖を48時間以内に解除しなければ、同国の発電所を「壊滅させる」と警告。これに対してイラン側も3月22日に、米軍がイランの発電所を攻撃すれば、「ホルムズ海峡を完全に封鎖し、イスラエルや米軍基地のある中東各国の発電所などを攻撃する」と反撃。全面戦争の可能性で原油価格は再び高騰し、世界経済をどん底に引きずり込む最悪のシナリオが現実化するように思われた。

 ところがトランプ大統領は3月23日に、「イラン側と良好かつ生産的な対話が行われている」として、5日間の攻撃延期を指示したと明らかにした。英石油投資商品ブローカーであるPVMオイル・アソシエーツのアナリストは、「トランプ氏が市場の力に屈したことを示す明確なサインだ」と指摘した。

 米市場がオープンする前を狙った早朝のトランプ大統領発言の効果は、てきめんであった。前週末に1バレル当たり114ドルを超えていた北海ブレント原油価格は一時95ドルを割り込み、同じくバレル当たり101ドルを超えていた米テキサス産のウエストテキサス・インターミディエート(WTI)も一時、86ドルを下回った。

 戦争で中東の多くのエネルギー施設が大打撃を受け、生産回復には相当な時間がかかることが広く理解されているにもかかわらず、停戦の可能性だけで油価は顕著に下がった。

 原油備蓄の協調放出やロシア産・イラン産原油に対する制裁解除、さらにガソリン補助金など、どのような大型施策よりも、トランプ大統領が市場に屈してTACOることこそが、インパクトがより大きいことが証明されたわけだ。

 同様の現象は、3月9日、4月1日、そして4月8日にも起こっている。紛争の激化や長期化により、1バレル当たり100ドルを超えていたブレント原油価格は、トランプ大統領が「イランにおける作戦はほぼ完了した」「停戦でホルムズ海峡が開く」「イランとの停戦に合意した」などと述べると、それぞれ一挙に80~90ドル台まで下げた

米国の“景気後退”が起きる「原油価格のライン」とは

 この先に、イラン紛争がどのような形で終結するかは定かではない。トランプ大統領は一時的に(そしておそらく意図的に)中東地域における緊張を和らげる発言をしたものの、イランの対応次第では再び戦争をエスカレートさせる可能性がある。最悪の結末の可能性が去ったわけではない。

 そのため、多くの米エコノミストたちは、原油価格高騰により米国が経済後退や、インフレと不景気が同時進行するスタグフレーションに陥る可能性を指摘している。

 また、英調査企業ユーガブが3月18日に発表した最新の世論調査では、米国民の4割以上が今後10年以内に米国が「完全な経済崩壊」に向かうと考えていることが明らかになった。

 しかし、リセッション(景気後退)やスタグフレーションはそう簡単に起こるものではないという点で、専門家は一致している。世界最大の産油国である米国は、日本などと比較して比較的オイルショックに強いからだ。

 米金融大手ウェルズファーゴ銀行のアナリストたちは、「原油価格が数カ月間にわたり1バレル当たり130ドルを超えるようなことがあれば、ガソリン価格が高止まりし、米国人が消費を控え、企業が従業員の解雇を始めることで景気後退に陥る可能性がある」と分析。また、米資産運用大手バンガードのアナリストたちも、「米国がリセッションに突入するには原油価格が長期にわたり150ドルを超える必要がある」との見方を示している。

 加えて、原油価格高騰の直接的な原因である保険会社のタンカーなど船舶保険の引き受け拒否は、あくまでもイランが機雷敷設やミサイル・ドローンなどでホルムズ海峡を通過する船舶を攻撃する「可能性」に基づくもので、実際には海峡の安全な通航がいまだ可能な状態である。ホルムズ海峡の「封鎖」による世界のパニックは、イランの認知戦が成功しているのであり、実際には船舶保険引き受けさえ再開されれば、いつでも海峡の通過が始められるとされる。

 すでに戦力の大部分を削がれているイランは、周辺国の原油・天然ガス精製施設や第三国のタンカーに対する反復的かつ飽和的な攻撃を行える能力は著しく低下しており、原油価格が130~150ドルを超えて長期間にわたり高止まりする可能性は比較的低いと言えるのではないだろうか。

 事実、米金融大手JPモルガンのウェブサイトブルームバーグロイターの記事などは、「スタグフレーションの心配は、現時点では最悪のケースを予測したテールリスク(実際に発生すると甚大な損失をもたらす壊滅的なイベントだが発生確率が非常に低い)であり、イラン作戦においてそこまで事態は悪化しない可能性がある」とする一部の米エコノミストたちの見解を伝えている。

 戦争がコントロールできなくなってしまえば米国の景気後退は起こり得るが、作戦が1~2カ月程度であればショックが一時的なものにとどまるとの見方が、現在のところは優勢だ。

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