- 2026/04/03 掲載
中東情勢が「ANA・JAL」を襲う…燃油高だけじゃない、今夏に来る「最悪シナリオ」とは
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ダイヤモンド・オンラインでの連載、ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
航空運賃が決まる仕組み
航空運賃は、燃油サーチャージだけで決まるわけではない。世界の多くの航空会社には「レベニューマネジメント(収益管理)」という専門部署が存在し、AIを用いた高度なダイナミックプライシング(変動料金制)を採用している。このシステムは、需要予測や競合他社の動向、そして燃料費などのコスト変動をリアルタイムで反映させる。たとえ燃油サーチャージが制度上のタイムラグで据え置かれていても、燃料コストの上昇分は「基本運賃」そのものの引き上げという形で即座に転嫁される。
つまり、サーチャージの改定を待たずとも、原油高に連動してチケット価格の下限が底上げされる仕組みが、社内のレベニューマネジメントによって緻密にコントロールされているのである。
価格上昇が激しい「3つの路線」
2026年3月時点で、ダイナミックプライシングによる価格上昇が特に顕著なのは、以下の3つのカテゴリーに分類される路線である。1、欧州直行便:回避ルートによるコスト直撃
中東空域の閉鎖により、日本発の欧州便は北回り(北極圏)はさほど変わらないが、欧州発日本便は多くが南回り(南アジア)への完全なシフトを余儀なくされている。これにより、飛行時間の延伸(1~2時間)と、それに伴う燃料消費の増加がレベニューマネジメントのアルゴリズムに直接反映されている。
ロンドン、パリ、フランクフルト線などでは、通常期のエコノミークラス運賃が、サーチャージ改定前にもかかわらず前年同期比で20~30%以上底上げされるケースが散見される。
2、中東経由便の代替需要
ドバイやドーハといった中東ハブを拠点とするキャリアが一部減便やルート変更を行ったことで、中東を経由しない直行便や、東南アジア経由便に需要が集中している。
供給の減少と需要の集中が同時に発生し、代替ルートのチケット価格が異常に高騰。エコノミークラスで片道20万円を超えるなど、かつてのピーク時を上回る価格設定が常態化している。この値段はもはや昔のビジネスクラスの値段である。
3、東南アジア路線:指標価格との即時連動
シンガポールなど、航空燃料の価格指標となっている地域への路線は、現地の燃料価格(シンガポールケロシン)の動きを最も早く運賃に反映させる傾向がある。タイ、ベトナム、シンガポール線では、サーチャージが据え置かれている間も、基本運賃の「最安値予約クラス」が早期に閉鎖され、高額な予約枠のみが販売される形で実質的な値上げが進んでいる。 【次ページ】燃料高だけじゃない…「運航コスト高」がヤバすぎる
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