- 2025/12/29 掲載
日本の電力需給は「常に綱渡り」…経済合理性で考える安定実現の「脱二元論」視点とは
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
日本の電力供給は「いつも綱渡り」と言えるワケ
経済活動の根幹を支える電力供給が、構造的な脆弱性を抱えている事実を直視すべき時が来た。スイッチを押せば照明が点灯し、暖房が使え、工場が稼働するという日常は、当たり前に保証されているわけではない。それは、老朽化した設備と綱渡りの運用によって、辛うじて維持されているのが実態である。これがデータで示されているのが、2025年10月に資源エネルギー庁が公表した「今夏の電力需給及び今冬以降の需給見通し・運用について」という資料だ。ここからは、首都・東京の電力網が直面する現実を読み取ることができる。
電力の安定供給を測る指標に「予備率」がある。需要のピーク時に、供給能力にどれだけの余力があるかを示す数値だ。政府はこの最低ラインを3%と定義している。これを下回れば需給は不安定化し、さらに1%を割り込めば、計画停電という物理的な供給制限が視野に入る。
これは行政の裁量で決まる話ではなく、物理法則に基づく限界点である。現在の東京エリアにおける電力供給は、この限界点に近い場所で推移している。今年8月末には、火災などのトラブルによって複数の発電所が計画外停止し、予備率が急低下する事態が発生したことは記憶に新しく、システムは常にレッドゾーンの縁を歩いていると言っていい。 【次ページ】電力不足が起きがちな「3つの要因」とは
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