• 2025/12/29 掲載

日本の電力需給は「常に綱渡り」…経済合理性で考える安定実現の「脱二元論」視点とは

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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年の瀬が迫り、寒さが一段と増してきた12月。心配なのが電力需給のひっ迫だ。老朽化した火力発電所への依存や燃料調達のリスクは依然として残り、電力網の安定に不安を残す。そうした中で今月、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の6号機、7号機が2026年1月20日に再稼動する見込みとなった。経済成長を促進する上で欠かすことのできない安定的な電力供給は、どのように実現すればよいのか。カギとなるのは「再エネか原子力か」という二元論的な視点を抜け出すことだと指摘するのは元プレジデント編集長の小倉健一氏だ。それは具体的にどういうことか。小倉氏が詳しく解説する。
執筆:ITOMOS研究所所長 小倉 健一

ITOMOS研究所所長 小倉 健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。

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原子力発電所と日本経済との切っても切れない関係とは
(写真:ロイター/アフロ)

日本の電力供給は「いつも綱渡り」と言えるワケ

 経済活動の根幹を支える電力供給が、構造的な脆弱性を抱えている事実を直視すべき時が来た。スイッチを押せば照明が点灯し、暖房が使え、工場が稼働するという日常は、当たり前に保証されているわけではない。それは、老朽化した設備と綱渡りの運用によって、辛うじて維持されているのが実態である。

 これがデータで示されているのが、2025年10月に資源エネルギー庁が公表した「今夏の電力需給及び今冬以降の需給見通し・運用について」という資料だ。ここからは、首都・東京の電力網が直面する現実を読み取ることができる。

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日本の電力供給の現状はどうなっているのだろうか
(Photo/Shutterstock.com)

 電力の安定供給を測る指標に「予備率」がある。需要のピーク時に、供給能力にどれだけの余力があるかを示す数値だ。政府はこの最低ラインを3%と定義している。これを下回れば需給は不安定化し、さらに1%を割り込めば、計画停電という物理的な供給制限が視野に入る。

 これは行政の裁量で決まる話ではなく、物理法則に基づく限界点である。現在の東京エリアにおける電力供給は、この限界点に近い場所で推移している。今年8月末には、火災などのトラブルによって複数の発電所が計画外停止し、予備率が急低下する事態が発生したことは記憶に新しく、システムは常にレッドゾーンの縁を歩いていると言っていい。 【次ページ】電力不足が起きがちな「3つの要因」とは
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