- 会員限定
- 2026/04/10 掲載
ガソリン価格「中抜き17.1円」のナゾ…日独の対策に見る“圧倒的”経済効果の実現法
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長。現在、イトモス研究所所長。著書に『週刊誌がなくなる日』など。
ガソリン「中抜き17円」の“異常事態”
日々の生活を送る中で、ガソリン価格の高騰が家計や企業の経営を直撃している。資源エネルギー庁が毎週発表する全国平均小売価格は高止まりを続け、国民の経済的な負担は限界に達しつつある。異常な上昇を抑えるため、政府は巨額の国費を投入している。しかし投じられた税金の総額と、実際に消費者が受ける恩恵の規模には看過できない大きなズレが生じている。政府が設定した補助金支給単価(初週)は1リットルあたり30.2円であった。単純な計算の上で考えればガソリンスタンドの店頭価格も30.2円安くなるはずである。過去最高値圏にあった190.8円の全国平均価格は160.6円まで下がらなければつじつまが合わない。しかし翌週の全国平均価格は177.7円であった。期待された値下がり幅はわずか13.1円にとどまったのである。
投じられた30.2円のうち消費者が受け取れた恩恵は13.1円しかない。残りの17.1円は一体どこへ消えてしまったのか。消えた17.1円の行方を理解するためには補助金制度の欠陥を知る必要がある。
日本のガソリン補助金は末端の消費者に直接支払われるわけではなく、元売りと呼ばれる巨大な石油会社に直接支給されている。政府は元売り企業に対して税金を渡し、卸売価格を下げるよう要請する仕組みを採用している。元売り企業が卸売価格を30.2円下げれば、市場での競争が起きて小売価格も同じだけ下がるはずだという楽観的な前提に立っている。
「中抜き17円」を生む“構造”とは
しかし現実のマーケットは政府の都合の良い計算通りには動かない。企業は現在、数社の巨大企業による寡占状態にある。激しい競争が起きにくい環境にあるため、企業側は価格を決める強い力を持っている。外部から企業の詳細な会計を検証することは極めて難しく、ガソリンスタンドの地下タンクの在庫が入れ替わるまでのタイムラグを考慮したとしても、長期的・構造的に価格転嫁の全容が検証できないブラックボックスになっているのだ。結果として、投じた補助金が国民にそのまま還元されない現象が起きている。俗に言う「中抜き」である。
しかし税金を使いながら半分以上が消費者に届かない制度を継続することは、経済的な合理性を完全に欠いていると言われても仕方がない。国民の生活を犠牲にしていると批判されても申し開きはできないだろう。 【次ページ】日独の「ガソリン対策」に見る“明暗”
エネルギー・電力のおすすめコンテンツ
エネルギー・電力の関連コンテンツ
PR
PR
PR