- 2026/05/27 掲載
従業員20人未満の「町工場」に年200人超が殺到、若者が集まりまくる“驚きの秘密”
連載:勝てる工場のつくり方~タシロ編~
法政大学工学部卒。大手計測機器メーカーにエンジニアとして入社するも、リアルなものづくりがしたいと木工職人に転職。一転、30 歳を前に「言葉」「伝える」力に魅力を感じ、ライターを志す。当初はインテリア、製造業関連の案件が多かったが、次第に経営者、ビジネスサイドへのインタビュー案件が増加。ここ数年は IT テクノロジー、人事・求人・採用、中小企業経営者といった分野の案件多数。クラシックバレエに夢中な相方、アパレル企業で働く娘、父親と同じ大学の理工学部で学ぶ息子、13歳の犬・ミニチュアピンシャーの4人+1匹家族(2026年現在)。
「外国人材の採用強化」をやめたワケ
「24時間納品も可能な超短納期」との強みを持つ、金属加工会社のタシロ。数億円するような設備を保有し、厚さ32ミリもの金属板を加工できる一方で、精密な加工にも対応する。そのため現場の技術者には、厚板を運ぶことのできる体力ならびに、緻密な加工を行えるスキルも求められる。このような仕事柄、以前から20代が従業員の大半を占めていた。だが、若い人材は次第に採用が難しくなっていく。そこで着目したのが同年代の外国人材だ。中国人、のちにベトナム人を中心に、2006年ごろから技能実習生の受け入れを開始。田城氏が入社した2019年ごろには、7割以上の従業員が外国人という時期もあった。
ただ、しばらくすると再び問題が発生する。コロナ禍で母国の家族の事情などを理由に、退社する外国人が相次いだ。さらには特定技能など、外国人採用における他の制度が設けられたことももあり、優秀な外国人材の獲得競争が激化し、継続雇用が難しくなっていった。
人材確保は再び不安定になる。そこで田城氏は外国人材の採用強化を取りやめ、会社のブランド力を高めることで、これまでは難しかった若い日本人の採用を強化しようと考えたのである。
日本人の若手採用へ…「働く環境・教育・評価制度」改革
まずは、働く環境を整えた。以前は111日であった年間休日数を120日に増やすとともに、土日休みの完全週休2日制、半休や時短勤務などを導入した。社内の居心地も改善のためランチを落ち着いて食べることができ、休み時間には横になれるような休憩室も設けた。教育制度も見直した。週に一度の勉強会、中途・新人研修、ビジネスマナー研修など、技術的な内容だけでなく、名刺交換の仕方が身につくなど、多様な研修制度を用意。またメンター制度も設け、各人が目標やキャリアの設定、安心して相談できる体制を整備した。
加えて、評価制度も整え、評価内容を誰でも閲覧可能にしたほか、リーダー職を増員するなど役割の明確化ならびに組織体制にも手を加えた。
取り組みはまだある。たとえば表彰だ。社内における表彰制度も整備していく一方で、2019年ごろから外部のプログラムにも可能な限り申請を行った。「落選したケースが圧倒的に多いですがね」と田城氏は苦笑するが、毎年着実に表彰や認証を受けているのも事実だ。たとえば、後ほど紹介するが、ギフト・ショーでのグランプリ受賞(2022年)や、中小企業ミライ絵日記では全国10作品に入選(2023年)している。
売上半減で始めた「自社製品の開発」が大きな転機に
さらに特徴的なのが、コロナ禍から始めた自社製品の開発だ。コロナ禍による業績低迷というマイナスな状況を田城氏は逆手に取り、手が空いている今だからこそ、自社製品の開発に取り組んだ。これが、人材教育や魅力的な職場につながった。最初に開発した製品は、まさにコロナ禍らしい、手を使うことなくドアを開けることのできる「ドアオープナー」だ。「素材を真鍮(しんちゅう:銅と亜鉛の合金)にすることで、銅イオンによる殺菌効果も加えました」と、金属加工会社ならではの製品であることを田城氏は強調した。
このドアオープナーがヒット商品となったことで、3~4カ月に1商品の割合で、自社製品の開発を進めていくことになる。その際、自社製品のアイデアは全従業員に求めた。
与えられた業務を淡々と行うこれまでの仕事とは異なり、自らのアイデアと技術でどんな製品を設計・加工するのかを考える。しかも、その製品が商品化され、多くのユーザーの手に届く。場合によってはレビューももらえる。従業員の士気が高まることは容易に想像できる。
開発した自社製品はECサイトだけでなく、物販イベントでも販売していった。その際は必ずプレスリリースを出した。
出店の際は、開発に携わった販売にも興味のある一部従業員も現場に連れていき、購入者と対話できる機会を設けた。出店場所は渋谷のロフト本店やGINZA SIX、海外などのケースもあった。繰り返しになるが、従業員のモチベーションが高まることは間違いない。 【次ページ】採用の潮目が一気に変わった「ある瞬間」とは
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