- 2026/03/24 掲載
たった1週間で軽油28円増…トラック運送“崩壊寸前”でも「価格転嫁」できない元凶
ホルムズ海峡封鎖で軽油価格“爆増”
日本の軽油価格はすでに過去の変動レンジを明確に上回る水準に入りつつある。資源エネルギー庁が公表する石油製品価格調査によれば、軽油の店頭価格は近年、原油高と円安の影響を受けて上昇基調が続いてきた。たとえば、全国平均の軽油価格は2021年初旬に1リットル当たり約120円前後だったが、2023年には160円台に達した。わずか数年で30円前後上昇した計算となり、トラック運送業界にとっては極めて大きなコスト増となっている。
特徴的なのは、単なる需給のひっ迫だけでは説明できない点にある。円安の進行により輸入コストが恒常的に押し上げられている上、日本は原油輸入の95.9%(2024年度の数値)を中東に依存している。ホルムズ海峡を通過するタンカーに依存する構造が変わっていないのだ。
そして今回、この依存状態が大きな危機を招く。イラン情勢の影響によりホルムズ海峡周辺で緊張状態となったことから、事実上封鎖。日本への燃料供給に大きな打撃を与えている。
3月18日に発表した石油製品価格調査によると、3月16日時点で1リットル当たり178円だった(図1)。2月9日時点で144円、3月9日時点で150円、たった1週間で実に18.7%、約28円も増加した。こうした中、日本政府は補助金などを活用しながら、店頭のガソリン価格が170円を超えないよう調整していくとしている。
だが問題は価格の増減ではない。軽油価格の高騰が続く中でも、日本のトラック輸送はこれまで稼働を維持してきたが、今後は「走り続けること」が前提ではなくなる可能性がある。そして、その根本的問題は、業界構造という根深いところにある。
トラック運送が「突然止まる」2つの要因
日本のトラック輸送について、「走り続けること」が前提ではなくなる要因は大きく2つに分かれる。第1に、燃料供給そのものに対する制限の可能性である。すでに現場では兆候が出始めている。金子 恭之国土交通相は、一部の石油販売事業者がトラックやバス業界に対して軽油の販売制限を実施している動きがあることを明らかにしており、供給のひっ迫が現実の問題として顕在化しつつある。
石油製品の需給がさらにひっ迫した場合、政府や元売り各社が用途別の優先供給や販売調整に踏み込む可能性もある。物流用途が社会インフラであることは確かだが、すべての需要を満たせる保証はない。
第2に、運送会社の採算悪化である。物流業界では、燃料費がコストの中で大きな割合を占める。軽油価格の上昇はそのまま収益を圧迫し、とりわけ中小事業者では損益分岐点を下回る可能性がある。
全日本トラック協会によれば、軽油価格が1円上昇するごとに業界全体で約150億円の負担増になるとしており、数十円単位の上昇は経営基盤を揺るがす規模。今回の場合、1週間で約28円上昇したため、単純計算で約4,200億円の負担増になる。「赤字でも走る」状態が続く可能性が高まるが、この状況では事業継続は難しい。
資金繰りが限界に達すれば、運行停止や事業撤退に踏み切る企業が増える可能性がある。燃料があっても運べない、あるいは運べても採算が合わないという二重の制約が重なれば、輸送能力は急速に縮小する。物流が止まる引き金は、供給制約と採算崩壊のいずれか、あるいはその両方で引かれることになる。 【次ページ】トラック運送で「燃料サーチャージ導入」が進まないワケ
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